やはり実質賃金はマイナス(代表質問全文)

1月28日、安倍総理の施政方針演説に対し、国​​​​​​民民主党を代表して質問しました。

まず、紙ではなく、タブレットを使って読み上げることを認めてもらうよう、事前にお願いしていましたが認められませんでした。もう平成も終わります。古いルールを改め、国会のペーパーレス化を進めていくべきです。「前例がない」を理由に何も変えなければ、日本は時代の流れに取り残されるだけです。

なお今回、総理から十分な答弁がいただけなかったため再質問をしました。特に、2018年の実質賃金の上昇率がプラスなのかマイナスかシンプルな質問をしましたが「計算できるかどうか厚生労働省に検討させている」との答弁で明確に答えてもらえませんでした。しかし、質問の翌日、厚生労働省は、2018年の大半の月で実質賃金上昇率がマイナスだったことを認めました。

21年ぶりの高い伸び率と公表された年の実質賃金の伸びが、実はマイナスだったということは深刻な事態です。国民は一体何を信じればいいのでしょうか。これはまさに、「賃金偽装」、「アベノミクス偽装」とも言うべき問題です。

以下が全文です。毎月勤労統計問題以外にも、少子化対策や、日米、日露関係など、国内外の政策課題について質問しています。少々長いですが、ご一読いただけると嬉しいです。

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第一九八回国会における代表質問

国民民主党 代表 玉木雄一郎

【はじめに】

国民民主党代表の玉木雄一郎です。国民民主党・無所属クラブを代表して、安倍総理に質問します。

まず冒頭、一点申し上げます。

この代表質問、タブレット端末を持ち込んでやらせていただきたいとお願いしましたが、認めてもらえませんでした。議場の皆さん、もう平成の時代が終わろうとしています。国会のペーパーレス化のためにも、こうした古いルールを改めて、ペーパーレス化を進めていこうではありませんか。

さて、私たち国民民主党は、「共生」を理念として掲げる「改革中道」政党です。「つくろう、新しい答え。」を党のキャッチフレーズに掲げ、新しい時代へ進む新しい解決策を提案していきます。また、右か左かといった二元論的な対立を乗り越え、社会全体を包み込む温かさをもって、野党勢力の結集に尽力してまいります。

質問に入ります。

総理の演説を聞きましたが、憲法改正は一番最後にたった3行。日露交渉も4行だけで、「北方領土」という言葉さえ見当たりません。拉致問題に至ってはたった2行。安倍総理が今年11月20日まで続けば、桂太郎首相を抜いて憲政史上最長との話もありますが、憲法改正にしても、日露交渉にしても、拉致問題にしても、順調に進んでいるようには見えません。安倍総理、総理が任期中に、一番やりたいことは何ですか。まず、伺います。

様々な課題が行き詰まっているからこそ、都合のいい数字だけをつまみ食いし、時にはカサアゲまでして、都合よく成果を宣伝することばかりに腐心しているように見えます。しかし、庶民に、戦後最長の景気回復の実感は全くありません。

例えば、総理は、子どもの貧困が改善したと胸を張っていますが、依然として、ひとり親家庭の相対的貧困率は50%を超えています。総理、ご存知ですか。また、現役世代の生活保護世帯が8万世帯減ったと言いますが、この間、生活保護世帯の半数以上を占める高齢者の受給世帯は増加の一途をたどり、安倍政権になってから約20万世帯も増えています。総理、ご存じですか。

働く現役世代にとっても、50代以降に教育費と介護費を同時に負担しながら、自分の老後の資金をつくることは相当難しいのが現実です。現に、安倍政権6年間で、年収300万円の世帯で収入から税などを除いた実質可処分所得は約20万円減少、年収400万円で約25万円減少しています。

総理、都合のいい数字だけを並べて国民生活の厳しい現状から目を背けることは、もうやめませんか。国会は、あなたの自慢話を聞く場ではなく、国民生活の現実に向き合い、解決策を導き出していく場です。そして、都合のいい数字で飾り立てるために、役所の忖度と不正が招いた結果が、今回の毎月勤労統計の問題ではないでしょうか。

【毎月勤労統計問題】

昨年6月に名目賃金の伸び率が公表された際、21年ぶりの高い伸び率と報道されましたが、今回の統計不正が発覚し、再集計では当初発表の3.3%から2.8%に下方修正されました。さらに、学識経験者から構成される中立の第三者機関である総務省統計委員会は、景気指標としては、再集計した2.8%より、同じ企業サンプルを比べた「参考値」1.4%の方が実態に近く重視すべきとしています。当たり前です。違う人間の身長を比べて、背が伸びたと言っているような数字に、意味はありません。

総理に伺います。昨年6月に名目賃金が「21年5ヶ月ぶりの高い伸び率」だったという主張を撤回しますか。

さらに、物価上昇を差し引いた実質賃金の伸び率を試算すれば、昨年6月は0.6%となり、かつ、6月以外の参考値はマイナスとなります。ということは、同じ企業サンプルを比べたら、昨年1月から11月の期間における実質賃金の伸び率は、結局マイナスだったのではないですか。昨年1月から11月までの物価上昇を差し引いた実質賃金の伸びは、具体的に何%になるのか、少なくともプラスなのか、マイナスなのか、明確な答弁を求めます。

21年ぶりの高い伸び率と公表された年の実質賃金の伸びが、実はマイナスだったということになれば、事態は極めて深刻です。これはまさに、「賃金偽装」、「アベノミクス偽装」とも言うべき大問題です。

厚労省による調査は、第三者とは名ばかりのお手盛り調査でした。根本大臣は、24日の国会で、第三者調査について間違った答弁をしていたことを昨日認めました。しかも、根本大臣は昨年12月20日に報告を受け、徹底調査を指示をしていますが、統計の不正を知りながら、翌21日に予算案の閣議決定にサインしたことになります。安倍総理、根本大臣を罷免すべきではありませんか。

また、麻生大臣は「上がっていないと感じる人の感性」といった言いましたが、実質賃金が上がっていないのは「感性の問題」ではなく、まさに事実そのものだったわけです。予算の修正を余儀なくされたことも含め、麻生財務大臣も謝罪すべきではありませんか。

そして、この統計不正によって、雇用保険の失業給付などの支払い不足が発生しています。本来、必要な人に支払われるべきお金が、支払われていないのです。政府は追加給付額として700億円を計上していますが、平成16年から平成23年については元のデータが破棄されているため、本来支払うべき正確な額は不明のままです。その意味で、追加給付額には確たる根拠がありません。根拠のない追加給付額を計上した修正予算を元に議論することはできません。データをすべて探し出し、不正の全容を解明するのが先であり、その上で予算の修正案を提出すべきではありませんか。根拠のない支出を含んだ欠陥予算案を国会で審議することはできないはずです。総理の見解を求めます。

【アベノミクス、安倍政権の限界と課題】

安倍政権が発足してもう6年。大規模な金融緩和に頼った経済政策に限界が来ていることは明らかです。総理は未だに「デフレは貨幣現象」だと信じているのでしょうか。デフレの原因は他にもあるとの考えに変わったのでしょうか。

マイナス金利の導入もあり、地方銀行の収益が悪化しています。地方銀行の収益が悪化すれば、地方経済にも大きな影響を与えます。地方銀行の収益悪化の影響をどのように考えているのか、総理の見解を伺います。

また、企業の内部留保が500兆円にも上る一方で、企業が生み出した付加価値を労働者にどれだけ還元されているかを示す労働分配率は下がっています。働く人にもっと還元されるべきです。

私は、労働分配率を上げた企業の法人税率を引き下げると同時に、必要以上に多額の内部留保を持つにもかかわらず、労働分配率が低い企業の法人税率を引き上げる「労働分配促進税制」を導入すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

グーグルやアマゾンといった「GAFA」など、プラットフォーマーとも言われる巨大IT企業の一人勝ち状況が進み、一部の企業は、実質的に日本で上げた収益を他国に移し替えることで、本来日本で払うべき法人税を払っていません。また、優越的地位の濫用とみられるケースも散見されます。これら巨大IT企業への課税や独占禁止法の適用を、EU並みに厳格化すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

今、企業には大量の個人データが集まっています。そんな中、ポイントカード大手の「Tカード」を運営する会社が、裁判所の令状なしに会員情報や利用履歴を捜査当局に提供していたことが明らかになりました。

公文書や統計データを改ざんする信頼できない政府が、膨大な個人情報を収集し、国民の思想信条も含めたプライバシーも監視するという、おそろしい社会になると危機感を覚えている国民も多いと思います。裁判所の令状なく捜査当局が個人情報の提供を受けている企業は、「Tカード」の運営会社を含め、現在何社あるのか、総理の明確な答弁を求めます。

東京オリンピック・パラリンピックの招致に関して、フランス当局から贈賄の容疑がかけられています。

疑惑を払拭し、世界から祝福される大会にするためにも、政府としても、日本オリンピック委員会、JOCの調査を鵜呑みにせず、JOC竹田会長や電通などの関係者から事情を聴くなど、全容解明を図るべきではありませんか。また、国内法では必ずしも禁止されていない、IOC委員等への贈賄行為を明確に禁止する法改正を行うべきではないでしょうか。総理の見解を伺います。

原発については、福島第一原発事故以降、安全対策費用が高騰し、英国、トルコも断念の方向となり、原発輸出は事実上全て頓挫しました。今後、再生可能エネルギーのコストが低下する中で、輸出に限らず、国内においても、民間企業の経済合理性に基づく民営原発は難しくなってきているのではないでしょうか。総理の認識を伺います。

【経済政策の「新しい答え」】

地方と中央の格差が広がっているのも、アベノミクスの弊害です。

安倍総理は、農林水産業が万事うまくいっているように演説しましたが、地方の実態は違います。人口減少は底が抜けるように進み、空き家、耕作放棄地、鳥獣被害の3点セットが加速する一方です。総理、地方の現状が本当に見えているのでしょうか。

こうした流れに歯止めをかけるため、国民民主党は、市場原理を重視する産業政策としての農業だけでなく、農業や農地の持つ多面的機能を重視する地域政策としての農業にもっと力を入れます。

具体策として、かつての農業者戸別所得補償を改良し、GAPなど環境や食の安全に配慮した農法を採用する農家には新型の加算措置を講じ、加えて、地域ごとの生産コストを踏まえた地域別の支払単価を導入した「新たな所得補償制度」を提案します。総理の見解を伺います。この新たな所得補償制度の導入によって、安心して営農継続できる環境を整え、農村集落の衰退に歯止めをかけていきます。

また、物流コストの低減を通じて地方経済の活性化にも資する政策として、高速道路料金の引下げを提案します。

現在はやがて無料になることを前提に高い料金設定となっていますが、永久有料制とすることにより、その分の安定永続収入が見込まれ、料金値下げの原資ともなります。永久有料制度への移行による料金値下げを検討すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

【外国人労働者の受け入れ拡大】

地方では、深刻な人手不足も発生しています。しかし、4月に施行される新制度では、特定技能外国人は転職自由となります。そのため、給与の高い地域に人が集中し結局地方の人手不足は解消しないとの懸念がありますが、昨年12月に閣議決定された基本方針を見ても具体策が全くありません。これで給与の高い都会への集中をどうやって防ぐのか、具体策について、総理の見解を伺います。

【全世代が安心を実感できる社会保障改革】

人口減少を国難と呼ぶわりには、安倍政権の取り組みは掛け声倒れと矛盾に満ちています。例えば、待機児童問題。当初、2017年度中に待機児童ゼロと言っていたのに、突如、達成期限を3年のばして2020年度としたのは記憶に新しいところです。総理は、待機児童ゼロの目標は「必ず実現いたします」と力を込めて述べたが、その期限は2020年度末で変わらないか確認したい。幼児教育の無償化によって保育ニーズが高まり、むしろ待機児童問題は悪化するとの指摘もあり、さらに目標が先送りされる「永遠の道半ば」になるのではないですか。この質問は大学生からぜひ聞いてほしいと頼まれた質問ですので、はぐらかさずお答えください。

少子化の最大の原因は経済的理由から子どもをあきらめてしまうことですが、その解決策として、私は「第3子に1000万円給付」のコドモノミクスをかねてから主張しています。金額だけ聞くとびっくりするかもしれませんが、現在の児童手当をベースとして、第一子は月1万円、第二子には月2万円、第三子以上には月4万円とすれば、第三子には18歳の成人になるまで累計約900万円が支援されることになります。追加の財源も、約1兆円程度で始められます。我が国最大の課題である少子化を乗り越えるためには、異次元の金融緩和ではなく、「第3子1000万円」のような異次元の子育て支援策が必要と考えますが、総理の見解を伺います。

「人生100年時代」と言いますが、多くの人は100歳まで生きることに不安を感じています。政府が現在検討しているように、「現役世代」を延長し、仮に70歳まで働き続けるとして、その後の人生がまだ30年ある。生活を支える最低限の所得の確保が重要です。来年度から、低所得年金者向けに、民主党政権時代に決めた最高月5000円、年間6万円の福祉給付金制度が始まります。一歩前進ですが、まだまだ不十分です。

私たち国民民主党は、安定財源の確保を前提に、年金の最低保障機能をさらに高め、人間としての尊厳ある生活をすべての高齢者に保障する、高齢者向け「ベーシック・インカム」としての最低保障年金や、高齢者向け住宅などの「ベーシック・サービス」を提供する総合政策を導入していく方針です。「貯金ゼロでも不安ゼロ」の社会、これが私たち国民民主党の目指す社会像です。

【消費税増税】

総理、今からでも間に合います。軽減税率は撤回しましょう。混乱しか生み出しません。軽減税率の適用・不適用の線引きは国民に分かりにくく、また免税となっている事業者が取引から排除されかねません。軽減税率は廃業促進税制となりかねないのです。何より、不公平極まりない。

具体的に総理に伺います。

宅配の新聞には軽減税率が適用され8%の一方で、同じ中身の新聞でも駅売りやコンビニで買えば10%、電子版も10%。意味が分かりません。その理由を明確にお答えいただきたい。

安倍政権は、5%ポイント還元やプレミアム付き商品券といった小手先の対策ばかりに熱心で、議員定数削減や税金のムダ遣いの徹底など、本来やるべきことをやっていません。いわゆる逆進性対策も、軽減税率ではなく、所得税減税と給付策の組み合わせの方が分かりやすく効果的であることは、この議場にいる多くの方は理解しているはずです。

しかも、安倍総理は、「今回(消費税を)引き上げた分は、全部お返しし、さらにお釣りが来る」と言いましたが、そんなことをするくらいなら、増税自体をやめた方がましです。2012年に民主党・自民党・公明党で合意した「社会保障・税の一体改革」の精神は、安倍総理によって完全に踏みにじられてしまいました。残念でなりません。

【外交・安全保障政策】

1.日米関係

3月にも開始される日米通商交渉では、日本から輸出される自動車の数量規制を求めてくる可能性が高い。しかし、数量規制は、最も自由貿易を阻害し、GATT第11条違反になり得ます。WTO体制を遵守し「自由貿易の旗を高く掲げる」というなら、米韓FTAや、メキシコ・カナダとの貿易協定におけてアメリカから求められた、自動車の数量規制だけは絶対に容認しないと、ここで総理に明言してもらいたいと思います。これを受け入れてしまえば、日本の自動車産業はがたがたになってしまいます。

2.日露関係(北方領土問題)

日露関係について伺います。

私は、昨年、一つの現実的な解決策として、1956年の日ソ共同宣言を土台とした交渉を提案しましたが、交渉はロシアペースになっているように見えます。

そこで、安倍総理の日露交渉の基本方針について伺います。まず、総理の言う「日ソ共同宣言を基礎として」という意味は、二島「先行」返還ではなく、国後島や択捉島は永久に返ってこない「二島のみ」という意味でしょうか。もしそうなら、それは、これまでの日本政府の方針とは異なるものであり、明確に国民に説明すべきではないでしょうか。国後島、択捉島の帰属は日本にあるのか、ロシアにあるのか、総理の考えを明確に示していただきたい。

さらに、総理が年頭記者会見で「住民の方々に日本に帰属が変わることについて納得、理解していただくことも必要だ」と述べたことにロシア側が抗議しましたが、島の帰属がロシアにあることを前提にした発言は日本国の総理大臣として不適切です。

総理は色丹島の帰属さえ、すでにロシアにあると認めて交渉しているのですか。色丹島の帰属は日本にあるのか、ロシアにあるのか、総理の考えを明確に示していただきたい。

あわせて、歯舞群島の帰属についても、総理の考えを明確に示していただきたい。

3.日中関係

米国は、高速大容量の5G技術で先行するファーウェイ社など中国製品を米国の息のかかった経済圏から排除する、いわゆる「デカップリング」政策を同盟国に求め、世界の経済圏を分断するような状況となっています。

日本は安全保障上のリスクを理由に情報通信機器の政府調達からこれらの製品を排除することを決めましたが、米国の同盟国であるドイツやフランスは必ずしも排除を決めていません。日本は何を根拠に中国製品の排除を決めたのでしょうか。情報窃取の可能性がある機器を特定しているのでしょうか。

日本は中国と経済的結びつきが大きく、また、「自由貿易の旗を高く掲げる」とした日本が、米国の政策に付き合うだけでいいのか、安倍政権の戦略を伺います。特に、米国のデカップリング政策の日本経済への影響、とりわけ日中貿易への影響をどのように分析しているのか、明確な答弁を求めます。

4.日韓関係

いわゆる徴用工判決、火器管制レーダー照射など、我が国にとって受け入れ難い問題です。今、日韓関係は非常に厳しい状況にあると認識しています。だからこそ、日本の主張をはっきり伝え、しっかり対話すべきではありませんか。

しかし、総理は演説でこうした困難な問題についての言及を避け、なぜ「韓国スルー」をしたのですか。レーダー照射問題について問題解決の責任があるのは韓国側だと考えますが、日本政府としては、今後、どのように対応していく方針なのでしょうか。もう何もしない方針なんですか。総理の答弁を求めます。

5.北朝鮮問題

「韓国スルー」だけでなく、北朝鮮問題解決に向けた熱意も感じられませんでした。

昨年8月、韓国政府は、国連禁輸品の北朝鮮産石炭を韓国に密輸することに加担したとして、外国籍貨物船4隻の入港を禁止しました。いったんロシアのサハリン港に寄って「ロシア産」として韓国の港に運んだケースです。

しかし、実は、これら4隻の船は、日本の港には自由に出入りしています。国連制裁違反貨物船舶が、何ら制裁を受けることなく日本の港に入港しています。日本には実効性ある形で取り締まる国内法がないために、韓国でさえできている国連制裁の執行ができていないのです。なぜ、放置したままなのか。安倍総理、北朝鮮に対して威勢のいいことばかり言うのではなく、制裁逃れを許さないよう、穴を埋める法整備を早急に進めるべきではないでしょうか、総理の見解を伺います。

6.日米地位協定の改定

先日、一昨年12月に米軍機からの部品落下事故があった緑が丘保育園を訪問した時、あるお母さんから「沖縄の子どもたちの命は、本土の子どもたちの命より軽いのですか」と言われました。このお母さんの言葉に対して、私たち政治家は何と言えば良いのか。国民の生命と財産を守るべき政府は、どう応えるべきなのか。胸をえぐられる思いでした。

国民民主党は、昨年12月26日、日米地位協定の改正案を取りまとめました。主権が大幅に制限さた「治外法権」とも思われる状況は、主権国家として一日も早く改めるべきと提案しています。

そこで、まず、総理に、在日米軍に対する国内用の適用に関する原則を伺います。政府は本年1月1日、地位協定に関する外務省ホームページ上での説明を突如、変更しました。これまで政府は、「一般国際法」を根拠に、在日米軍には国内法が適用されないとの説明をしていましたが、年明けの修正でこの「一般国際法」という記載を削除し、「軍隊の性質に鑑み、免除される」との説明に改めました。なぜ、修正したのか、また、この修正によって、在日米軍にも、原則、国内法が適用されることに変わったのか、総理の明確な答弁を求めます。

日本の主権を守り、日本の子どもたちの安全を守るために、単なる運用改善ではなく、地位協定そのものの改定すべきと考えますが、日米地位協定改正に向けた総理の認識を伺います。

7.新防衛大綱

新防衛大綱について伺います。いずもを事実上空母化し、ヘリコプターの代わりにF35Bを積んだ場合、いずもの本来の任務であった対潜水艦の哨戒活動に支障は出ないのでしょうか。

また、中国やロシアが開発しているとされる音速の5倍で飛行し探知と迎撃が困難な極超音速ミサイルは、イージス・アショアで迎撃できるのか、総理の見解を伺います。ロシアは今年中にも実戦配備するとしていますが、イージス・アショアが無力化するのではないですか。そもそもイージス・アショアが実際に迎撃できるようになるのはいつと想定しているのか、また、運営費を含めた総コストはどの程度になると考えているのか、総理の明確な答弁を求めます。

【憲法改正】

憲法改正の国民投票について、国民民主党は、CM規制を含め資金力が国民投票に与える影響を最小化するための法案を提出済みです。業界の自主規制ではなく、法律に基づくCM規制を導入すべきです。憲法審査会で積極的に議論を進めていきます。

国民民主党は、立憲主義の観点に立ち、憲法改正議論には真摯に向き合っていきますが、自民党の条文イメージにおける9条改憲案では、単に自衛隊を明記するだけではなく、制約のない自衛権の拡大を認める内容になっており、こうした案に国民民主党は反対です。

そもそも、総理が主張してきた「何も変わらない」とする「自衛隊明記案」と、自民党の9条の「条文イメージ」は同じなのか違うのか、明確な答弁を求めます。総理は、自民党の「条文イメージ」でも、自衛隊が行使する自衛権の範囲は拡大しないと考えているのか答弁を求めます。

 【むすびに】

今上陛下は昭和58年、50歳の誕生日の会見で、論語の一節を引いて次のように述べられました。

「好きな言葉に『忠恕(ちゅうじょ)』があります。自己の良心に忠実で、人の心を自分のことのように思いやる精神です。この精神は一人一人にとって非常に大切であり、さらに日本国にとっても忠恕の生き方が大切ではないかと感じています。」

今年5月に即位される皇太子殿下も、同じ50歳の誕生日に今上天皇のこの言葉を引用されました。

私たち国会議員も、この「忠恕」の精神をもって、国民の期待に応える論戦を国会で展開していくことが必要ではないでしょうか。その意味で、総理には改めて正直で誠実な答弁を、とりわけ、野党の質問の先にも多くの国民の声があるということに思いを馳せて答弁いただくことを求めます。また、野党各党・各会派の同僚議員にも、様々な思いを乗り越え、自民党に代わり得る「もう1つの選択肢」をつくるため、大同団結することを呼びかけたいと思います。なお、総理の答弁が不十分な場合には、再質問、再々質問をさせていただくことを申し添え、私の質問を終ります。ご清聴、有難うございました。

以上


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2019年2月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。