20日のFOMCにおいて、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25~2.50%に据え置くことを全会一致で決定した。FOMCメンバーの政策金利見通し分布(ドット・チャート)では、年内の利上げ回数はゼロとなり、年内の利上げ観測が後退した。
パウエル議長は記者会見で、「資産縮小は5月から減速し、9月には完全に停止する」と発言した。具体的には5月から縮小ペースを減速し、保有国債の毎月の縮小ぺースは最大300億ドルから最大150億ドルに半減させる。
これを受けて20日の米債は買い進まれ、2.5%台に低下し、21日には一時2.5%割れとなった。22日には3月の米製造業PMI速報値が予想を下回ったことや、ドイツの10年債利回りがマイナスとなったことなどから、米10年債利回りは2.41%まで低下した。これに対して、短期の金利の代表ともいえる3か月物の米財務省証券(TB)の利回りは、FRBの政策金利に影響を受けやすいことで2.45%近辺と高止まりしていたことで、それを10年債利回りが下回った。つまり2007年以降初めてとなる米長短金利の逆転が生じた。
長期金利が短期金利の水準を下回ることは「逆イールド」とも呼ばれ、過去に逆イールドが生じた際は景気減速期が多かった経験もあってか、22日の米国株式市場はこれも嫌気されて、ダウ平均は460ドル安と大きく下落した。
英国を除く欧州連合(EU)首脳27カ国は21日、英国のEU離脱の延期を巡り協議した。英下院が3月最終週に予定する採決で、メイ政権とEUが合意した離脱案を可決できなかった場合、4月12日まで離脱を延期したうえで、英国に長期延長に応じるか「合意なき離脱」を選ぶかを決断するよう求めた(22日付日経新聞電子版)。
EU首脳らは離脱日が目前に迫っても、離脱方針を巡って分断する英政治の混迷に態度を硬化させているとされる。フランスのマクロン大統領は、英国議会が離脱案を否決すれば、延期を認めることはできず、「合意なき離脱になる」との認識を示した。
英国の合意なき離脱も懸念されて、欧州の国債も総じて買い進まれ、ドイツの10年債利回りはゼロ%近くに低下していた。さらに22日に発表されたドイツの3月の製造業PMI速報値が好不況の分かれ目となる50を3か月連続で下回ったこともあって、22日のドイツの10年債利回りは2016年10月以来となるマイナスとなった。
22日に発表された日本の2月の消費者物価指数は、日銀の物価目標となっている生鮮食品を除く総合が前年同月比プラス0.7%と1月のプラス0.8%から上昇幅が縮小された。
22日の日本の債券市場では、10年債利回りがマイナス0.060%まで低下し、2016年11月9日以来の水準で取引を開始した。その後マイナス0.075%まで低下した。ちなみに2016年6月に日本の10年債利回りはマイナス0.2%台まで低下していた。
日銀の物価目標達成は見通せず、欧米の長期金利は低下その要因ともなっているFRBの正常化路線の停止見通しとその背景となっている欧米を含めた世界的な景気減速への懸念、そして英国のブレグジットを巡る懸念の強まり、加えて米中の通商交渉の行方も見通せず、リスク回避の動きも相まって、日米欧の長期金利は低下したといえる。
今後は事態に大きな改善がみられるなり、世界的な景気減速観測が後退するといったことがなければ、日本の10年債利回りはひとまずマイナス0.1%あたりを伺うことが予想される。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年3月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。