我々はどうやったらもっと頑張れる?潜在能力の引き出し方の考察

男子フィギュアスケートは今や4回転を何回入れるか、というレベルに上がってきています。カナダの選手が1988年に成功させたものが初めて、と記されていますが、それ以降、4回転がごく普通になってきているレベルアップはなぜ起きているのでしょうか?

写真AC:編集部

プロの選手の中で4回転が高い目標ではなく、ごく普通の演技項目になっていることで「当たり前化」していることが潜在的な選手の能力を高めているのだろうと思います。もちろん1988年から30年の間にトレーニング施設やスケート靴の改良もあったでしょう。しかし、私は能力開発によるところも大きいのではないかと思います。

プロ野球にしろ、サッカーにしろ、箱根駅伝にしろ、多くの場合、実力は伯仲しています。つまり、どこが勝ってもおかしくないのです。しかし、不思議と強いチームは強くなります。青学がなぜあれほど駅伝で勝ち続けたか、といえば監督が選手の力を引き出すセンスを持っていたからでしょう。あるいはチームの中でリーダーシップがあるキャプテンがいると雰囲気は全く変わります。

企業では私は係長がキーだと思っています。最小のセル(細胞)を牛耳るのが係長。会社の「シマ」と呼ばれるデスクを通じて新入社員から実務のベテランまでを牛耳ります。そのポイントは机がくっついていることであります。あれがバラバラの席ですと一体感が生まれないのですが、隣同士、お向かいさんがいることで否が応でも「一緒にやっている」という長屋的雰囲気ができます。これをさら持ち上げられるかどうかは係長の腕にかかっているといっても過言ではないでしょう。

能力開発プログラムはよくあるものです。全く信じない人もいると思いますが、科学の力は思ったより優れています。

私の塾でこの2月の受験で志望校合格した生徒の場合の話です。秋ぐらいに成績が落ち、母親がキーキー言って「なぜ成績が落ちたのか」「もっと勉強しろ」とプレッシャーを与え続けました。実はその際、実験的にその生徒に簡易型の脳波測定を行ったところ極めて高いストレスを抱えていることが判明、成績低迷の原因は母親にあると考え、母親にトーンダウンするようにお願いしました。すると徐々に脳波は正常に戻り、試験前は極めて安定、成績も元に戻ったのは言うまでもありません。

人の能力を引き出すには外的要因と内的要因の制御があります。そして勝負時にいかに最大限の能力を引き出せるかというコンディション作りも加わってきます。

フィギュアの国別対抗で期待の紀平さんが「ガチガチになった」というのは外的要因があります。マスコミにあれだけ騒がれ、期待がかかれば誰でも固くなります。自分の演技次第で1位にも2位にもなると言われるのは通常の個人競技ではなく経験値の少ないチーム競技だったからでその環境対応が十分ではなかったのかな、と思います。

能力を引き出すことは試験のためだけではありません。高齢者が人生を楽しく過ごすための生きがいをどれだけ感じるかということもあります。私が見てきた元気のない高齢者の多くは引きこもり、友人や話す相手がいないといった問題を抱えているようです。

ではどうして、内向的になるのでしょうか?

私は自分のコンプレックスが前向き発想を凌駕しているのでだろうと思います。成績が伸びない、上司に叱られた、体が十分に動かなくて他の人に迷惑をかける、などなど全年齢層において必ずあるであろう心理的負荷要因です。

これを超えるには自己研磨と外の人たちの協力が必要です。できない人間に「おまえ、バカ野郎」と言ってしまっては完全に委縮し、それこそガチガチになります。一方、「なかなかやるじゃん」と褒められれば不思議と気持ちがぐいと切り替わるものです。できない人はほんのちょっとした躓き(ハードル)があるだけのこともあります。そこを発見し、解決してあげることで全く変わります。

時として上司や先生が失敗した際「俺もできなかったよ」と相手のストレスレベルを下げてあげる方法もあります。

メンタルとは想像以上にセンシティブなものです。皆さんも実は高い潜在的既存能力と未開発の成長余力を持っています。「120%の実力を出して」というのは奇跡ではなく、その力を出せる最高の状態にあることを意味しています。

しっかりした目標とそれに向かっていくという気持ちを持てば人生、びっくりするぐらい変わると思います。そして積極的になれるものです。そういう私も日々、メンタルとの戦いです。頑張ります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年4月14日の記事より転載させていただきました。