ロスジェネの死体蹴り

城 繁幸

最近、人手不足にもかかわらず就職氷河期世代、いわゆるロスジェネが悲惨なことになっているという記事を目にする機会が増えた。たとえばこんなのが典型だ。

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さすがに「小泉・竹中改革で規制緩和したのが原因だ」というバカはほとんどいなくなったようだが、では処方箋としてはどうすべきだったのか。

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それは正社員の解雇規制を緩和して新卒採用や非正規雇用のみに雇用調整を押し付けるのをやめることだった。たとえばリーマンショック時に、某大手メーカーの子会社では、親会社から押し付けられた中高年正社員を数十人受け入れるために200人ほどの派遣労働者を雇止めにした。

「派遣さんの3倍の給料もらっていながら半分ほどしか仕事できない連中を引き取るのは納得いかない」と総務の人間は嘆いていたが、判例で「正社員を切る前に新卒採用止めて非正規も切れ」となっているのだから仕方がない。

正社員の解雇規制を緩和すればこういう理不尽なことが無くなり、特定の世代へ負担が集中することは無かっただろう。

派遣を含めた非正規雇用というのは終身雇用を維持するための弾除けとして使われているので、正社員制度そのものを見直す以外に格差是正の方法はないということだ。

というような話を筆者のような立場の人間は10年前から一貫して続けてきたわけだが、当時はボリュームゾーンの団塊世代がまだ現役で組織の上の方にがっちり残っていたからそういう論は受けが悪かった。かわりに「正社員もこんなに大変、終身雇用は悪くない」というロジックのよくわからない論がそういうオッチャン達にはうけていた。

で、何が言いたいかというと、冒頭のロスジェネ大変だ論を書いてる小林という人は何を隠そう、そういう終身雇用は悪くない論をさんざんぶっていた張本人だということだ。

【参考リンク】雇用崩壊

たぶん団塊世代はリタイアして雇用に興味無くなったけど、逆にロスジェネが40代半ばになって危機感を募らせてるからそっちの方が飯のタネになりやすいんだろう(苦笑)

というわけで、これから「ロスジェネ大変だ論」がたぶんちょっとしたブームになると思われるが、せめて上記のような経緯があったということは忘れられないようにここに記しておこう。

さて、上記の本を改めて読み返してるだがなかなか強烈だ。トップバッターは「政界きっての経済通」(ホントにそう書いてある)こと枝野幸男センセーなんだけど、その主張が凄い。

「派遣を規制緩和してまで外需に依存する産業構造が間違い。これからは内需だ」そうで、その筆頭に挙げているのはなんと介護事業である。

「派遣や期間工として働いているけど、リーマンショックみたいなのがいつ来るかわからないので本当は安定した介護業界とかで働きたいんです」という人は、次の選挙では迷わず立憲民主党に投票するといいんじゃないか。筆者はそんな人に会ったことないけど。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2019年2月8日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。