韓国に今最も必要なことは本当の「愛国心」を醸成することではないか。その前提条件は「愛国は反日とは全く別だ」という認識を持つことだ。
韓国の為政者たちは過去、愛国心を高めるために「反日」を恣意的に扇動してきたが、「反日」と結びついた「愛国」は本当の愛国心とは成り得ない。
自分が生まれ育った祖国、民族への愛には憎悪とか恨みといった感情は本来無縁だが、韓国では「反日」が「愛国」と密接につながり、「愛国」の証明と受け取られてきたゆえに、韓国には今だ本当の愛国心が生まれてこないのだ。換言すれば、韓国民は国を無条件で愛することができない苦悩を抱えているといえる。
日本の与党自民党議員の中から「韓国は国の体をなしていない」という批判の声が飛び出している。その表現は少々過酷すぎるが、正鵠を射ている。なぜならば、韓国民は「反日」がない限り「愛国」をもてない異常な国に成り下がってしまったからだ。若い世代には「ヘル朝鮮」という言葉すら生まれてきている。
韓国に過去、愛国心が醸成されなかったのは大国の支配を受け、統治される期間が長すぎたこともある。しかし、だから愛国心が生まれなかったとは弁解できない。韓国社会では戦後、「親日は愛国心欠如」といった空気が生まれていった。「反日」こそ「愛国心」の発露と誤解されてきたわけだ。
例を挙げる。ポーランドは過去3回、領土を分割された苦い悲しい歴史を持っている。そのポーランド民族は欧州で愛国心の強い国として知られている。厳しい時代を支えたのは神への信仰だった。欧州社会は世俗化してきたが、ポーランドでは今なおローマ・カトリック教会がそれなりの存在感を有している。教会が厳しい時代の民族を支えてきた歴史があるからだ。そのうえ、欧州で聖母マリア崇拝が最も強い国だ。聖母マリアを“第2のイエス”のように崇拝する。
ポーランド民族は厳しい時代、神への信仰で乗り越えてきた。同時に、ポーランド民族の愛国心を培っていった。その結果、少々融通性に欠けるが、愛国心を持つ国家として欧州で歴然としたプレゼンスがある。
ポーランド民族には韓国民族のような侵略国家への強烈な憎悪感情はない。共産圏時代のロシア支配への強い抵抗はあるが、自国民族への愛国心、誇りの方がもっと強いのだ。一方、韓国はどうだろうか。悲しい歴史を体験した結果、愛国心まで失ってしまったのだ。その代償として特定の国、日本への強烈な敵愾心、反日感情が急成長していった。韓国は愛国心を育成することを忘れ、反日に奔走し、憎悪感情だけが異常に巨大化していった。
愛国心を育成するためには、自民族で生まれた英雄の伝記を学ぶことが助けとなるが、韓国で英雄として崇拝されている「安重根」、「金九」、「尹奉吉」といった人物はいずれも反日、抗日活動家たちだ。韓国最大の英雄といわれる朝鮮水軍司令官・李舜臣将軍(1545~98年)も同じだ。韓国では反日、抗日と関係のない人物は英雄となれないのである。
反日活動を支えているものは「憎悪」だ。韓国は世界に少女像を設置し、「憎悪」を輸出している。「愛」ではない。そんな国が残念ながら現在の韓国だ。「憎悪」は破壊エネルギーだ。建設ではない。朝鮮半島の政情混乱の一因は「憎悪」という破壊エネルギーが全半島を牛耳っているからだ。
韓国は自国を無条件に誇れる普通の国になりたいはずだ。民族の誇れるもの、人物を探しているのではないか。毎年、ノーベル賞週間になると、韓国メディアはノーベル賞に大騒ぎするのは、やはり誇れるものを探しているからだろう。文在寅大統領が密かに推進する「歴史の書き換え」作業も結局は誇れる民族探しの屈折した表現ではないか。
韓国は中国に長い間支配され、近年に入っては日本に統治された時代を有している。それ故に、韓国民族は民族として誇れるものを他民族以上に希求しているはずだ。韓国人は自分の国、民族の歴史を愛せないことへの「苦悩」を反日で憂さ晴らししている、といってもいいかもしれない。
繰り返すが、反日感情に密着した愛国心は韓国の本当の民族性を失わせるだけだ。現在の文在寅政権の動向を見ていると、その懸念が深まってくる。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年11月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。