韓国経済の何が問題なのか?

岡本 裕明

韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相は4日「韓国経済の内外環境が厳しい。今年1-3月期の輸出が振るわず、2月の生産・消費・投資がいずれも減少した」とし「それによって民生も企業もさらに厳しくなるだろう」(中央日報)と発言し韓国経済の厳しさを物語っています。

表面的理由は中国経済の影響が最も効いているようです。昨年10-12月に中国経済は日本電産の永守会長の「尋常ではない変化が起きた」というあの言葉に凝縮できるほど過激な状況に落ち込みました。韓国にとって中国は最大の貿易相手国であり風邪をひいている中国の状況を考えれば韓国は入院患者のような状態になるのは自明であります。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

では、仮に中国がアメリカとの貿易協定を締結し、両国間の問題が解決できたとしたら韓国にとって春が訪れるのでしょうか?否です。理由は二つ。一つは中国にとってアメリカとの通商問題は山積する経済問題のごく一部であり、それが中国経済を回復させる決め手にはならないからです。

特に中国の地方経済の問題は深刻であり、中央政府が地方の案件に対して銀行が貸し渋りをするのを防ぐのに躍起になっています。市場経済という自動調整機能をうまく活用しない中国方式の経済運営はAIの時代にマニュアル操作するようなものであり、早晩、回復できるような話ではないでしょう。

もう一つは中国の産業界の技術革新が進み、韓国製品と直接ライバル関係になることが挙げられます。ハイテク、造船、鉄鋼、自動車、化学製品が韓国の売り物ですが、中国が自前で調達できるようになれば韓国にとっては太刀打ちできない状態になります。

余談ですが、「経済は西に進む」という言い伝えがあります。街も原則、西に向かって発展していくように国家も西側に次の夜明けを待つ国が控えます。アメリカ国内でもサンフランシスコやシアトルといった西側がアメリカの次世代をリードしています。欧州、アメリカを経てアジアの時代という歴史の流れを見てもご理解いただけるでしょう。

日本はアメリカという「時代の先輩」を持つことによって経済繁栄しましたがこれは経済の引継ぎがスムーズに移行できたからとも言えます。つまり、国家は東側にある国との関係を維持したほうが経済的にうまくいくと考えています。ところが、韓国の場合、日本に一時頼った後、西にある中国に頼ってしまったことで根本的な間違いを犯してしまいます。なぜなら韓国の西にある中国がいつかは韓国に追いつくのは「経済は西に進む」原則からわかりきっていたことだからです。

もう一つ、韓国経済について根本的な問題点を指摘します。これは財閥経済が生み出す国民の分断化であります。韓国では現代にしては珍しい「資本家と労働者の闘争」が起きています。ストライキが頻繁に起きるのは好例ですが、国民の大多数を占める労働者の地位を守るため、政権は左寄りにならざるを得ません。

同国内には「財閥がもたらす社会問題」は十分認識されており、財閥の一つだった大宇も解体されましたがそれでも韓国経済全体のうち4分の3を残りの財閥が生み出している歪があります。このため、若者の財閥就職志向が強まり、子供に異様に教育熱心な家庭が多く存在しているのはご承知の通りです。子供がサムスンに入社できれば親のみならず親族一族が祝うほどとされ、かつての中国の科挙試験に合格するのと同じぐらいの重みがあるのか、と疑うほどであります。

財閥系に入れる若者はごく一部であり、残った若者が失業し、将来展望が出来なくなるケースがしばしば見られるのはこの理由です。海外に渡った韓国人が異様に頑張るのは故郷で成し得なかった成功を目指すためであり、かつての在日韓国人もそうですし、現在の北米在住の韓国人にビジネス成功者が目立つのはそのあたりの背景もあるのでしょう。

今般、大韓航空を抱える韓進グループの会長が亡くなり、グループ運営に大きな懸念があるほか、アクティビストが同社株を買い上げ、グループへの揺さぶりをかけています。財閥解体まで進めるのか、注目しています。

もう一点、財閥に金融がない点が韓国経済の特徴で日本の旧財閥と一線を画しています。(韓国政府がそれを是としなかった経緯があります。)韓国金融の足腰は十分ではない中、外資の影響が大きく、このあたりに経済が筋肉質になりにくいもう一つの問題が隠されているのかもしれません。

こんな状態ですので個人的には将来、北朝鮮と経済関係が構築された際、メリットよりも厳しい時期が長くなる公算はあるかもしれないと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年4月10日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。