日露平和交渉開始:早く戦争状態から、真の平和へ

今週初頭、日本では成人式が行われていた14日に、河野太郎外務大臣、そしてセルゲイ・ラブロフ ロシア連邦外務大臣がモスクワで日露外務大臣会談を開きました。

これは平成30年(2018年)11月14日にシンガポールで開催された日露首脳会談の際に、
『北方領土と平和条約を前進させていこう』と合意になりました。そして、交渉責任者として外務大臣同士を指名し、翌11月15日には事務方の交渉担当者として森健良(たけお)外務審議官とモルグロフ外務次官協議が行われました。

ラブロフ外務大臣はこれまで、強硬な発言を繰り返してきました。
例えば、「平和条約締結と領土問題の解決は、同義ではない」とし、日ソ共同宣言で合意した平和条約締結と北方領土問題のセット論を切り離して、別々に議論しようと言わんばかりです。

ラブロフ外務大臣は引き続きこんなことも言っています。
「ロシアで言う南クリル諸島(日本では北方領土)は第二次世界大戦の結果、ロシア領と認めるのが前提である。」

これから交渉に入るのに、前提条件を突きつけてきた訳ですが、ラブロフ氏は「これに対して河野外務大臣から反論がなかった」と言い、一方の河野外務大臣は「日本の主張した」と真っ向から食い違っています。

今回、本格的交渉が始まったばかりで、色々な駆け引きが始まったばjかりですが、タイムスケジュールを考えてみると、安倍首相は今年6月に日本で開催されるG20で、プーチン大統領が来日する、その時に合意したいと考えているんです。

G20開催の翌7月には参議院選挙を控えていますから、そこで日露合意を成果として選挙に臨みたいという考えでしょう。

しかし以前私は、衆議院の予算委員会で安倍総理に直接こう話たことがあります。それは北朝鮮の拉致問題に関してだったと思いますが、総理が度々口にする、「私の任期中に解決したい」と言うセリフについて、私は「あまりそのセリフを言わない方が良い」と進言をました。

というのも、タイムリミットがあると足元を見られた交渉になってしまうからです。
仮に今回も『晋三は焦っている』とプーチン氏が考えれば、交渉に於いては、相手の方が有利になってしまうという懸念があります。

そもそも平和条約、これはロシアが望んでいるのか、私の中で考えてきました。北方領土に日本人は上陸できない、すなわち不法占拠状態が続いています。いわばロシアの実効支配が現実であり、これをさらに強固にする事で、別「に平和条約なんか要らないんじゃないの?」と私は思えるんですね。

ただ、ロシア外交を研究している専門家に話を伺ってみると、どうもそうではないらしいのです。やはり、平和条約がないということは戦争状態にあると言えるわけで、ロシアとしては解消したいそうです。

そして平和条約がない現状だと、仮にプーチン大統領が来日したとしても、国賓として扱われず、天皇陛下との拝謁に制限があったり、栄誉礼を受けられなかったりするということも解消したいという。

これもそんなに重要なこと?と、私は思ってしまいますが、どうやら重要と捉えているようです。そして何よりも、資源輸出しかないロシア経済としては日本の経済協力が地域柄必要と考えているようです。やはり、場所的にも生活は大変だし、両者中心都市部から遠いということで、日本が加わって協力をしてくれればありがたいと思っているようです。

いずれにせよ安倍・プーチン両氏の信頼関係はとても厚いです。
そういう意味でプーチン氏は、安倍晋三が総理大臣をやってる間に合意した方が、手に入れる物が大きいと、プーチン氏が考えている可能性もあると思います。

それから全然別の話なんですが、北方領土で日本と合意をすれば、弱腰だと言われているプーチン氏の支持率も考えられているということで、ベラルーシという国を併合することで、国民感情をあおり、支持率を高めたいと考えているやに言われています。
外交は斯く(かく)も難しいものですね。

日ソ共同宣言とは
ソ連がサン・フランシスコ平和条約への署名を拒否したため、我が国はソ連との間で平和条約交渉を別途行うこととなり、1956年、日ソ両国は日ソ共同宣言を締結して、戦争状態を終了させ、外交関係を再開しました。日ソ共同宣言は、日ソ両国の立法府での承認を受けて批准された法的拘束力を有する条約です。
同宣言において、両国は、正常な外交関係が回復された後、平和条約の交渉を継続することとなっており、またソ連は、平和条約の締結後に歯舞群島及び色丹島を我が国に引き渡すこととなっています。
(外務省HP 北方領土問題に関するQ&Aより)


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年1月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。