国旗は国を象徴的に表示したものだ。「白旗を挙げる」という言葉があるが、戦いで敗北した場合は国旗を降ろさなければならなくなる。国を失うことを意味する。だから、どの国も国旗を大切にし、国、民族の歴史的イベントには国歌と共に国旗は欠かせられないわけだ。
ウィーンの国連で当方は過去、2度、国旗掲揚式に出くわしたことがある。旧ユーゴスラビア連邦から独立したモンテネグロと、オブザーバーとして国連に参加したパレスチナの国旗掲揚式だ。いずれも関係国の外交官ばかりか、国連関係者も参加し、国旗掲揚式に臨んだものだ。風のない日に国旗掲揚式を迎えた場合、国旗はなびかないから残念だ。さわやかな風に国旗がゆっくりとなびけば国旗掲揚式としては最高だ。
前口上が長くなったが、韓国の国旗「太極旗」が揺れているのだ。さわやかな風で揺れているのではない。ついでにいえば、韓国という国体も「太極旗」と同じように揺れだしているのだ。ここ数日の間に3回、「太極旗」に関連した好ましくない記事が流れてきたのだ。
①「しわだらけの太極旗」事件
韓国外務省の趙顕第一次官がスぺインのフェルナンド・バレンスエラ外務次官と会談した。それに先立ち、両国国旗の前で記念写真を撮影したが、韓国の太極旗に多数のしわがあった。担当官が事前にキャッチできなかったのだ。両次官はしわだらけの太極旗の前で写真を撮った(「韓国外務省、しわだらけの『太極旗』掲揚!」2019年4月6日参考)。
②「色あせた太極旗」事件
文在寅大統領夫妻が訪米したが、米儀仗隊は11日、アンドルーズ空軍基地で色あせた太極旗を使用して文大統領一行を迎えたというのだ。韓国大統領府の説明によると、当時、米儀仗隊は米国の星条旗と韓国の太極旗を手にしていたが、太極旗の太極模様の色が「空色」に色あせていたという。中央日報日本語版11日付けによると、青瓦台(韓国大統領府)は事実を確認中という。
③「文大統領の胸に北の共和国旗」事件
韓国ニュース専門ケーブルTV「聯合ニュースTV」は10日、米韓首脳会談の見通しを報道する際、文大統領とトランプ米大統領を並べ、両大統領の胸の位置に太極旗と星条旗を表示する予定だったが、文大統領側に北朝鮮の共和国旗を間違って表示してしまった。
韓米首脳会談:文大統領の下に北朝鮮国旗、聯合テレビ報道局長解任(朝鮮日報)
文大統領は南北融和路線を推進し、米朝間の調停役を自認してきた。野党からは「文大統領は金正恩朝鮮労働党委員長の報道官」と揶揄されている。そういう背景もあってか、TV関係者は間違って文大統領側に北の共和国旗を表示したのだ。現地からの情報によると、TV側は報道局長と編集幹部2人を懲戒処分にするという。
短期間に3度、国旗(太極旗)にまつわるスキャンダルが発生したわけだ。もちろん、不祥事の状況や関係者(国)は異なっているが、「太極旗」が正常な扱いを受けていないという事実は同じだ。①は韓国外交部(外務省)のルーズさ、②は別にして、③は文大統領の日ごろの言動が大きく影響を与えた不祥事といえるだろう。
国旗に関連した不祥事が頻繁に起きたのは決して偶然ではないだろう。国旗を象徴的な国体とすれば、韓国の国体が揺れていることを物語っているのではないだろうか。
聖書「旧約聖書」アモス3章7節によると、「神はそのしもべである預言者にその隠れた事を示さないでは何事をもなされない」といわれている。とすれば、多発する太極旗事件は神からの韓国への警告と受け取れるわけだ。敬虔なカトリック信者の文在寅大統領は太極旗事件を外務省関係者の気の緩みのせいなどにせず、冷静になって考えるべきだろう。韓国が「太極旗」を失い、「白旗」を挙げる事態に陥らないためにも……。
■
「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年4月13日の記事に一部加筆。