マスコミが生み出す楽しくない社会

岡本 裕明

春は気持ちがウキウキし、前向きになりやすいものです。新年度を迎え、木々の息吹が美しく、気候も温かくなるこの時期はもっと良い話がたくさん聞こえてきてもよさそうなものです。

しかし、今日の日経を眺めながら思ったのは「なんでこんなに暗い話ばかりなのだろう」であります。日経に限らず新聞記者は事件性やトラブルの話に飛びつきますが、良い話はよほどでない限り取り上げません。今日の一面トップの見出しを見ていると滅入ってしまうタイトルが並びます。

英・EU、成算なき先送り離脱 10月末まで再延期 来月の欧州議会選リスク
テスラ、EV電池工場の投資凍結   パナソニックと米で運営
日本、韓国に逆転敗訴 WTO最終審  水産物禁輸認める
東芝LNG売却、暗礁に 契約先が解除要求  経営再建影響も

読みたくなくなるちっとも面白くないタイトルが並びます。2面以降もネガなニュースが多いのですが、小さく隠れるきらりと光る記事が、

証券、女性トップ相次ぐ  メリル日本証券 社長・副社長に ESG重視も後押し

これは女性の社会進出が叫ばれる中、経営の中枢を担う人材が確実に増えてきていることを示す意味ある記事だと思うのですが、紙面の中ほどの方に追いやられています。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

楽しい社会は前向きな雰囲気を作り、世の中がよりよくなる土壌を作ります。例えば皆さんの上司や周りにいる方がネガティブで悪口ばかり言い、怒りっぽい人であれば冗談を言う余地もないでしょう。

笑いがある社会はとても大事です。それが「俺も、私も、いっちょう、やってやるぞ」という感じにつながります。もちろん海外のメディアが明るいニュースばかりなのかといえばそうとは言いませんが、地味なニュースながらも心温まる記事や人々の感動を誘うような記事を意図的に配列しているように感じます。

新聞やテレビを通じた国民への刷り込みの影響度は非常に大きいものです。そのトーンが国民意識の立ち位置を作り上げるといってもよいでしょう。例えば早朝の民放テレビのニュース番組では暗いニュースの場合、ナレーターがさらに演出を狙うような暗いトーンでしゃべり、朝っぱらから気分が悪くなるほど気持ちを落とされます。心理に与えるインパクトは字ずらを読む新聞よりテレビを通じた画像と音声による影響力が極めて強く、脳裏に焼き付ける効果は高いものです。

ある意味、シリアスすぎるというのが私の感じる日本のメディアの基調であります。ではそれをバランスさせるためになぜか若い女性のアナウンサーたちが4人も5人もずらり並ぶのですが、ほとんどプロフェッショナリズムがない彼女たちを並ばせる意図が私にはさっぱりわからないのであります。外からの目線でいうならばさしずめディスクリミネーション(性的年齢的差別)であります。

バブル経済の時、なぜ、あれほど盛り上がったかといえば楽しかったからです。ニュースも世の中にも笑いがあり、ウキウキさせる話がたくさんあり、夢を語る人たちばかりでした。仕事をしていても「へぇ、そんなことをするのか」という話の続出でした。

もちろん、今の社会はかつてとは違います。しかし、意図的にでも楽しい話をもっと前面に配置するぐらいの配慮は必要なのではないでしょうか?記者の方々ももっと嬉しい話を取材してもらいたいと思います。かつて記者と話した際、「そういうのはいくら書いてもデスクが外しっちゃうんですよね」といったのが印象的でしたが。ならばデスクそのものにマインドの変革をしてもらいたいところです。

春だからもっとウキウキしましょうよ。まもなく天皇陛下のご退位と即位という、我々が生きている間には2度と起こらないかもしれない大きな歴史的イベントを控えています。オリンピックは4年ごとにあるんです。ならば国を挙げて祝福するぐらい盛り立ててもいいんじゃないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年4月12日の記事より転載させていただきました。