日本で投資用不動産が売れないようです。昨年の書類改ざん、不正融資で悪役に回ったアパート開発業者やレオパレスの施工不良の問題も尾を引いているのでしょう。日本の性格というか、悪いとなると業者も銀行も一気に自己ルールを厳しくし、今までと打って変わったようなスタンスをとるため、日本で投資用不動産市場は壊滅的ダメージを受けるかもしれません。
不動産は入居者があって商売になります。では人口減が叫ばれる日本で一体だれが入居するのかという疑問は残ります。その答えは人は転勤や就学で移動しますので人口が増える地域には需要が生まれること、また、高度成長期に建てられた木造の築4-50年経ったアパートがそろそろ解体せざるを得ない時期に来ているものもあり、住み替え需要は場所を探せば確かに存在するということかと思います。
しかし、この動向は読みにくいものです。例えば大学の地方移転で一時期アパートが潤ったとされましたがその大学が都心回帰でキャンパスがなくなり、残ったのは空き家だらけのアパートだけ、という笑えない話もよく耳にします。同様に企業の工場新設に伴う住宅需要もありますが、最近は工場も機械化が進み、大挙して人が動いてくる時代ではありません。
個人的にもう一つ期待外れになったと思う原因がAirbnbではないでしょうか?数年前、中古マンションをローンをして購入、エアビーで副収入を得ることが流行った時期がありました。国や地方自治体のルールができる前です。ルールがないということは人のうわさ話に尾ひれがついて「稼げるみたいだ」が「すごく儲かるみたいだ」になり、「お前もやった方がいいよ」という展開だったと思います。ところがご承知の通り、その後、Airbnbはあまりにも厳しい制約が課せられてしまいました。
地方銀行が不動産融資を急激に絞り込んだのも影響しています。スルガ銀行問題はただでさえ収益がなくて四苦八苦する地方銀行の数少ない利益の源泉を締めてしまいました。例えば頭金を2割要求するといった厳格化はチョイ乗りの投資家を市場から追放したともいえるでしょう。
では不動産事業をやっているお前はどう思うのか、でありますが、「よかった」ともろ手を挙げて喜んでおります。質が悪いものを大量供給することで不動産市場全体を沈下させるリスクがありました。
例えばシェアハウスでもこんなのは部屋ではないだろう、と思わせるような物件もずいぶんあり、一時は家賃月2万円とか、場合によってはゼロ円というのも出回りました。ゼロ円物件は管理費だけで回すとか、一定期間後は賃料をとるといったもので、私からすると「もう止めてくれ」と思っていました。極端に安い物件はテナントの質が悪く、使い勝手も荒く、ヒッピーハウスのようになってしまい悪循環に陥るケースは多いものです。
ある意味、「シェアハウスは貧乏人が住むところ」というイメージを課してしまい、本来あるべき新しい居住スタイルの選択肢という流れに邪魔したとも言えます。
投資用物件に熱い視線を送っていたのが小金持ち層と副収入を得たい「目に¥マーク」がついているような人たちでしょうか?不動産投資セミナーは今でも盛況だと聞きます。ただ、今後の趨勢としては不動産はREITを含め大規模資金の大規模開発が主流となってくるとみており、小型物件は徐々に不利になってくると考えています。理由は管理能力を含めたサービスクオリティです。賃貸に住む若者もより格好いい物件、時代の流れに即したライフスタイル、アメニティが豊富な物件を当たり前と思うようになるはずで、コンベンショナルな(一般的な)アパートは確実に時代の潮流に乗り遅れるとみています。
不動産に投資して不動産屋に管理を任せ、利回りが〇%などという宣伝そのものが前世のスタイルだと私は思います。そんなセミナーには行く価値はないでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年3月27日の記事より転載させていただきました。