彼らはそこで何をしていたのか
防衛省は28日、韓国海軍の火器管制レーダーの照射問題でビデオ映像(約13分間の映像)を公開した。この映像に北朝鮮漁船と見られる小船がハッキリ写っている。この小船はいったい何をしていたのか。なぜ、ここにいたのだろうか。
映像の場所は能登半島沖の大和堆(やまとたい)と呼ばれる日本のEEZ(排他的経済水域)である。ここに、北朝鮮漁船が普段から頻繁にやって来て、イカなどの密漁をしていることで知られている。韓国が説明するように、仮に、映像に映っている北朝鮮漁船と見られる小船がそのような密漁船であったとしても、なぜ、韓国の駆逐艦や警備救難艦が物々しく、日本のEEZに出動して、遭難救護にあたらなければならないのか。当日、天候は良好で、波も穏やかである。漁船が遭難するような状況ではない。北朝鮮漁船が日本のEEZに入り、遭難したならば、日本に通報し、日本の救援を求めるべきである。
瀬取りをしていたという見方もあるが、わざわざ日本のEEZにまで来て、瀬取りをするだろうか。韓国と北朝鮮が上海沖まで遠出をして、中国の影響圏で、瀬取りをしていることは確認されているが、日本のEEZで瀬取りを行うメリットはないように思う。瀬取りをしていたとする前提での解説が多くあるが、なぜ、この場所でそのようなことをするのかという理由説明が欲しいところだ。
この小船に何か秘密が隠されていたため、韓国駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に、慌ててレーダー照射をして、追い払おうとしたのだろうか。もし、そうだとすれば、彼らはいったい何を企んでいるのか。
「漁船」は本当に単なる漁船なのか
私は映像に写っている北朝鮮漁船と見られる小船に対し、韓国の駆逐艦や警備救難艦が接触(韓国は「救助」としている)していたという事実を重く見る。映像によって、韓国海軍がレーダー照射をしていたことはハッキリした。それ以上に、小船に対し、接触或いは救助していたという事実について、分析が必要である。単なる漁船であるならば、韓国側が駆逐艦まで出す必要はない。そうしなければならなかった事由はいったい何なのかを突き止めなければならない。
2017年来、北海道・東北の日本海岸に北朝鮮船の漂着が増えている。2018年11月から、急増したとの報告もある(荒木和博特定失踪者問題調査会代表の調査による)。また、海洋経済学者の山田吉彦・東海大教授によると、漂着船の中から革靴やジャケットが発見された事例もあり、日本国内に北朝鮮人が上陸し、漂着船の数からすると、100人規模の密入国者が潜伏している可能性があるとのことだ。これらの北朝鮮船は漁船を装い、実際には工作員を送り込むための船であったと考えられる。
私はこの28日に公開された映像を見るまで、韓国が説明している「北朝鮮漁船の救助」などということをマトモには聞いていなかったし、そこに、北朝鮮漁船が実際にいるなどとは思っていなかった。その上で、当初、今回のレーダー照射事件について、以下のような仮説を立てていた。
韓国軍内部にも、政権同様に左派革命派が既に入り込んで、北朝鮮の意向に沿って動こうとする分子が少なからずおり、少なくとも、艦長や中級司令官クラスがこういうことを現場にやらせて、そのクラスの赤化侵食が進んでいるのではないか。そして、彼らは軍の指揮系統に、ほとんど服していないので、何をはじめるかわからない。
このように捉えていたのだが、28日公開の映像を見て、軍の一部というよりはむしろ、軍全体がその意思決定の構造上、北朝鮮の工作活動と連動・連携しているという可能性も想定せねばならないのではないかと思い始めた。まさかとは思うが、しかし、あらゆることを想定しておかねばならないだろう。上記のように、漂着船にせよ、漁船にせよ、瀬取り船にせよ、工作絡みが疑われている状況で、韓国の駆逐艦や警備救難艦が出動し、自衛隊機にレーダー照射まで行ったということはタダならぬことである。
韓国国防部の主張が二転三転して、最後には、日本側が公開した映像資料は「レーダーを照射したという日本側の主張に対する、客観的な証拠とならない」と述べた。韓国政府も何かを必死になって隠しているようにも見える。
文在寅政権は左派革命政府であるが、その赤化侵食が軍にまで及んでいるかと言われれば、そこには一定の距離があるだろうと、私はこれまで、捉えていた。軍幹部人事の交代が進んでいるとしてもだ。しかし、どうやら、私の考える以上にそうした距離も埋まりつつあるのかもしれない。
繰り返すが、日本のEEZで、北朝鮮漁船と見られる小船に対し、韓国軍が接触或いは救助していたという事実は重く、韓国軍がいったいどこまで、北朝鮮との直接・間接の関わりを持っているのかということの分析が急務である。
映像公開に否定的だったとされる防衛省
28日の読売新聞によると、日本政府関係者は「韓国軍は北朝鮮漁船の救助に普段から関わっている可能性があり、日本に知られたくなかったのではないか」と述べた、と報じている。サラリと言っているが、そんなことが本当に普段から行われていたとするならば、大変なことである。取材に答えた日本政府関係者は、韓国軍が何のために北朝鮮漁船の救助を普段から行っているのかということの見解を明らかにすべきであるし、記者も曖昧にせず、そこを突っ込んで聞くべきである。両国が頻繁に通謀しているという事実があるならば、見逃してはならない。今となっては、日本の海で、何が起こっているのか、政府は洗いざらい公表すべきである。
今回のレーダー照射事件の映像についても、防衛省は映像公開について「韓国が反発する」(幹部)との見方が強く、岩屋毅防衛相も否定的だった、と28日の時事通信が報じている。それを安倍首相が公開すべしと押し切ったという。この報道が本当ならば、防衛省はいったい何を考えているのか。とんでもない話だ。これでは、防衛省は「韓国が反発する」という前提で、これまでも、情報を隠しているのではないかと疑われても仕方ない。
岩屋防衛相は、今回の韓国軍によるレーダー照射が日韓関係の悪化に起因するかを問われ、「そうであってほしくない。問題が積み重なってのことではないと信じたい」と述べた。「信じたい」という表現には、強烈な違和感を覚える。文在寅政権のような左派革命政府の何を「信じたい」というのか。
また、外務省幹部は「友好国としてあり得ない。驚いている」と記者団に述べた。この期に及んで、韓国を「友好国」と見る政府の認識のズレはあまりに危険である。
10月30日の徴用工判決をはじめとする一連の韓国の無法に対し、日本政府は弱腰過ぎはしないか。もっと、言うべきことを言え、やるべきことをやれ!