OECDが『OECD Employment Outlook 2019』を発表した。印象的な一文からプレスリリースは始まる。
新しい技術とグローバリゼーションによってもたらされた変化は、私たちの働き方と生活の仕方を急速に変えている。雇用の未来について多くが語られてきたが、今は言葉を行動に変える時期である(There has been a lot of talk about the future of work, but now we must turn words into action.)。
一部の業務はロボット化され、オフショア(海外)に回されている。適切な方針が整わないと、人々は取り残されていく。若者、スキルの低い人、女性、臨時雇などの労働は危険にさらされている。
今後15〜20年以内に今までの業務の14%が消滅する可能性があり、32%は急激に変化する可能性がある。グローバリゼーションに多くの地域社会が取り残され、デジタル技術への格差から年齢や性別、社会経済的地位に基づく不平等が生じている。
雇用の未来のために新しい政策行動が必要とされている。労働法や社会政策は改革しなければならない。スキル不足を補うためには「生涯学習」の効果的なシステムが求められる。
誰もが新たに生まれる雇用で恩恵を受けられるわけではない。社会保障、生涯学習、団体交渉へのアクセスが限られ、あるいは利用できない、不安定な雇用条件で立ち往生する人が生まれている。中流階級の「空洞化」も現実的な懸念となっている。
労働者の転職を支援する予防介入処置として、スキルの陳腐化を防ぎ専門を越えた異動を促進するように、包括的な成人向け学習戦略、特に熟練度の低い成人向けの戦略を確立する必要がある。
白書は、このような警鐘を鳴らしている。
もちろん、デジタル化やグローバリゼーションといった非連続的な変化はチャンスでもある。AIもブロックチェーンも今や私たちの日常生活の一部になってきた。これにより、生産性やサービス、福利の向上が促進される。これらの技術は新しいビジネスモデルや革新的な働き方を生み出し、雇用主と労働者の両方により高い柔軟性を提供する。
しかし、そんな新技術への対応が遅れればその国は取り残されるばかりである。昨日はスマホの登場が産業にどのように影響を与えてきたかを解説した(『スマホに飲み込まれる産業 』)。これを教訓としたうえで、ロボットやAIがもたらす未来に備える労働政策が求められる。