沖縄県での「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票」が、2019年2月24日に沖縄県で実施される予定で、辺野古米軍基地建設のための「埋立についての賛否を二者択一」で問うものだが、大混乱に陥っている。
そもそも、県全体の意見だけが地元住民の意見だというのはおかしい。BS朝日の「いま、日本を考える2019」でもこの点が大議論になって、私が、辺野古の住民は圧倒的に賛成多数で、名護と宜野湾の市長選挙でも、移転絶対反対派は敗れているのに、そちらは住民の意見でなく、県民全体の数字だけが住民の意見になるなどというべきでないといった。
いまの沖縄では那覇市内は観光がうまくいって絶好調だ。そこでは基地に使うより観光用地に使った方がいいというのは事実だ。しかし、全県がそうではない。
この住民投票は、もともと、市民グループ「『辺野古』県民投票の会」が2018年に県民投票に向けた署名集めを開始。9月に必要数である2万3千を大幅に上回る92,848人分の署名を集め直接請求し、沖縄県議会で10月26日に可決された住民投票条例に基づくものだ。
条例では公布の日から起算して6ヶ月以内に実施するとされており、告示を2019年2月14日、投開票日を2月24日としている。
しかし、住民投票に関する補正予算案が市町村の12月議会において提案されたが、一部市町村議会で予算案が否決され、全市町村で実施することは絶望的になり、延期や設問の手直しの可能性もある。
私はこの住民投票について、「沖縄県民投票の愚劣と英国EU離脱からの教訓(2018年10月02日)」という記事をアゴラに書いている。
そのなかで、私は次のように書いた。
そもそも、基地をどうするかは沖縄県の権限でない。それに、代替案は、それについて、合意が成立しない限りは、普天間に残すということである。勝手にすればよい。
そういう法的な問題を別にしても、そこで設定されている選択肢が、適切なものになりそうもないことだ。直接民主主義的な手法を採り入れることは悪いことではない。ただし、その欠点にも十分に配慮して適切な運用をしなければならない。
もうひとつの問題は、住民投票における選択肢が雑ぱくすぎて、その結果、二者択一としての意味を成していないことが多いことだ。
そして、イギリスのEUからの離脱問題とからめてこう続けている。
イギリスのEU離脱を求める投票では、あとで「そんなことなら、賛成するのでなかった」という問題がたくさん出てきた。
そのなかで一番の問題は、北アイルランド問題だ。少数派のカトリックによるアイルランドへの併合を要求しての内戦を終結させるために、アイルランドと北アイルランドの国境を事実上、撤廃することで合意していた。
ところが、EUを離脱するとなると、この約束は維持できなくなる。そこで唯一の解決は、北アイルランドだけはEUに残留させて、北アイルランドとイギリスのあいだに事実上の国境をつくるしかない。
しかし、こんなこと多数派のプロテスタント住民にとって我慢できるはずがない。
そんなことは、国民投票の前から分かっていたから、その点も投票の選択肢にいれておくべきだった。つまり、「EUから離脱する。しかし、北アイルランドはEU内に留まり、北アイルランドとイギリスの間には国境を設ける」という投票内容にすべきだったのだ。
そして、いま、それがいま障害になって、いま、合意なき離脱が現実化しかねない状況だ。
この考え方はいまでも変わらない。
県民投票が、①辺野古移転、②普天間残留、③県外希望だが話がつくまでは普天間残留、の3択がいちばんよい。2択なら、①辺野古移転、②将来どうするかは別として当面普天間残留、ということだ。
いずれにせよ、すべての考え方の人がどちらかに分類できるようなものであればいいのだ。
ちなみに、この辺野古問題についての私の意見は、普天間基地の辺野古への移転は、政府が「このままの状態が継続するのはよくないので、政府の判断として批判はあるだろうが断行する」ということにすべきだし、県はそれを認めた上で、今後の基地のあり方について聖域なき議論を約束させるのがいいと思う。ただし、政府のほうも、その際に陸上に移動させて埋め立て面積を減らす決断をした方が良い。それなら沖縄県も少し受け入れやすい。