沖縄問題:社会運動がエスカレートした場合の対処法 --- 井上 孝之

寄稿

私は本土に住む技術系サラリーマンでこの問題に特段の知見があるわけではありません。
私がこの原稿を書いたのは、高い見識をお持ちのアゴラ執筆陣にこのような観点で論考を深めてほしいと考えたためです。

辺野古岬と大浦湾(写真AC:編集部)

私が興味を持っているのは「社会運動がエスカレートした場合の対処法」という観点です。
つまるところ、沖縄の問題も原子力や韓国の問題も社会運動がエスカレートしてしまった結果なので、それに対してどのような対処法があるのかの知見を社会全体で共有しておくことには価値があるように思われます。

1. 社会運動がエスカレートする要因

まず社会運動がエスカレートする要因を考えてみたいと考えます。私は下記の要因が絡まり合っていると考えています。

①後には引けない運動家
運動家は汚い言葉で対立陣営を罵倒して、その度に支持者が集まり、「もっとやれ!」とけしかけます。運動を続けている限りは英雄として扱われるので、運動家の虚栄心も満たされます。今更、「もうやめたい」とか、「相手の言い分にも一理ある」とかは口が裂けても言えません。もう運動が終焉するまで突き進むしかないのです。

②金儲けできる人たち
沖縄の問題で言えば、運動が先鋭化すればするほど、国からの補助金が増えます。
また、マスコミ関連も新聞の発行部数が増えたり、視聴率が上がったりします。マスコミに関しては、沖縄の新聞社だけでなく、本土の新聞社もテレビ局も事態が混乱するほど恩恵を受けるので、より自体が複雑化するような方向の論調で記事が書かれます。

それ以外にも、反対運動関連グッズの売り上げが増えたり、本土から大挙して活動家がやってくれば、その人たちを宿泊させる民宿系(?)の人たちも儲かるかもしれません。

③解決しない問題
問題が解決しない限り社会運動は続き、運動の中身はエスカレートしていきます。
沖縄の人たちからすれば、米軍基地は無いに越したことはないし、一方で、日米安保から沖縄の米軍基地は必須です。問題があって、解決されない限りはこの問題が続くことになります。

2. 社会運動のエスカレートを阻止する方法

何の知見もない私ですが、とりあえず上記の①~③に対応して解決策を考えてみます。

①活動家対策
(1)拳を下ろす口実を与える
何らかの条件や解決策を提示して、「この条件なら拳を下しても、やむ負えない(あるいは、運動家の面子が立つ)」という環境を整えます。

この場合、「**さんがこれまで頑張ってきたからこの条件を引き出せた」という活動家の虚栄心をくすぶれればさらにいいと思われます。この方法が最も理想的なように思われますが、当然のことながら簡単に拳を下す口実を与えることは簡単ではありません。

(2)論理矛盾を突く
活動家は「自分は正しい、相手は間違っている」と主張しているのだから、その主張が間違っているという認識が広がれば、活動家の主張は説得力を持たなくなります。

沖縄の件で言えば、活動家は他の埋め立て計画は認めているのだから、「サンゴを守れ!」という主張は成り立ちません。

また、「沖縄は米軍基地の大部分を引き受けている」という言い方は事実ですが、「迷惑施設を引き受けている」という意味では、原子力関連施設を受け入れている福井県、新潟県、青森県と同じですし、空港や鉄道・高速道路の近くで騒音に悩んでいる人たちもいます。なぜ、沖縄だけが破格の補助金を受ける権利があるのかという点はアピールすべきであるように思われます。

このような論理矛盾は活動家本人よりも周りにいる支持者にアピールして、社会運動からの離脱を促して、「気が付けば、論理矛盾に気が付かないバカしか周りにいない」状態に追い込むことが重要であるように思われます。

(3)スキャンダルにより信用を失わせる
都知事選の鳥越俊太郎氏のように、「私は正しい」と言っている人はスキャンダルがあれば、すぐに信用を失います。活動家も所詮はただの人なので、調べればいろいろ出てくるはずです。

②金儲けしている人のビジネスモデルを崩壊させる
(1)補助金を絶つ
沖縄県の場合は、辺野古移設を前提とした補助金を受けているのに、辺野古移設に反対しているので、「辺野古移設に反対するなら、補助金の受け取りを拒否すべきだし、これまで受け取った分も返納すべき」という主張は成り立つはずです。このような主張を強めれば、お金を目当てに活動している人を黙らせることはできると思われます。

(2)正確でバランスの取れた情報発信を行う
新聞を読んだり、ニュースを見たりする人の多くは「正確でバランスの取れた情報を得たい」と考えていると思われます。確かに自分の主張と異なることを報じている新聞やニュースを遠ざける人は多いと思われますが、一定以上の知性がある人であれば、新聞やニュースで報じられている内容と現実に起こっていることに齟齬や矛盾があれば、その原因を調べたり、「本当の事実は何か」と考えて、正確な情報が載っているサイトを探すはずです。

そのときに、「このサイトの情報がもっと正しく、信頼できる」という評価を得られれば、オピニオンリーダー的な人はそのサイトを見るようになるし、結果として既存メディアの情報の信頼性が低いことも世の中に知らしめることになって、既存メディアの収益性も低下させることになるので、大手マスコミが取っている「世の中を混乱させて収益を得る」というビジネスモデルにひびを入れることはできると考えています。

③問題を解決する/問題の設定を変える
問題を解決できればそもそも問題になっていないので、簡単に「問題を解決すればいい」ということはできませんが、「問題の設定を変える」ということは可能かもしれません。

沖縄の場合は、「中国の脅威にどのように対処するか」という問題を考えれば、「米軍が沖縄に駐留していることこそ解決策」でもあります。現実の問題は多面的であるので、一つの問題であっても多面的に考えるというアプローチだけでも意味があるように思われます。

以上が何の知見もない技術系サラリーマンの意見ですが、「社会運動がエスカレートした場合の対処法」という設問は社会学あたりでさんざん議論されているようにも思われます。そのあたりに知見のある人はぜひその知見を紹介していただければ建設的な議論が可能になると期待しています。

井上 孝之 
沖縄に何度か旅行に行ったことのある本土在住の技術系サラリーマン

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