ECBのドラギ総裁はフランクフルトで開かれた会議において、必要ならば利上げをさらに遅らせる用意があると述べた。ECBは3月の理事会で、想定する利上げ時期を今年の夏以降から来年に先延ばししている。
今回の発言はECBは利上げをいったん封印することによって、現在の緩和効果を維持させることを狙ったものとみられる。ただし、さらなる緩和を示唆したわけではない。
さらにドラギ総裁は、「必要ならばマイナス金利の副作用を緩和しつつ、それが経済にもたらす好ましい影響を維持できる措置を検討する必要がある。とはいっても、銀行の低い収益力は、マイナス金利の避けられない代償ではない」とも語った(ブルームバーク)。
日本でも2016年に導入された日銀のマイナス金利政策に対して。金融業界から批判的な意見が出てきた。その結果、長期金利とのスプレッドをつけることも意識されての長短金利操作付き量的・質的緩和というかたちで調整を行っていた。
ドラギ総裁は銀行の低い収益力は、マイナス金利の避けられない代償ではないと言うが、マイナス金利が銀行の収益力を削いでいることは確かであろう。ただし、ドラギ総裁はマイナス金利の副作用に対する具体的な軽減策を示したわけではない。手っ取り早いのはマイナス金利をやめることだが、日銀同様にそれはいろいろあって無理ということなのであろうか。
ドラギ総裁の発言を受けて、ドイツなどのユーロ圏の国債は買い進まれた。ここで注意すべきは、FRBもそうであるが、あくまで正常化に向けた動きにブレーキを掛けただけであるという点である。正常化ではなく異常化に向けていまだに突っ走っている日銀に、さらにアクセルを吹かせるべきではという意見は、どうなのであろうか。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年3月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。