「睡眠負債」と言えば、2017年の流行語ベストテンに選ばれた言葉ですよね?皆さまは解消されたでしょうか?
スタンフォード大学の教授が提唱しただけあって、アメリカ人の間で睡眠不足=sleep depriviationは眠れないほど深刻な問題です。疾病対策センター(CDC)が、2014年に「睡眠不足は世間一般に広がる伝染病」なるレポートを公表するほど。米国睡眠財団(National Sleep Foundation、NSF)が18〜64歳に7〜9時間睡眠を推奨する一方で、同財団の調査によれば、アメリカ人の3分の1の睡眠時間は6時間以下ですから、まさに「睡眠負債」が積み上がる状況と言えるでしょう。
年齢ごとの適切な睡眠時間は以下の通り。
(出所:NSF)
皆様も既にご存知なように、より良い睡眠のためには長さだけではなく質の向上も不可欠です。NSFによれば、以下が有効とされています。
●一定の就寝時間を守る
●就寝前の寛ぎの時間をもつ
●日常的に運動する
●寝室の温度、音、光などを好みに設定する
●身体に合った枕とマットレスを選ぶ
●アルコール、カフェインなどの飲み物に気をつける
●スマートフォンやゲーム端末機などを遠ざける
アルコールの摂取量が年々増加し、コーヒー好きの人口も広がりを見せ、さらにSNSの普及によりスマートフォンなどをベッドに持ち込む人々も多くなる現代。睡眠時間が短くなったり質が低下するのは当然の帰結でしょう。
とはいえ、ランド研究所の調査に基づけば、睡眠不足による経済損失が2016年時点で4,111億ドルとGDPの2.8%に相当するとあって、睡眠不足は何とか改善したいところ。特に、睡眠不足がもたらす健康上の問題は見逃せません。ニワトリとタマゴの議論になってしまうきらいはあるものの、肥満、糖尿病、うつ病などの割合は、睡眠時間が短いアメリカ人の間で高くなっています。特に肥満に関しては、アメリカの成人に占めるシェアとあまり変わりません。
●肥満
→睡眠時間7時間以下:33.0%、7時間以上:26.5%
●運動不足(過去1ヶ月間に一度も運動せず)
→睡眠時間7時間以下:27.2%、7時間以上:20.9%
●心臓病
→睡眠時間7時間以下:4.8%、7時間以上:3.4%
●ガン
→睡眠時間7時間以下:10.2%、7時間以上:9.8%
●脳卒中
→睡眠時間7時間以下:3.6%、7時間以上:2.4%
●糖尿病
→睡眠時間7時間以下:11.1%、7時間以上:8.6%
●うつ病
→睡眠時間7時間以下:22.9%、7時間以上:14.6%
健康的な生活を送る上ではバランスのとれた食事、適度な運動、そして睡眠が重要であることに間違いありません。それでも、アメリカ人が生活上で優先する事項の1位はフィットネス・栄養で、2位が仕事、3位に趣味が入り、睡眠は4位に甘んじていました。身体と心のバランスを考えるならば、アメリカ人も日本人も関係なく、睡眠への意識を変えねばいけないのかもしれません。
(カバー写真:raquiason/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年1月29日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。