防犯カメラは人々を監視しているのか

山田 肇

ハロウィンに渋谷で暴れた若者が逮捕された。防犯カメラの映像を順番にたどって犯人に行きついたのだが、これを監視社会への一歩と批判する人たちがいる。彼らは防犯カメラを監視カメラと呼ぶ。

街頭の防犯カメラにはいくつかの公共的な効果がある。犯罪抑止と犯人追跡が代表だが、それ以外にも交通や群衆を整理するための情報収集にも有効である。しかし、今回のように犯人追跡は報道されるが、犯罪抑止効果の報道は少なく、疑問が呈される場合もある。山手線車内への防犯カメラ設置を伝える朝日新聞(2018年7月18日)が典型である。

導入の主な理由は「犯罪抑止」。だが乗客からその効果はわかりにくく「常時監視」の違和感はぬぐい切れていない。

一方で、日経XTECHは犯罪抑止効果について、愛知県刈谷市の事例を記事化している。刈谷市では11年度から防犯カメラを積極的に設置した結果、12年度から17年度の5年間で刑法犯認知件数が46.4%減少したそうだ。

国内論文は少ないが、海外には効果を分析した論文がある。Pizaらは暴力犯罪や車上狙いに有効としている。Caplanらも銃撃や自動車盗難を抑止したとの分析結果を発表している。カメラ未設置の地域では犯罪数が変化していない中で、カメラ設置地域では盗難や盗難が半減したという韓国からの報告もある。

どうしたら監視社会反対派の理解も得て、犯罪抑止のために防犯カメラの設置を進められるだろうか。

東京都荒川区の『街頭防犯カメラ設置方針』は、「地域の理解」と「画像の個人情報保護」を強調する。欧州のEuropean Forum for Urban Securityは“Charter for a Democratic Use of Video-Surveillance”(防犯カメラの民主的利用に関する憲章)を策定している。憲章が強調するのは、「必要性」「比例性」「透明性」「説明責任」「独立した監督」である。

渋谷での傍若無人ぶりを見ると、荒川区の方針や欧州の憲章が説くように、設置目的や費用、設置地域などについて市民の理解を得たうえで防犯カメラを設置し、設置効果についても定期的に公表するのがよい。