トランプ大統領のツィッターも便利な時もあれば凶器になるときもあります。「中国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)相当に対する追加関税を10日に10%から25%へ引き上げる」という週末の唐突のツィッターは瞬く間に全世界を駆け巡り、月曜日の金融市場を震撼させました。
本意はライトハイザー通商代表部代表が中国側に交渉の後退が見られるとトランプ大統領に耳打ちしたことでトランプ大統領の逆鱗につながったとブルームバーグは報じています。
中国との閣僚級貿易交渉はそれなりに進展があり、近いうちにまとまるのではないか、という憶測すら流れていた中でなぜ、この機に及んでそこまでの発言をせざるを得なくなったのでしょうか?
詳細の交渉内容はわかりませんが、技術移転問題などで中国内の法律改正が必要な内容について米中間で一旦合意していたものを突如、覆すような姿勢を見せたため、交渉妥結できないイライラ感が募った末での空砲的なツィッターではないかと私はみています。事実、NY市場先物は大きく下げ、月曜日の市場開始直後も460ドル以上下げたもの400ドルも戻して取引を終了しています。市場のコンセンサスはトランプ大統領のツィッターの本気度を疑う状況にあります。
トランプ大統領は2020年の選挙に向けた大統領としての成果をずらりと並べることに腐心しています。ところが、トランプ大統領のイライラとは大型減税とNAFTAをUSMCAに変えたぐらいであとは高いハードルに邪魔され、思ったほど成果が上がっていません。
そんな中、トランプ大統領から見ればアジアの小国、北朝鮮の金正恩委員長とは二度目の米朝首脳会談で決裂した上に飛翔体まで発射し、赤子の手をひねるぐらいのつもりだったのにさっぱり進展できず、フラストレーションがたまっていたのではないでしょうか?
中国との通商交渉も2月末までにはまとまる、と言いながらじわじわと妥結目標が延び、5月に入り、今度こそは、という中、ライトハイザー代表から「まだ難しい」と囁かれたわけです。
2020年の大統領選において中国との通商交渉を経た「成果品」をもって「経済のトランプ、ビジネスマン大統領の真骨頂」というイメージを植え付けることは絶対条件であります。それゆえに中国側に相当無理じいするような条件を突き付けているのだろうと察しています。
個人的にはトランプ大統領もそろそろ腹を括らないといけない気がします。精力を通商問題に注ぎ込んでばかりいては他の山積する課題が進捗しなくなる可能性が高いからです。というより、ここまで大統領が注力するからこそ、この戦利品はデカいぞ、という期待感が高まってしまいます。大物を狙うか、小物をたくさん狙うかは個人のテイスト。小物狙いは実務家型で大物狙いはばくち的指向があり、不動産事業を生業としてきたトランプ大統領らしい勝負の仕方であります。
アメリカらしいといえばそれまでですが、あまり市場のかく乱はしてもらいたくない、というのが私の本音であります。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年5月7日の記事より転載させていただきました。