すったもんだしたが、ようやくにして小池都知事と都議との一問一答方式での「一般質問」が行われるとのこと。
小池百合子、この魅力的ながらも破壊的な存在
「トリックスター」という言葉がある。
「神話や民間伝承のなかで、トリック(詐術)を駆使するいたずら者として活躍する人物や動物。ときには愚かな失敗をし、みずからを破滅に追いやることもあるが、詐術的知恵や身体的敏捷性をもって神や王など秩序の体現者を愚弄し、世界(社会)秩序を混乱・破壊させる。一方、一般の人間界に知恵や道具をもたらす文化英雄としての役割も果し、両義的な性格をもつ。」(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
小池百合子氏がある種の魅力をもつ人物であることは認めざるをえない。また、かつてテレビ番組で共演していたうるさ型の武村健一氏や大物政治家の懐に入り、評価され出世し影響力を獲得していったことも政治家としては実力だろう。また選挙に強く落選したことがない。選挙民の支持を受けてきたことは事実であり、勿論その点が彼女の政治的基盤になっている。
しかし一方で、日本新党を皮切りに、自由党、保守党、自民党などを渡り歩き、あげく現在は自民党とも距離ができ自ら「希望の党」を立ち上げたもののグダグダな状況であるなど、必ずしも周辺の信頼を積み重ねることには成功していないように見受けられる。実際に毀誉褒貶が多い。
私個人としては、日本に数少ない女性の有力政治家でもあり国際感覚もある基本的には応援したい属性なのだが、都知事として行う政策があまりに場当たり的、支離滅裂なものとしか言えず危機感を持つに至った。
公約が場当たり的で、しかもほぼ空手形
こと小池氏が都知事に就任して以来の政策だけで評価すると、すべてが非常に場当たり的でほぼ空手形に終わっていることに気がつく。
「待機児童ゼロ」「前業ゼロ」「満員電車ゼロ」「ペット殺処分ゼロ」「介護離職ゼロ」「都道電柱ゼロ」「多摩格差ゼロ」の7つのゼロを目指すと掲げていたわけだが、どれひとつとっても従来都官僚がすすめていた施策に多少乗っかる程度で、都知事のリーダーシップを感じる取り組みは実現していないように思える。
例えば、「満員電車ゼロ」。もちろんまったく改善などしていない。2階建て車両の導入を提言していたが、当たり前に技術的に難しい。というか、通勤電車を経験したことがあれば、大人数の乗降が難しい2階建て車両がラッシュアワーの混雑緩和には全く役に立たないことなど最初から分かる。
あげくに従前より鉄道会社が取り組んでいる時差通勤に押っ取り刀で乗っかり、「時差ビズ」などと言ってはみたものの、アリバイ作りのパフォーマンスとしか考えられないレベルのしょぼさで、多少の改善への期待を胸に小池氏に投票した都民はまったく浮かばれない状況だ。
希望の党として掲げていた「花粉症ゼロ」についても、時節柄大いに期待したい取り組みだが、私が見逃しているだけなのだろうか?何一つ実効性ある取り組みは見えてこない。かつて石原都知事は、ディーゼル規制を行い、正直私は当時あまりピンと来なかったのだが、その後如実に東京の空がきれいになったことを実感している。
知恵と推進力ある為政者を恨めしく思い出してしまう他ないのだが、当の小池氏が都知事になってやったことと言えばその石原氏を百条委員会に呼び出すことぐらいだった。
総括すれば、選挙のために受けの良さそうな公約を、大した根拠や研究もなく打ち出したのではないかと批判されても致し方ない様相と言わざるをえない。
最悪の失政は、豊洲市場の移転延期
そして何と言っても最悪の失政は豊洲市場の移転延期の独断だ。
そもそも筋の悪い情報に乗っかり、豊洲市場移転の是非を今さらながら争点にして都知事戦を戦い、あげく「安全だが安心ではない。」という歴史的妄言で豊洲市場移転延期を強行した。結果、莫大な公費と時間が浪費された。何より環状2号線がオリンピック時には暫定開通とならざるをえなかったことで、世界に水素モビリティーをアピールするという重大な国益に関わるプレゼンテーションの場が大きく損なわれた。
あげく、小池都知事が当初移転延期の根拠とした地下水の汚染はまったく改善などしていないのである。もし小池知事が主張していた論理を一貫させるのならば、公費によって追加工事をした結果、汚染水が改善されない状況への執行責任は重大である。まして、「安全だが安心ではない」という判断基準を勝手に変更して、市場関係者や観光客を「自らが安心では無いと判断した環境」に晒すことなどもっての外ではないか。
そもそも今現在、豊洲市場が地下水汚染による支障もなく営業している状況を見れば、多くの専門家(あるいは常識)が当初より指摘していたように、新任の知事が対応すべきだったのは過去の過剰な水質基準の誤りを認め、引き直すという対応だけだったはずだ。要はもっぱら政略のために、公益を無視して振る舞っているだけなのである。
この場当たり性は、豊洲市場を開設した上での築地市場跡地の「食のテーマパークに」という誰が考えても不整合な政策にも、同じ性質が表れているわけである。
小池百合子氏の最終奥義、“素敵なスマイル”を封じることこそが必勝法
アゴラには多くの都議が参加されている。都政に破局的な被害を与えている破壊神にして最強のトリックスター小池知事に心して対抗して欲しいと願い、下記3項目お願いしたいと考える。
作戦1 小池知事が表明した政策の多くに不整合や噓がありツッコミどころ満載である。一点一点明らかにして欲しい、①7つの公約の不履行、もしくは実効性のなさ−−「取り組んでいますか?」「そんな取り組みで効果があるとお考えか?」と聞けば良い。②豊洲市場追加汚染水対策の結果責任、そもそも何も改善しなかった移転延期の判断の誤り③「築地を食のテーマパーク」にという場当たり発言の欺瞞性
作戦2 ただし、実効性のある政策立案能力が著しく低いことは露呈しているので、追い詰めるあまり、またまた場当たり的な思い付きを口にされないよう気をつけること。築地再開発は、もはや次の都知事と取り組むべきである。
作戦3 実はバカバカしいのだが、実はこれが一番大事なところだ。小池都知事最大の必殺技は、奥義「素敵なスマイル」攻撃だ。自分の非が明らかであればあるほど炸裂する。あの悪びれない余裕の微笑みを見て、何が起きていようと多くの有権者は、小池氏は何も悪くないという印象を持つ。それを小池氏は熟知しているのだ。
しどろもどろの桜田大臣や、顔が引きつる蓮舫氏などずっと人間としては素直なのだ。小池氏に対して質問者は「なぜ微笑んでいるのですか、冗談じゃない」と一喝し続けるべきである。
目を見ると石になるのはメデューサだっただろうか。ぜひ小池氏の妖術にかからぬよう心して臨んで欲しいと願ってやまない。
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秋月 涼佑(あきづき りょうすけ)
大手広告代理店で外資系クライアント等を担当。現在、独立してブランドプロデューサーとして活動中。