ピエール瀧さんの報道が連日にぎわい、依存症の当事者・家族として、またしても胃が痛む日々が続いており、こうしてやっとコツコツと啓発してきたことが、吹っ飛んでしまうんだなぁと、がっかりしております。
それにしても最近は薬物事件が発覚すると、薬物依存症者の回復や再発防止、そして同じ問題に苦しむ当事者や家族に配慮して発言してくれる著名人と、そんなことはお構いなしに、自信の道徳的優位性を主張するかのごとく叩きのめす有名人の2種類にくっきり分かれることが良く分かってきました。
薬物問題でいつも本質を理解し思いやりのある発言をしてくれるのは、なんといってもダントツが爆笑問題の太田光さんですね。
爆問・太田、ピエール瀧容疑者に「ルール違反」も持論「芸術は悪い面と良い面を引き離せない」(スポニチアネックス)
あと伊集院光さんも今回すごくよかったですね。
奇しくも同じ名前ですけど。
他には、北野武さんや東国原さん、水道橋博士ら「たけし軍団」のみなさんは総じて思いやりある発言をしていただいてます。
逆に薬物問題を理解しようとしない、常に独自の道徳論で叩いてくるタレントの御三家はもう決まってます。
・テリー伊藤さん
・松本人志さん
・尾木ママ
ですね。
「薬物問題を起こした芸能人を叩くこと=我々依存症者とその家族や子供達及び支援者・応援者を叩くこと」
だと理解された上で、なさっていることなんですよね、この方たち。
そんな奴らは「叩いてもいい」と思っているんですよね…残念ながら。
だって私たち度々テレビ局に投書もしてますし、申し入れも行ってきましたからね。
声が届いていない訳がないです。本当に残念です。
今回のピエール瀧さんの件に関する意見を見てみましょう。
もうね論拠が破たんしているんですよ。
こうなってくると何でもいい、とにかく薬物問題は叩きたいんだな…としか思えません。
まずテリー伊藤さん。この方の独自理論はもういつだってダントツ1位です。
テリー伊藤 逮捕者の作品お蔵入りに「“この時にやってたんだ”ってなる」(スポニチアネックス)
「自粛しすぎだっていう人もいるかもしれないけど、例えば時代劇だと、見てる方が“この時にやってたんだ”ってなる」
「自分たちがつくったものがバイアスかかって見ちゃう。自粛をちゃんとすべきだと思う」
いやいやあなたがそうであったとしても、この世の全員があなたと同じ感情じゃないですよね?
10年後に作品を見て、いちいち執念深く役者の薬物問題気にします?
そう思う人は観なきゃいいだけじゃないですか?
私なんか、わざわざ昨日Amazonでピエール瀧さんが出演されている「凶悪」という映画観ましたけど、あまりに面白い映画だったので、すぐに引き込まれ薬物問題なんか1ミリも気になりませんでした。第一、そんなこと気にしてたら、ハリウッド映画なんか観るものなくなっちゃいますよ?
それとこの発言の前日でしょうか?こんな記事が載っていて、
中華料理人、金萬福氏がテリー伊藤にクレーム ガソリンで「火を吹かされた」(サンスポ)
「ガソリンを口に入れて火を吹かせる」って、今なら大問題になるレベル。
下手したら死にますよね。シラフでこんなこと強要できる人格の方が、よほど恐ろしい…と私なんかは思っちゃいますけどね。
そして二人目は、松本人志さん。
この方はワイドナショーが始まってから、政治的・社会的発言をするようになって、しかもそれがあまりお詳しくもないのに、適当に言っちゃうから、その問題に関わってきた人たちは、困っているだろうなぁと思っておりますが、少なくとも薬物問題・依存症問題に関する発言は大迷惑してます。
松本人志“飲酒して番組やってるお前もドーピングだろ”という声に反応(スポニチアネックス)
これ私のこと言ってるのかしら?と思っちゃいましたが、
「もしかしたら、薬物という作用を使って、素晴らしい演技をしていたと思ったら、それはある種ドーピングなんですよ。ドーピング作品になってしまうので僕は監督しては公開して欲しくないですけどね」
という記事を見つけたので、私がTwitterで、
「そんなこと言ったら、アルコール飲みながらやってるあなたの番組は?脳に一番影響ある薬物はアルコールですけど?」
って流したんですよね。他にも同じようなこと言ってる人が沢山いるかもしれませんが。
だってこれそうですよね。脳が委縮するほど身体的に一番影響が多い薬物ってアルコールですよ。
それに合法・非合法でわけるならドーピングって言葉使い間違ってますよね。
ドーピングは別に違法薬物使った場合に限ってる訳じゃないですからね。
あとコカインが決まってる時に、良い演技ができる…
なんていかにも素人意見ですよね。
使ってない方がいい演技はできるし、そういう誤解や偏見がむしろ薬物への興味をあおっているってどうして気がつかないんでしょうか?こういういい加減な発言は、予防教育の意味でも本当に迷惑です。
いいですか、青少年の皆さん「薬物使った方が良い結果が出る」なんて大きな誤解ですからね。
影響力の大きい方ではありますけど、薬物問題については素人さんですから本気にしないで下さいね。
そして、最後の一人は尾木ママ。
でた~!本当に教育者なの?と思うほど、
青少年の薬物問題に無知と無理解ぶりを発揮している、
この方はまたしても、なんじゃこりゃ?理論を発信しています。
尾木ママ「悪影響しかありません!」ピエール瀧作品の放送に反対(東スポ)
薬物まみれのニセモノ?
あなたは自分の教え子に薬物問題を抱えた子を見たことがないんですか?
だとしたら教師としてそっちの方がニセモノですね。
生徒から本当に心を開いて、誰にも言えない悩みを打ち明けられるような、信頼できる先生ではないのでしょうね。
こんな薄っぺらい道徳概念を良く振りかざせますね?
このデータをご覧頂ければお分かり頂ける通り、少年の薬物事犯はこれだけいます。
これ覚せい剤と大麻だけですからね。
他にも処方薬依存や市販薬依存、カフェイン依存など、今の子供達は多くの悩みを抱え苦しんでいます。
そういう子供達もニセモノなんですか?そう言われた子供達の気持ちを考えたことありますか?
あなたの学校にだっているでしょうよ。
その子たちの将来まで抹殺して嬉しいですか?
教え子の回復を願わないんですか?
冗談じゃない。私の仲間達には沢山の薬物依存で苦しんでる人も、回復している人も、その家族も子供達もいますけどね、
みんな必死に生きなおそうとしてるんですよ。ニセモノなんかじゃない、本物の人生を生きているんですよ。
それから
【薬物まみれのニセもの】は、子どもたちの生き方教育にとっては悪影響しかありません!
って、世界に名だたる様々な文学作品すら読んだ事ないんですか?
私は、卒論に太宰を選んだくらい、太宰ファンですけど、「人間失格」は薬物まみれのニセモノなんですかね?
あの小説は今も昔も語り継がれてきた青春小説の金字塔ですよ。
太宰が薬物や女性に依存しながら、人生を苦しみ抜く姿が自分たちの苦悩とも重なって、共感を呼び、今も昔も、生きずらさを抱えた若者たちの心を打っているんですよね?そういう若者たちの苦悩がわからずに、よく教育者を名乗れますね。道徳概念だけでは子供達はついてきたりしないですよ。
自分たちを正義だと思って、「厳しく取り締まる!」なんて言いながら、実は薬物問題の当事者が社会的に抹殺されても構わないと思っているのでしょうか。まさか、そんなことはないとは思いますが、良心が一片でも残っているのであれば、是非、発言を自主回収し今後は自粛することを望みます。
田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト