世の中は、競争相手(ライバル)を潰すために、悪質な流言飛語(フェイクニュース)を流して群衆心理を操作することが多い。ロシアによる2016年、米大統領選挙介入疑惑もその類だったのだろうか。
バー米司法長官は24日、ミュラ特別検察官の報告書に基づき、トランプ陣営とロシア政府との共謀・連携について「証拠は見つからなかった」と結論付けた。民主党はまだ承服していないが、大きな足かせから解放されたトランプ氏は今後、所信通り、北朝鮮核問題の解決を目指して手腕を発揮するものと期待される。
米空軍は3月中旬、核搭載可能なB52戦略爆撃機編隊を欧州に出撃させ、ロシア国境に近いノルウェー海、バルト海、エストニア、黒海、ギリシャなどを含む空域を飛行させた。また、米領グアムのB52はロシアのカムチャッカ半島東方の北部空域を飛行したという。ロシアはこれらの威嚇飛行に対応出来ずパニック状態だったという。
昨年4月14日、米軍と英・仏軍がシリア化学兵器基地を空爆した時、現地のロシア駐屯軍はS-400対空ミサイルで反撃出来なかった。米軍は最近、韓半島上空に空の指揮所ともいわれるE-3早期警戒管制機や高性能偵察機(U2、GlobalHawk、RC12)と特殊戦用輸送機などの飛行を急増させている。
プランA(対北外交交渉)が決裂し、プランB(対北軍事行動)実行の兆候ではないかとも推測されている。さらに、米、英、仏が戦略資産(兵器)を韓半島に続々集結させているが、これらは本気の軍事行動ではなく、軍事圧力を強める情報心理戦の一環である可能性が高いと考える。経済制裁に加えて軍事圧力を強めているわけだ。
これらの圧力がますます強化されれば金正恩体制は限界に至る。その先に待ち構えるのは金正恩朝鮮労働党委員長が降伏するか、亡命するか、斬首されるかの3つだ。
米朝会談決裂以降、金正恩体制は核廃棄に反対する軍部の圧力と米国主導による国際社会の制裁圧力の板挟みでジレンマに直面している。それに加えて、最大の後ろ盾である中国は米国との貿易戦争で深刻な打撃を受けており、数少ない支援勢力であるロシアも経済に余力がない上に、米戦略爆撃機の威嚇飛行に対応出来なかった。
3代にわたる長期独裁体制は、存亡の危機に直面している。遠い強大国と同盟して隣の強大国を牽制する「遠交近攻」と「勢力均衡」は平和・安保の鉄則であることを韓国の文在寅政権は自覚すべきだ。
(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省専門委員)
※本稿は『世界日報』(3月27日)に掲載したコラムを筆者が加筆したものです。
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