レーダー照射問題が、日韓関係に影を落としている。ビデオ公開は正しい対応だ。うやむやにするべきではなく、日本の立場は明確にしておくべきだ。
もちろん韓国は、重要な隣国だ。しかしだからこそ、曖昧な態度をとるべきではない。ただし怒りを見せるべきではない。重要なのは、日本は批判を目的にしているのではなく、あくまでも危険行為の「再発防止」を求めている、と強調することだろう。
レーダー照射が韓国側の政治判断であった可能性は低い。しかしだからこそ曖昧にしてしまっては、再発の恐れを残すことになる。そんなことでは現場はたまらない。あくまでも韓国の政治対応を期待する態度を貫きながら、冷静に、「再発防止」のための徹底した検証を求めていくべきだ。
それにしても由々しきは、韓国のマスメディアが海上自衛隊が自らを「Japan Navy」と名乗ったことを問題視している、などという事態だ。
困った話である。組織の固有名称ではなく、属性として「NAVY」という表現を使ったとしても、何も問題はない。軍事関係者の間で国際的なこういった表現を問題視する者はいないだろうと思う。
しかし、韓国内に、日本国内の憲法学者らの存在を利用して自衛隊の地位を貶めようとする動きがあるようだ。とんでもない話である。何を見ても、「戦前の復活」「いつか来た道」などの常套句を多用して、自分勝手な思い込みで相手をやり込めたつもりになる、あの紋切り型の論争術である。
このブログでも繰り返し繰り返し書いている。自衛隊は憲法上の戦力ではなく、国際法上の軍隊である。
政府はそのことを公式に表明している。
そこに矛盾を感じる人がいるとしたら、私の著作やブログを見てほしい。
政府の見解を否定して、憲法学者らの特定の社会的勢力の見方だけを絶対視するのも、まあ一つの立場だろう。だがそうするのであれば、安易な気持ちでやるべきではなく、その影響を鑑みてから、やってほしい。
編集部より:このブログは篠田英朗・東京外国語大学教授の公式ブログ『「平和構築」を専門にする国際政治学者』2018年12月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。