4月1日の新元号発表に先駆け、朝日新聞デジタルが31日朝、『幻の「平成」スクープ 発表直前、毎日が入手』という記事をYahoo!ニュースに配信したが、当時から30年が経過し、インターネット時代になった今回、読者の反応は必ずしも好意的とは言えなくなっているようだ。
記事は、かつての平成の元号発表前に毎日新聞記者が政府関係者から「平成」のメモを極秘入手していた秘話を紹介したものだ。毎日関係者の証言で、特報が見送られた経緯を生々しく綴っている。
もし毎日が当時そのまま「平成」を報道し、新元号がその通りになっていれば、新聞業界の「歴史的スクープ」になったことに疑いはないが、この朝日記事の配信先であるヤフーニュースのコメント欄(ヤフコメ)には記事配信から4時間ほどで1400を超える書き込みが殺到。「報道しなくてよかった」などの否定的な書き込みが相次いだ。
「共感」を最も集めたコメント(14時時点)を見ると、
新しい元号を少しばかり人より早く知ることを人々は求めていたのでしょうか?
時間が来れば分かることなのに、スクープだと大騒ぎするのはマスコミの自己満足ではないかと思う。
といった特ダネとしての社会価値に疑義を呈している(太字は編集部)。
他にも
幻のスクープしてたら、代替案の元号に差し替えられて平成は日の目を見なかったかも。スクープしなくて良かったと想う。
もしやっていたら。マスメディアの内輪としてはともかく、世間一般の毎日新聞社に対する好感度は下がったかと。
といった同様の意見が多くの「いいね」を集めていた。
また、記事中、当時の現職閣僚が毎日記者に情報を漏らしたかのような記述もあったことから、
情報を漏らした関係者を糾弾することこそメディアの仕事と思うんだが。
実際に漏らした政府関係者が居るってことが問題だな
新聞で良く密室で決められているって叩くけど
結局、自分たちに情報が洩れてこない事への
不満なんじゃないの?
などと、報道側の姿勢に厳しい指摘が相次いだ。
こうしたネット民の反応とは全く対照的なのは、朝日がこの記事を配信した「思惑」だ。記事では、当時の朝日記者で、元号担当だった植木千可子氏が次のように述べるかたちで締めくくっている。
「国の『秘』や報道の『タブー』をできるだけ少なくすることが、国民の知る権利の拡大につながる。元号を取材する意義は、約30年前も今も同じではないでしょうか」
国民の知る権利を強調する報道機関の姿勢は、最近の東京新聞・望月衣塑子記者の問題でも見られたが、元日経新聞編集委員のジャーナリスト、牧野洋氏は長年、こうした発表ものを特ダネとして事前に報道することをマスコミ側の「エゴスクープ 」だと厳しく批判してきている。牧野氏は昨年4月、財務省のセクハラ問題があった時にも、その背景の構造的な問題として、記者クラブメディアが取材対象に取り入ってリークを促す「アクセスジャーナリズム」の問題を指摘。本物のスクープとの違いをこう喝破している(太字は編集部)。
本物のスクープとは、「放っておいてもいずれ明らかになるニュース」ではなく「記者の努力がなければ永遠に埋もれしまうニュース」である。記者が独自にニュースを発掘する調査報道と同義と考えていい。直近では、朝日新聞が放った「森友文書改ざん」のスクープが代表例だ。
出典:財務次官にセクハラを許すマスコミの事情 自己満スクープが記者を疲弊させる:PRESIDENT Online – プレジデント
アゴラ編集長の新田哲史も同様の問題意識でツイートしたところ、すぐに3ケタの反響があった。
厳粛に取り扱うべき新元号を新聞記者にペラペラ喋る閣僚、新聞社がわざわざスクープしなくても明らかになることに血道をあげ、そしていまそれを幻のとか言って持ち上げる同業他社。昭和チックなことをやってる限り、新聞社に明日はないと思う。 https://t.co/xPuFwqeeOT
— 新田哲史 (@TetsuNitta) 2019年3月31日