国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発研究所(NEDO)と川崎市、そして公益財団法人川崎市産業振興財団との3者連携により開設されたのが、「Kawasaki-NEDO Innovation Center」、通称「K-NIC」です。NEDOが関わっていることからもわかるように、研究開発型ベンチャーの支援を行うワンストップ起業家支援拠点です。
この施設がJR川崎駅から、ペデストリアンデッキで繋がっているミューザ川崎セントラルタワー5階に開設されたのです。NEDOは水素エネルギー社会を推進するための研究開発をサポートしている組織なので、これまでも多くの関りをもってきました。
K-NICは、駅から近くの場所にあり、会員登録料無料で、Wi-Fi完備のコワーキングスペースや会議室が無料で使用できます。もちろん、起業相談やイベント参加も無料で提供されています。運営法人は、Startup Hub Tokyoを運営している株式会社ツクリエです。開設したばかりということもあり、会員はまだ少数のようで、コワーキングスペースはまだまだ余裕がありました。講演などのイベントを開催するスペースは広々としていて、簡単な立食パーティも開催できるそうです。
ハードの充実は、もちろん必要なものではありますが、ビジネス相談や、経営相談、技術評価、投資家斡旋等のソフトの充実が必要不可欠であることは言うまでもないですが、関わる人達のネットワーク形成も重要です。既に事業に成功している起業家、大企業の新規事業担当者、投資家、学術者、法律やルールを司る役人や政治家、人は全てを兼ね備えていないので、足りないピースをネットワークから埋めていかなくては、事業化することは出来ません。
研究開発をする事や実証実験を行う事が目的なら、全てのピースが揃わなくても良いのでしょうが、実走として事業を行うとなると、そうはいきません。国民の税金を使って起業家支援を行う以上、事業化されなくては意味が無りません。もちろん全てが成功するとは思っていないし、全ての成功を求めたらベンチャー支援にはなりません。事業化までの道のりを明確にして、その為の研究開発であり、実証実験であり、見える化、見せる化を徹して行っていくことが求められていると思います。
ベンチャー企業の支援は、日本の将来にとても大切ですが、衆議院議員時代に取り組んでいた行革の視点に立てば、単に会員数や相談件数、イベント開催数、イベント参加者数などの数字を達成目標に掲げるのはやめるべきと思います。K-NICが研究開発型ベンチャーの支援拠点として、勢いのあるベンチャー企業を多数生み出し、生み出された企業価値の総額がいくらになるのか、こうした数字が達成目標になるべきです。
支援拠点は、企業の時価総額が高まるように、事業価値を生み出すように、徹底したサポートをすべきと思います。厳しい目標管理になるかもしれませんが、NEDOと中小企業育成に熱心な川崎市が本気を出し、運営事業者が全力を傾ければ不可能とは思いません。厳しさを求められる環境だからこそ、出来るものと信じ、K-NICに期待したいと思います。
編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2019年5月1日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。