日本でも期間50年の債券が発行されるとか

日本で償還までの期間が最も長い50年という社債を、大手不動産会社、三菱地所が発行することになったとNHKや日経新聞が報じた。

国債は期間40年のものが発行されているが、これまでは社債を含めて40年を超える期間の通常の債券は発行されておらず、今回の三菱地所の社債が最も償還までの期間が長い債券となる。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

少し古いデータとなってしまうが、海外では50年を超す期間の債券は国債を主体に発行されていた。

たとえばフランスでは、オランダにおける年金基金の制度改正など年金に関する制度改革などにともなって、超長期債のニーズ増大に応えることを目的とし、2005年2月に50年固定利付債をシンジケート方式にて発行した。

50年以上の国債は、他にポーランドで50年債、スイスでも50年債、中国では100年債が発行されていた。

英国では「利払負担の軽減」を目的として、2005年5月に50年固定利付債を入札方式にて発行している。ちなみに英国では永久債と呼ばれる償還期限を定めない方式の債券を発行していたが、それらは統合されて2015年に償還されている。

米国では50年債の社債が発行された事例もあるとか。

その米国では長短金利が逆転したことが話題となったが、通常の債券は期間が長いほど利回りは高くなる。それだけ保有期間のリスクがあるためである。日本でも10年国債利回りはマイナスだが、40年債の利回りは0.5%台となっている。

社債の利回りは最も安全性の高い国債の利回りに上乗せされて決定するが、そもそも50年の国債がない。このためイールドカーブを推計で延長するようなかたちで金利を決定するとみられるが、今回の三菱地所の50年債の利回りは、格付けも高いことも加味された上で、1%台になる見込みのようである。

日銀の大胆な金融緩和やそれによる長期金利コントロール、さらには物価が「低位で安定」していることもあり、期間の長めの国債利回りも歴史的な低位にある。このため、発行する企業としては、金利負担を抑えて、長めの資金を調達することができる。債券を購入する側からすれば、期間10年の国債までマイナスの利回りとなっているなか、少しでも高い利回りを求めており、そのニーズに応えるものとなる。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年4月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。