誤記があったと選挙公報を配り直す愚かしさ

神奈川県選挙管理委員会は県議会議員選挙の選挙公報に誤記があったと再配布した。選管のサイトに事情が詳しく掲載されている。「立候補者から提出された修正後の原稿と修正前の原稿を取り違えて印刷し」「3日朝刊の新聞折り込みにより既に配送されて」いたので、「4月5日までに、藤沢市内の有権者に新聞折り込みの方法により再送」したそうだ。

誤記があったのは藤沢市選挙区の松長やすゆき候補である。「自衛官募集相談員」と書くべきところを「自衛官募集相談役」、「藤沢商工会議所 青年部 監事」を「藤沢商工会議所 青年部 顧問」としていたという。

松長候補選挙公報の該当部分

相談員より相談役、監事よりも顧問、つまり誤記のほうが偉そうに響くのは気のせいだろうか。

選挙公報は「候補者から提出された原稿を、そのまま写真製版によって印刷したもの」である。今回は修正前と修正後の二種類の原稿が提出されており、取り違えた選管は明らかにミスを犯した。印刷・配送に公費を二倍使うのもやむを得ないようにも思える。

しかし、きちんと校正しないで選管に原稿を提出した候補者に責任はないのだろうか。相談員と相談役など、提出前に一度でもチェックしていれば間違いに気づいたはずである。有権者に訴求するのが目的の選挙公報で、正しく情報を伝える責任は候補者にある。そんな意識すら欠けた松長候補が落選したのは不幸中の幸いである。

それにしても選挙公報にはこの種の話が付きまとう。2013年の参議院議員選挙で北海道選挙管理委員会が選挙公報を作り直したことについて、批判記事をアゴラに載せたことがある。候補者の政策主張を示すイラスト図が抜け落ちていたというのが再印刷の理由だった。これは候補者の責任範囲内での事故だから、再印刷・再配布の公費負担は間違いだった。

新聞折込による配布では新聞を購読していない家庭に配布されない。写真製版だからテキストが抽出できず視覚障害者に情報が伝わらない。

そもそも選挙公報は美しさにかける。すべての候補者が人目を引くように原稿を作った結果、紙面全体がチカチカになる。落ち着かず読む気にならない。

選挙公報が有権者に上手にリーチできないなら公費の無駄であり、ましてや再印刷・再配送は愚かな行為である。

ネットでの情報提供を主にして、選挙もデジタルファーストで運営するのがよい。