F-35A墜落事故など:野田政権の導入時に操縦性への疑義

石破 茂

石破  茂 です。
統一地方選挙の前半戦が終わり、少しだけ一息ついています。選挙2か月ぐらい前から6日土曜日の最終日まで、地元鳥取県を含めて23都府県を廻りましたが、地方選挙は国政選挙よりも更に現場に近い有権者の実感が伝わってきますし、それぞれの地域の実情がよくわかる機会でもあります。自民党の基盤は東京も含めた地域にあるのであり、国政選挙の際は地方議員の力を最大限に活用させて頂くのですから、その選挙の時に最大限の支援をするのは当然のことだと思っています。

全国各地で申し上げたことですが、立候補者数の激減と投票率の低下は民主主義の根幹を揺るがす由々しき事態です。「誰がなっても同じ」はずはありませんし、「自分一人が投票しても何も変わらない、自分一人が棄権しても大勢に影響はない」と多くの人々が思えば、特定勢力の恣意による政治を招きかねません。敢えて教科書的に言えば、民主主義は「資格を有する者の多くが参加する」「有権者に正しい情報が伝えられる」という二点が満たされなければ形骸化し、その機能を失ってしまいます。

閣僚や副大臣の発言など、「最近の自民党はどこかがおかしいのではないか」と思っている有権者は我々が思っているよりも遥かに多い、というのが世論調査の数字とは異なる実感ですが、さりとて野党に入れる気にもならない有権者の行動選択が棄権になってしまうのは当然というべきなのでしょう。問われているのはまさしく我々自民党なのです。「適材適所」「真摯に謙虚に取り組む」「責任を自覚し深く反省」等々の言葉が国民に空虚に響き、やがて感覚が麻痺してしまうことの恐ろしさを再認識しなくてはなりません。

墜落したF-35Aの同型機(空自サイトより:編集部)

航空自衛隊がF-4戦闘機の後継として導入を進める最新鋭機F-35A戦闘機の墜落事故は、極めて深刻な事態です。当初はF-22の導入を目指していたのですが、最先端技術の塊である同機を米国が禁輸対象とし、その後生産が打ち切られたことなどもあってこれを断念、2011年12月に野田佳彦内閣がF-35の導入を決定した、というのが経緯の概要です。

当時野党であった我々は詳しい事情を知る立場にはなかったのですが、飛行の安全性や操縦性、搭載装備の拡張性などから本来エンジンはツインであるべきなのではないかという疑問を持っており、エンジンのパワーに比べて機体が重く、燃料満載時の操縦性について何人かの専門家から疑義が呈されていたことを記憶しています。

昨年6月、米国の議会附属機関である会計検査院(GAO)は、同機には未解決の欠陥が966件あると指摘しましたが、水曜日の自民党の会議でこの点につき防衛省からは「指摘された問題点については米国と密接に連携を取り解決している」との答弁がありました。いずれにせよ、搭乗員とそのご家族のために、今はひたすら祈るのみです。

「(レーダーに映らないはずの)ステルス機の機影がレーダーから消えた」との言語矛盾的報道に疑問を持たれた方もおられたようですが、機影が「完全に映らない」ようにすることは現時点の技術では不可能なので、報道が間違っているわけではありません。

スウェーデンのサーブ社は「技術的にもコスト的にも困難な全く映らないステルス機を開発するよりも、ステルス性が低くても搭載兵器が多く、敵機を早く発見するレーダー性能に優れたリーズナブルな価格の機体を開発する方が輸出戦略からも望ましい」との方針を採っていると聞きます。

日本がその選択肢を選ぶことはトランプ政権との関係から考えても困難と言う他はありませんが、旧ソ連と対峙しながらあの厳しい冷戦期を乗り切ったスウェーデンの防衛思想からは学ぶべき点が多々あり、防衛庁・防衛省に居たときから是非とも一度きちんと学んでみたいと考えていますが、まだ実現していないのは残念なことです。

10日水曜日、国立劇場において「天皇陛下御即位30年奉祝感謝の集い」が開催され、実行委員会の一員として参加して参りました。NHK交響楽団有志によるモーツァルトのクラリネット協奏曲の演奏に続く政財界トップ各位の式辞・祝辞もそれなりに整ったものでしたが、山中伸弥京大教授、北野武監督、被災地代表の千代川茂氏(三陸花ホテルはまぎく社長)、ブラジル日系人代表の宮崎真優さんの祝辞は、心のこもった肉声が伝わる、ユーモアも交えた素晴らしいものであり、心底感服しました。我々政治に携わる者は、技術に堕すことなく、受けだけを狙わず、人を感動させる術を学ばねばならないことを痛感したことでした。

スピーチに続いてMISIA、松任谷由実、ゆずなどによるミニコンサートがあり、これも感動的なものでした。松任谷由実の歌唱力低下を酷評する向きもあるようですが、学生の時からファンだった私は素直に感激致しました。元々歌唱力のみで勝負する人ではなく、独特の歌詞、メロディー、全体的な雰囲気は彼女しか出せないものであり、まさしく「天才・ユーミン」だと思っています。

週末は13日土曜日が「尾崎行雄記念財団 咢堂没後65周年記念特別講演会」で講演(午後2時・憲政記念館)。
14日日曜日は自民党鳥取県連懇談会(午前10時半・ホテルモナーク鳥取)、衆議院大阪12区補欠選挙街頭演説会(午後6時30分・大東市オペラパーク)と個人演説会(午後7時・栄和町公民館、午後7時半・灰塚公民館、午後8時・新田公民館)で演説という日程です。

明治23年以来、衆議院議員在職63年、当選25回という世界記録を持つ憲政の神様・尾崎行雄(咢堂)は多くの名言を残していますが、中でも「人生の本舞台は常に将来にあり」との言葉が私はとても好きです。

土曜日の都心は久々に日差しの暖かな一日となるようです。
皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2019年4月12日の記事を転載させていただきました(サブタイトルは編集部追記)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。