デジタル手続き法案が国会に提出されている。行政手続きはオンライン利用を原則とし、そのために必要な事項を定める同法案の成立を強く期待する。
情報通信政策フォーラム(ICPF)では2回に渡り同法案に関するセミナーを開いてきた。初回3月29日には、立法化を牽引してきた木原誠二自由民主党衆議院議員に講演いただいた。
木原議員はデジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップがデジタル手続き法案の要点であると説明された。デジタルファーストは個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結すること、ワンスオンリーは一度提出した情報は二度提出することを不要とすること、コネクテッド・ワンストップは民間サービスを含め複数の手続・サービスをワンストップで実現することである。
木原議員は、憲法に基づいて地方公共団体には自己決定権があるので地方行政への義務化はむずかしい、という課題も指摘された。これについては、現行法案が成立した後、議員立法を提出して対応していきたいということであった。
第2回4月16日には、小木曽稔新経済連盟政策部長に話していただいた。小木曽氏は講演で次のように強調された。
民と民の手続きでも法律でこうしろと決められている場合がある。不動産の重要事項説明がその例だが、これを突破するには個々の事業法の改正が必要である。残念ながら今回の法案では一般的な見直し規定があるものの個別の事業法の改正が入ってるわけではない。
確かに宅地建物取引業法は第35条で、「宅地建物取引業者は、…これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない。」と重要事項を書面で交付するように求めている。書面交付は法律が定める義務だから、法改正しない限り手続・サービスが一貫してデジタルで完結するデジタルファーストは実現しない。
小木曽氏は改正が求められる事業法リストも提示され、第1回と比べて議論は細部に及んだ。さらに細かく検討していけばさらに課題が見つかる可能性がある。「真実は細部に宿る」からだ。
そこでICPFでは第3回セミナー「デジタル手続き法で企業運営は変わるか」を5月17日に開催することにした。創業から始まり、社員の雇用、税務申告など、企業を運営していくには多くの行政手続きが必要になる。今までは紙の書類を揃え提出していたが、デジタル手続き法が成立するとどのような変化が起きるのか。紙の手続きのまま残される業務はあるのか。これらの疑問について、企業運営に必要な行政手続きをITサービス化してきたfreee株式会社の木村康宏氏に講演いただくことにした。どうぞ、皆さんご参加ください。