安倍首相の「悪夢のような民主党政権」という発言が話題になっており、民主党政権時代に円高で多くの企業が海外生産に切り替えたと思っている人は多いでしょう。しかし、実際は民主党政権時代に海外生産が増えたという事実はなく、円高円安関係なく長期的に日本企業の海外生産は増え続けています。
長期の日本企業の海外生産の推移は、平成28年国土交通白書 第一章 第一節 3国際環境 図表1-1-7 を参考にしていただきたいのですが、日本企業の海外生産は民主党政権が始まる前から増え続けており、むしろ民主党政権時代は若干減って安倍政権下で大きく増加しています。
また、為替において1995~98年、2005~07年、2012以降に円安が進みましたが、この時代に日本企業の海外生産は増えており、日本企業の海外生産は円高円安関係なく増え続けているのです。
そもそもかつて日本が国内で生産していたのは低賃金、通貨安というコスト優位があったからで、先進国になった現在において国内生産に固執する必要はありません。特に消費者向けの汎用品は安くしないと売れず、海外生産に頼らざるをえません。円安にすれば生産が国内に戻るというのは幻想で、日本企業の海外生産は為替関係なく増え続けているのです。
ただ、海外生産が増え続けるからといって国全体の雇用が奪われるわけでもありません。日本企業の海外生産は長期的に増え続けていますが、日本の失業率は2002年が最も高く、リーマンショック期に一時的に高くなりましたが長期的には改善しています。個別の業種では海外生産が増えて雇用が失われることはあっても、国全体の雇用と日本企業の海外生産に相関性はほとんどありません。
日本では為替がちょっと円高に振れただけで大騒ぎしますが、為替の影響はそれほど大きくなく、貿易が経済全体に与える影響もそれほど大きくはないのです。
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水口 進一 京都大学経済学研究科卒の個人投資家
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