最近、石野卓球さんのツイートに対して、ワイドショーが批判しまくっていて、特に、DOMMUNEの件で炎上した、バイキングとバトルになっているのですが、それをまた「サンデー・ジャポン」とか「アッコにおまかせ」などの他番組が取り上げるので、ますますこの問題ヒートアップしています。
この問題に関しては、私も既にアゴラさんで記事に書かせて頂いております。
お陰さまで石野卓球さんご自身がTwitterで取り上げて下さったことから、爆発的に多くの方々に読んで頂くことができましたが、ここでも触れている通り、卓球さんが謝罪などをすることは、依存症の回復プログラム的にみても、絶対やってはいけないことなのです。
依存症問題を周囲のせいにせず、自分の問題としてきっちりとカタをつけることが大切で、他人がそこに踏み込んだり、踏み込まれたりしてはいけないのです。
必要なのは「タフラブ」と呼ばれる自立した愛の形であって、大の大人のやったことに対して、誰かが保護者や庇護者のように振舞わないようにしなくてはなりません。
特に家族は巻き込まれ、タフラブが実践できずに、「共依存」となってしまい事態が悪化してしまいます。
この「タフラブ」の概念を、アニメと曲で解説してますのでご覧下さい。
卓球さんは全く意識せずに、このタフラブを実践出来ちゃう希有な存在なのです。
でも日本は浪花節が大好きな国なので、この「タフラブ」の概念が全く伝わってらず、連帯責任が強要されたりするんですね。しかもそれを美しいものとか、常識だと解釈している人までいます。
で、この卓球さんと激しくバトルを繰り返しているバイキングなんですが、卓球さんは先日も書いたように、相方のピエール瀧さんが逮捕されようとも、ひら~り、ひら~りと、今までと全く変わらない面白ツイートを連発しているんですね。
それに対してバイキングの坂上忍さんは、「こういうツイートってプラスになるのか?」と、真面目にやれ!という上から目線でのコメント。
さらに、これを取り上げたサンジャポの西川史子さんは、「このツイート見て良いと思う人誰もいない」という、自分の目線が世界の全て!みたいな女王様的過度な一般化。この人多分医者になるのに精神科の授業寝てたんでしょうね。
いつも感心するくらい、依存症のことご存知ありません。
まぁ、でもこのお二人はまだ良いです。
そもそも世論や世界の流れなど見てもいないと思われますし、勉強する気もなさそうで、こちらも期待もしていません。
残念だったのは、依存症に理解があると思われていたデーブ・スぺクターさん。
卓球さんに対して「一言でいいから、日本に帰ったら叱ってやるなどのコメントを…」と発言していて、これには心底がっかりというか、この人も発言力堕ちたなぁ~、テレビと大衆におもねっちゃってどうした!?と思いましたね。
叱って回復できるなら、誰も苦労しないし、我々依存症者の家族は、「叱るは最悪の対処の仕方」と習うんですよね。
依存症者の介入で必要なのは理解と共感。そんなの今どき「うつ病に頑張れは禁句」と同じくらい知れ渡っているかと思いました。
そしてもうひと方、本当にがっくりきたのは東国原さん。
「薬物問題は病気と捉え治療が必要」とおっしゃってくれることが多く、仲間からも結構人気もあり、私も期待していたのですが、ツイッターで、個人の意見として
③ 「自分が近くに居て、ピエール瀧氏の反社会的行為に気付いてやれなかった。防止する事が出来なかった事への反省の弁」また「今後、ピエール瀧氏の更生や社会復帰を支援する」等のコメントがあって然るべきではないかという立場である。これは、飽くまで、
— 東国原英夫 (@higashi_kokuba) 2019年4月6日
とおっしゃっているんです。これはもう最もNGワード。危険信号が点滅しまくりです。
いいですか、そんなこと気付いてなんとかできるくらいなら、世の中の家族全員がなんとかしています。
家族でも全く気がつかないのが依存症です。
ギャンブルなんて本当に気がつかないですが、薬物も自分がやったことがある人でない限り全くわからないです。
国の薬物依存症治療の第一人者である松本俊彦先生ですら、「使ってきてても話しているだけだと分からないことがある」とおっしゃっていて、私も、もう何人何十人と薬物依存症人を回復施設などに繋げましたが、「今、使っているかいないか?」なんてわからないです。ましてや仕事仲間である、卓球さんがわからなかったとしても仕方がないです。
これはメンタルヘルス全体の問題で、「家族がなんとかするもの」「周囲の人の責任」「家族の責任」なんて思ってしまっているから、問題が長期化し事態が悪化するんですね。
東国原さんが、どうかこの発言を
「どうやらそれは依存症の現場ではダメなようだったので発言を取り消します」
と真摯に対応して下さることを望んでいます。薬物問題や依存症の問題は、周囲の人のせいではありません。
ここだけはハッキリさせて下さい。
これらの騒動、何がまずいってワイドショーを見ている年齢層が、このメンタルヘルスの問題で、事態が硬直化重篤化している層にびったりあてはまるからです。今どきワイドショーなんて、ヒマな年配者しか見ませんが、その年配者の間で、問題が起きているんですね。
つい先日も、中高年のひきこもりの問題が報道されましたが、40歳から61歳までのひきこもりが61.3万人もいると報道され、若年層のひきこもりより上回っていることに社会に衝撃を与えました。
中高年ひきこもり61万人 初の全国調査、若年層上回る(朝日新聞デジタル)
つまりですよ、そのひきこもりの人達を、60~90代位までの親達が支えている訳ですよ。
年金暮らしのワイドショー世代な訳です。こういう年代の人達にタフラブを教えることが、とっても大切なんです。
伝えるべきは謝罪ではなく「家族のせいじゃないんだから、勇気をもって支援を求めて!」
ってこのメッセージなんですね。
ひきこもりの中には、依存症問題を抱えた人達は多数いますし、時にはそれが家庭内殺人にまで及んでいます。
そういったケースのご家族みんな「自分の責任だ」と思っているのです。
ワイドショーの視聴者世代の中には、悲惨な家庭内の問題を抱えた人達がいます。
その人達に有益な情報を与えることはもとより、少なくとも間違った情報、有害な情報は流すべきではないと自覚をもって頂きたいです。知らないことはうかつに発言しないで欲しいのです。
本人にとって代わって周囲の人が謝罪することは、依存症者にとって、最も「有害」な情報です。
以後、視聴者の幸せを願う番組なら、こういった謝罪要求報道をきっぱりとおやめ下さい。
「面白けりゃなんでもいい!」という番組には、今後も私は発信を続けて参ります。
田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト