社会起業家の後進の育成始めます:SEA理事就任に寄せて

NPO業界で最悪なところ。
それは上の世代が下の世代をDisって足を引っ張るところです。

「本当のNPOはそうではない」「俺たちの頃はこうやってやった(だから今のお前たちは間違ってる)」

僕は23歳でNPO法人フローレンスを創業しましたが、事業を行って経済的にも自立するというスタンスが珍しかったせいか、随分当時の左翼NPOオヤジたちから攻撃されました。

今でも俺たちがNPO法を作ったぞ、という自負のある50代以上の左派クラスタからは揶揄と中傷の的です。
正直相手にしてないのですが、いつも思うんですよね。
だからNPO業界はダメなんだよ」って。

そして危機感を持つんですね。
このままだと、NPOはしぼんでいく、と。

今の20代は「社会課題を解決したい」と言って、スタートアップ(ベンチャー企業)に行きます。
10年前、「社会課題を社会事業で解決しようぜ!」と言っていたのは、僕たちNPOの亜流、ソーシャルビジネスクラスタでした。

あの時ビジネス関係者に僕らの思いを伝えた時には、「何を綺麗事を…」という雰囲気だったのを、今でも覚えています。

しかし今や、(少なくともスタートアップカルチャーでは)「社会課題の解決」は当然となり、我々NPO法人の専売特許では無くなりました。
ある意味我々が夢見ていた「みんなで社会課題の解決を競う」世界観が実現したのです。

わざわざ、足を引っ張る老人たちがウザいこの業界に、若い世代が入ることの意味は、消えつつあります。

スタートアップにはあって、NPOには無いエコシステム

NPO業界のおっさんたちが嬉々として若い世代をDisって足引っ張っている間に、スタートアップでは、世代を超えた応援の仕組みが生まれています。

例えば起業家がIPOした後に大きな資金を得ます。その後エンジェルや投資家となって、若い世代に資金とノウハウを提供します。門下生から成功者が出ると、出資の経済的見返りがあって、またそれを原資に若い世代に投資が可能となります。

このように世代を超えた支援のエコシステムが生まれていっています。当然、後進育成の利他的な動機だけで無く、経済的な動機も混じっていることは確かですが、大切なのは結果的にノウハウと資本の世代間継承が行われ、エコシステムが創出されていることです。

NPO/社会事業の界隈でそれがあるか。

ない。

おっさん達のメンタリティが救いようが無いという要素に加えて、エグジットという発明の恩恵に預かれない非営利クラスタは、構造的にディスアドバンテージを抱えています。

非営利では下の世代は育てられないか

では非営利団体や非営利業界では、下の世代を育てられないか。
そうでもないと思うのです。

例えば松下村塾は伊藤博文や高杉晋作等、明治維新の志士を輩出していますが、経済的な動機付けによって行われたわけではありません。
現代においても、研究者の世界では、◎◎先生の研究室に入ってそこで薫陶を受け、一人前の研究者に育っていく、ということは普通です。
医師や専門家も学会で学び、成長していっているでしょう。

ならば、いわんや社会起業家をや。

Social Entrepreneurs Association (SEA)への参加

一般社団法人ソーシャルアントレプレナーズアソシエーション(Social Entrepreneurs  Association 通称SEA)https://www.social-ea.org/  は、尊敬する社会起業家の先輩、元ピースマインド・イープ社長の荻原国啓さん、ゼネラルパートナーズ社長の進藤均さんらが立ち上げた、社会起業家/ソーシャルスタートアップへの伴走支援団体です。

SEAが良いな、と思ったのは、社会起業家が社会起業家を支援する、というコンセプトです。

僕がスタートアップの際に、いわゆるNPO中間支援系の人や、純粋ビジネス系のコンサルさんにアドバイスしてもらうことがあったのですが、全然ピントがずれてることが多かったし、なぜか上から目線のアドバイスが多かったんですよね。

残念ながら、「起業してなきゃ、分からない」部分というのは起業についてはあるわけです。社会事業の場合、純ビジネスのロジックとも、純ボランタリーのロジックとも違うから、なかなか納得できる支援が無いのが現状です。

そんな時に、荻原さんはいつも「分かるよ、その痛み、すげぇ分かる」みたいな感じで、心情的に寄り添ってくれました。そして実際に、僕の3倍くらいの修羅場の話をしてくれるわけです。

そこで思うんですよね。「すげえ。この人が、これを乗り越えてるんだったら、俺もこれこれこうすれば、やれるはず」と。

そういう、血なまぐさい、でも大切な学びって、実践者と実践者の対話の中でしか生み出されないわけで。

そんな荻原さん達とだったら、これからの世代を育てていけるんじゃないか。そう思ったのです。

これから

23歳で社会起業した僕ももう39で、今年40になります。これからは、下の世代を育てていきたいと思います。

僕の世代から、下の世代Disってる非営利オヤジはダサいっていう文化に変えていきたい。そしてソーシャルセクターでは、下の世代にマウントとらずに、育成していくのが当たり前、っていう文化を創っていきたいと思います。

そんなわけで、SEA理事としても、頑張ります。

僕(や他のシニア社会起業家たち)の支援を受けたい、と思ったソーシャルスタートアップの皆さんは、ぜひSEAまでご連絡ください。

共に新しい社会と文化を生み出していきましょう。


編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2019年3月9日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。