3日の米国債券市場では、3年債利回りが5年債利回りを上回り、2007年以来の逆転となり、米2年債と10年債の利回り較差も約10年ぶりの水準に縮小した。5日には2年債利回りが5年債利回りを上回った。
縦軸を債券の金利、横軸を債券の期間として期間ごとの利回りをプロットすると曲線が描かれる。これがイールドカーブである。イールドカーブは通常、右肩上がりになりやすい。これは順イールドと呼ばれる。右肩上がりの傾斜がきつくなることをスティープ化と呼んでいる。
これに対して短い期間の債券の金利が長い期間の債券の金利を上回るようなカーブが描かれることがある。これを逆イールドと呼んでいる。長い期間の金利と短い期間の金利の較差が縮小することをフラット化と呼んでいる。
通常は長い期間の債券のほうが所有期間リスクが高くなることで、その分のリスクプレミアムが金利に上乗せされる。このため、イールドカーブはスティープ化していることが多い。
ここに何らかの要因が加わって、フラット化が進み、逆イールドとなるケースがある。過去に逆イールドとなった際は景気後退局面が多かったこともあり、イールドカーブが逆イールドとなるのは景気後退を示唆しているとの見方がある。
ただし、注意すべきは短期金利と長期金利は同じ金利ながらも、変動要因が異なる場合があることである。短期金利と長期金利のスプレッドだけをみて、それが景気後退を意味すると採るのはやや早計な見方となる。
今回の長短金利のスプレッドの縮小について、特に短期金利の上昇の背景は明確である。短期金利は中央銀行の金融政策によって決定されるものであり、FRBが正常化にむけた利上げを行ってきたことで短期金利が上昇した。それが中期ゾーンの金利にも影響を与えている。
しかし、長期金利は利上げにも関わらず上昇は限られたものとなっていた。これは景気後退によるものではないはずである。もしそうであれば、利上げを進められる環境にはないということになる。米長期金利が短期金利に比べて上昇速度が鈍っていたのは、景気の回復が比較的緩やかで、長期金利にも影響を与える物価の上昇も鈍く、インフレを連想させるようなものとなっていなかったことによる。
さらに米長期金利、つまり米10年債の利回りになるが、その米10年債は何かしらのリスクが発生した際にリスク回避として買われることがある。もちろんその際は10年債だけでなく中期債なども買われようが、FRBの利上げによる短期金利の水準も意識されることで、長期債ほど買い進まれないということも考えられる。
結果としては今回の米国でのイールドカーブの逆イールドの形成と、世界的な景気減速が同時進行する可能性はある。しかし、米国のイールドカーブの動きは少なくとも、11月あたりまでは景気というよりFRBの利上げや物価動向の影響を受けていたとみるべきではなかろうか。
ただし、ここにきての米長期金利の低下が、景気減速を背景としたリスク回避の動きであるとすれば、逆イールドというか、ここにきてのイールドカーブの平坦化は、目先的に世界経済の減速を見越したものとの見方もできなくはない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年12月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。