ちょうど一年前、欧州委員会は政策文書『デジタル単一市場におけるヘルスケアのデジタル化:市民の力を高め、より健康な社会を築く(enabling the digital transformation of health and care in the Digital Single Market; empowering citizens and building a healthier society)』を公表した。
ヘルスケア分野のデジタルソリューションは、増加の一途をたどる同分野への公的支出に歯止めをかけ、何百万もの市民の幸福度を高め、ヘルスケアが患者に提供される方法を根本的に変える。これが政策文書の基本認識である。
ヘルスケアの過程で取得されるデータは患者一人ひとりに最適化された個別化医療や、より適切な医療介入に利用され、そして何よりもより健康な社会の構築に活用されるべきである。しかしヘルスケアデータには相互運用性が不足し、広範な使用を妨げている。まずは、これを打破する必要がある。
欧州委員会が取る三つの行動は次のとおりである。
- 国境を越えたヘルスケアデータへの市民の安全なアクセスと共有
- より良いデータセットの、研究開発・疾病予防および個別化医療での利用
- デジタルツールを市民の力の増強と患者本人を中心にしたヘルスケアのために提供
これらを進めるために、データの品質・信頼性に関する欧州統一標準の策定、サイバーセキュリティ、電子カルテの標準化、オープン交換フォーマットによる相互運用性の向上などの力を入れる必要がある。
欧州委員会はデジタルヘルス分野について加盟国への資金援助と政策協力を促進する行動を起こすという。また、ホライズン2020プログラム(Horizon 2020 Program)を通じて関連する研究開発を加速する計画である。
欧州委員会の政策文書は次のようにまとめられている。
革新的なデジタルソリューションは、人々の健康と生活の質を高め、ヘルスケアサービスを組織化して効率的に提供する。そのためには、デジタルシステムは人々と医療のニーズを満たすよう思慮深く設計されなければならず、また、それぞれの地域の状況に合わせて実装されるべきである。デジタル技術はヘルスケアの要素として不可欠であり、社会保健制度のより広い目的にも向けられる。
この文書をきっかけに欧州はデジタルヘルスに向かって動き出した。わが国はどのように進むべきか。関連するシンポジウム「ヘルスケア分野のICT活用が可能にするQOL・QOD向上」を開催するのでご参加ください。