今年は大河ドラマ「西郷どん」にはまってしまった一年でもありました。昨日放送された総集編でも、いくつか印象に残る放送がありましたが、その一つが、5月頃に放送されていた奄美大島編のエピソードです。
藩命に背いた西郷が、二度にわたる島流しで見たものは、薩摩に搾取される琉球・奄美の民たちの姿でした。島津の殿様は民のためのまつりごとを行っていると信じていた西郷は、当時、藩の財政にとって重要だったサトウキビ栽培のために薩摩藩が行っていた苛烈な支配の現実を目の当たりにします。
西郷の敬天愛人、農本主義という思想は、農作業に使役される島民らに共感し、その人々と生活を共にした体験に根ざしていたのだと感じます。
西郷のような眼差しで沖縄を見ていた人は、時代を超えて他にもいます。
まず、沖縄戦の最終盤、自決直前に、沖縄県民に特別の配慮を要請する電文を送った大田実沖縄根拠地隊司令官です。
海軍次官宛に送った電文の最後の一文である
「沖縄県民斯ク戦ヘリ。県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」
は、今なお多くの人に記憶され、語り継がれています。
また、鹿児島出身で、長年にわたって沖縄振興に尽力し、名誉沖縄県民となった山中貞則元衆議院議員は、次のような言葉を残しておられます。
「私が衆議院議員2期目の昭和31年ごろと記憶しますが、防衛研修所戦史室に勤めていた軍隊時代の友人が、あの電文の写しを届けてくれました。驚きましたねえ。あの激戦を戦った将官の中に、県民にこれ程思いを馳せた人が居たのか、これこそ我々が引き継ぐべき沖縄問題の原点ではないか、と。それに引き換え、当時の本土の沖縄対策はどうだ。国内唯一の戦場となり、地獄の苦しみを味わった人々の血の叫びを、座して見ているだけではないのか」
「とにかく、あらゆる局面で大田中将が言われた『後世特別ノ御高配』に応えているか、沖縄戦の償いを幾らかでも果たしているか、を自問自答しながら、対策を進めたものです」
さらに、前の記事でも書きましたが、今上陛下は、沖縄への並々ならぬ思いを語り続けてこられました。そして、その思いは、戦時中そして戦後に沖縄が日本のためにその辛苦を一身に背負わせされたことへの贖罪の気持ちだけではなく、それよりもっと長い時間軸、すなわち、慶長14(1609)年の薩摩藩による「琉球征伐」にまで遡るのです。
「琉球征伐」によって、薩摩藩の支配下に入った琉球・沖縄は、明治に入ると、今度は明治政府に支配されることになります。中央政府に統合しようと考える明治政府は、明治12(1879)年、軍と警察を首里城に派遣して、武力をもって制圧し、琉球王朝を廃しました。これが「琉球処分」です。
沖縄で選挙法が施行され、沖縄の国政参加が可能になったのは明治45(1912)年になってのことで、それは、実に明治憲法公布の23年後です。
また、沖縄は、昭和21(1946)年の日本国憲法制定、昭和26(1951)年のサンフランシスコ講和条約による日本の独立回復の後も、米国政府の施政下に置かれ続けました。本土復帰は、終戦から27年後の、昭和47(1972)年まで待たなければなりませんでした。
そして、沖縄は、帝国憲法、現憲法と2回におよぶ憲法制定に関われなかっただけではなく、今なお、日本の主権を制約する日米地位協定の大きな影響の下に置かれ続けています。
先の沖縄県知事選では、現玉城デニー知事も、自民党が推薦した候補も、日米地位協定の改定を公約に掲げました。これで、基地負担の軽減に向け大きな一歩になると期待したのですが、結局、知事選後に政府が行ったのは、辺野古沿岸部への土砂投入の強行でした。
現行の地位協定の不平等性は、多くの有識者が指摘しているところですが、ドイツやイタリアのケースとは対照的に、日本では改正に向けた努力すらなされてきていません。現行の日米地位協定の問題を放置していては、日本は本当の意味での主権国家にはなれません。
平成が終わる今だからこそ、「勝てば官軍」的な政治から脱却し、沖縄県民に寄り添った負担軽減策に踏み出すべきなのです。そのことがまさに、大田中将が言われた「後世特別ノ御高配」に応えることになるのではないでしょうか。
今月26日、国民民主党 は、沖縄県の意見も踏まえながら、日米地位協定の改定案を取りまとめました。
今後、与野党各派に、実現に向けた働きかけを行っていきます。国家主権に関わる問題に、与党も野党も関係ありません。
また、来年は、北方領土交渉も重要な局面を迎えると思いますが、領土返還実現のためにも日米地位協定の改定は不可欠だと考えます。
国民民主党 は日米地位協定の改定を積極的にリードしていきます。
編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2018年12月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。