米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は、29日から30日にかけて開催された連邦公開市場委員会(FOMC)において、政策金利となるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年2.25~2.50%のまま据え置くと投票メンバー10人の全員一致で決定した。
12月に開催されたFOMCの議事要旨によると、多くの参加者が、追加利上げを我慢強く判断できると表明するなど、利上げ見送りの姿勢を示していた。
今回のFOMC後に発表された声明文によると、「委員会は先行きの政策金利の調整を様子見する(be patient)だろう」と明記。これまで盛り込んでいた「若干の段階的な追加利上げが正当化される」との文言も完全に削除された(日経新聞電子版)。
これによって今後の利上げが完全になくなったわけではないものの、景気・物価動向、さらには金融市場動向次第では、利上げを棚上げしてくることが予想される。
FRBは資産縮小に関連した声明文も別枠で公表して「経済活動や市場動向に応じて、バランスシートの正常化の詳細を修正する用意がある」と表明した。パウエル議長は記者会見で「当初予測よりも早期に資産縮小を停止する」と明言した(日経新聞電子版)。
昨年12月19日のFOMC後の記者会見において、パウエル議長はバランスシートの縮小に関する質問に対して次のように答えていた。
「私たちは金融政策の正常化をどのように進めるか注意深く検討し、効果的にバランスシートを正常化させられるように考えてきた。これまでのところ正常化はスムーズで、変更するつもりはない。引き続き金利を金融政策の積極的なツールとして活用していく」(12月20日付日経新聞電子版)。
わずか1か月程度の期間を置いて、パウエル議長は変更するつもりはないものを変更したことになる。
今回のFRBの利上げやバランスシート縮小の停止の示唆については、市場におけるリスクを軽減させるためのものとみられる。これまでのように淡々と利上げが続けられる状況ではなくなりつつあったことに、FRBは少し気がつくのが遅れたかに思われる。しかし、優柔不断ともみえるが、金融政策においてはこのような柔軟な対応は重要になろう。
注意すべきは中央銀行の金融政策が、景気や物価さらには株価を動かしているわけではないということにある。FRB利上げを打ち止めせざるを得ないという環境に移りつつあることを重視すべきであろう。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年2月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。