証明書のコンビニ交付と立法・行政の怠慢

山田 肇

音声ガイダンスが付いた「コンビニ交付用行政証明書交付端末」を開発し豊島区役所が採用したと、リコーが報道発表した。視覚障害者などタッチパネル操作がむずかしい人々が利用できるように音声案内機能を装備したというのが改良点である。

障害者の不便を解消しようというリコーの努力に敬意を表する。しかし、ちょっと待ってほしい。なぜ、証明書のコンビニ交付が必要なのだろう。

住民票の写しの利用シーンとして思い当たるのはほとんどが公的手続きである。運転免許の取得、不動産の登記、年金の手続き、パスポートの取得、婚姻など戸籍の届出、相続手続き、車両の登録など。そのほかに、就職や賃貸契約の際に本人確認のために民間でも提出を求められる場合がある。

印鑑証明書も同様。遺言状などの公正証書を作成する時、相続手続きなど公的手続きが多い。そのほかに、高額の契約書(たとえば不動産取引)・金銭消費貸借証書を結ぶ際に本人確認のために民間でも提出を求められる場合がある。

住民票の写しや印鑑証明書の利用シーンの大半が公的手続きということは、これら行政事務にマイナンバー連携を許せば行政証明書の交付は不要になるということだ。マイナンバー連携があれば公共機関は電子的に必要な情報を取得できるようになるからだ。

書面による行政事務を温存しているから、国民はコンビニに出向かなければならない。そんな国民の不便を解消するために交付機にアクセシビリティ機能を装備したというわけだ。

目先の改善ではなく、行政事務でマイナンバー連携が許される範囲を拡大するのが本来進めるべき方向である。このようなニュースを目にするたびに、立法と行政の怠慢に腹が立つ。