このブログを皆さんがお読みになるときにはすでにゴーン氏が出廷し、無罪を主張したその様子が明らかになっているかもしれません。あらかたの想定ではゴーン氏の主張は私的損失の付け替え行為が日産に損失を与えていないこと、及びサウジの知人への16億円の支払いの正当性を申し出るものと思われます。
その内容の正当性の判断は裁判所にお預けしますが、日本側がゴーン氏を有罪に持ち込みたいのは明白であります。
いろいろ取りざたされた今回のゴーン氏逮捕劇ですが、想像するところ、マクロン大統領とゴーン氏の密約に基づき、ルノーが日産を傘下に置く計画が進行しつつあったのを察知した日本側がゴーン氏の権力をつぶし、ひいてはルノー/フランス政府の画策を白紙に戻すことであった可能性は大いにあり得ると思います。
マクロン氏はオランド前政権の時の経済産業デジタル大臣に就任し、その際にフランス政府によるルノー社の持ち株比率を15%から20%に引き上げ、あの悪名高き、フロランジュ法を通します。これは2年以上の長期株主に対して通常の2倍の議決権をあたえるという極めて異質な法律ですが、この時点でマクロン氏はルノーが日産を完全支配下に置く算段をしていたものと思われます。
ゴーン氏は18年6月のルノーの株主総会において会長に再任されていますが、その時に株主であるフランス政府との何らかの話があったはずで、この会長再任の承諾の条件が日産のルノーへの吸収だったのではないでしょうか?この話はあちらこちらで出回っていますし、私は2015年5月のブログで「日産はルノーとの離婚調停に備えよ」と指摘させて頂いていました。もちろん、一般に知られるような明白な証拠があるわけではありません。ただ、どこかで何らかの信ぴょう性ある情報が一部に漏れた可能性は高いと思われます。
ゴーン氏逮捕まで数か月間の内偵があったわけですが、日産上層部は割と早くからそれを察知し、あらゆる作戦を考えた末の行動だったとみられます。
一方、ゴーン氏は将来はフランス大統領選にも出るのではないかと噂されたのは仮に日産をルノー傘下に置けばその功績としてそのチャンスが与えられるというニンジンをぶら下げられた話だったのかもしれません。ではフランス政府はゴーン氏逮捕に強く反撃をするのでしょうか?
フランス政府が表立って何かやれば藪蛇になることは自明の理であります。なぜならマクロン大統領と一私企業との約束は政権にあまりにも刺激的過ぎるからです。フランスでは黄色いジャケットを着た人たちが政府への抗議デモとして8週連続で起きている最中です。今後、更に活発化する動きすら見せており、マクロン大統領の支持率は近年のフランスで史上最低水準となっています。(最低だったのが前任のオランド大統領でしたがそこで仕えたマクロン氏がそれを更に下回るかもしれないというのは皮肉としか言いようがありません。)
よって、フランス側は日本の拘留のやり方を人権無視だと攻める他、手段は限られるとみられます。
外国でバトルする場合、双方一歩も引かず、主張のぶつけ合いになることはごく当たり前であり、ケリー氏が保釈された際もこの決着は法廷で晴らす、と息巻いていましたし、ケリー氏の夫人は人権無視だと主張していました。今回もゴーン氏の息子がインタビューで強気の発言をしていますが、息子はゴーン氏と面会したわけでもなく、弁護士から聞いた話をベースに自分の父を擁護しているだけでなんら証拠も根拠もあるわけではありません。
東京地検はこのバトルを死に物狂いで戦うはずです。ですが、この争い、当の日産がどう展開するか、そちらの方がもっと重要であります。つまり、西川社長がそのような援護を受けながらルノーと満点に近い決着をつけられるのか、ここに全てがあるといってよいでしょう。この問題がある程度決着つくまでは西川氏が前線の先頭に立ち、戦い抜くことになるのでしょう。
このバトル、本戦はこれからだと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年1月8日の記事より転載させていただきました。