アメリカでは依存症からの回復者がリスペクトされている

田中 紀子

おととい(6日)、アメリカのロサンジェルス在住の日本人の方で、アルコール依存症から回復されたAAメンバーの方にアメリカの依存症事情について、お話しを伺うことができました。

この依存症の自助グループご存じない方は、この表を参考にして頂きたいのですが、

このアルファベット二文字の
AA、NA、GA、DA、OA、KA、FAといったアノニマスグループ、
そしてアラノン、ナラノン、ギャマノンといったノングループ、
これらのグループは、アメリカの「AA」つまりアルコールの当事者が回復する自助グループから派生した世界的な組織です。

よく海外ドラマや映画で「は~い、僕はアルコホーリックのジョンです。」といった当事者が自分の経験を告白するミーティングと呼ばれる集まりの風景が出てきますが、これらの自助グループのことを描いています。

AA等の自助グループには、大体週に1回以上定期的に通い、自分の経験やそれに伴う感情について語ります。
さらに12ステップと呼ばれるプログラムがあり、それを実践することでスピリチュアルな回復、つまりお酒や薬、ギャンブルを止めるだけではなく、「他の仲間達を助ける」という生き方に変えていくことを目指していきます。

lacoaa.orgより:編集部

このプログラムを1度以上やり遂げ、またこういった生き方を続けていくのには、相当な努力が必要です。
日本では、大体10年くらい経過すると、どんどん脱落していってしまいます。
私の自助グループでも15年となる動機の仲間は数えるほどしかいません。

けれども海外には30年以上のオールドタイマーと呼ばれる人達がゴロゴロしています。
それは何故か?その理由の一端を昨日教えて貰うことができました。

まず大きな違いは「認知度」。
アメリカ人でAAのことを知らない人はいないと言っても良いほど、知られているとのことです。
ちなみにアメリカではカジノでも、負けが混んでいる人がいると、「お前、GA行った方が良いぞ!」なんてジョークが飛び出す位、こちらも皆認知されているとのことです。

さらに驚いたことに、アメリカのAAではテレビCMも打っているとのことで、これができたら素晴らしいなと思いました。
これ我々の側がメディアのクライアントになる!ということにも重大な意義があると思っています。
クライアントの意向は無視できないですからね。
そうなってくると報道のあり方にも影響が出てくるのではないでしょうか?

では何故、メンバーからの献金だけで成り立っている(外部からの寄付は一切受け付けません)
AAにそんなことができるのか?

まずは認知され社会の一部として明確に機能しているので、さまざまな連携機関からメンバーがつながり、メンバー増えれば増えるほど、献金が集まるということが一つ。

さらにアメリカでは、遺産を「子供に残す」よりも社会貢献に使う!という考え方が浸透していて、寄付の上限は決められていますが、AAへの寄付を遺言に残す人も多いのだそうです。

これは常々私も公言していて、特にギャンブルは遺産を残されて、発症や再発する人を本当に沢山見てきました。
親は子供に財産残しちゃダメです!使い切りましょう。使い切れない位あるなら、是非、GA・ギャマノンやギャンブル依存症問題を考える会や家族会に寄付して下さい(笑)

そして一番驚いたのは、もしAA、NA、GAなどのメンバーが社内にいると分かったらどうなるか?
日本ではこれがネックで、バレないように取り繕っているために、残業が断れず、ミーティングに行かれなくなり再発…とこの悪循環になっているんですね。

ところがアメリカでは、もし社内にAA他の自助グループで回復した人がいたら、その人は評価され、社内査定で高評価を得るとのことなんです。「そこまで徹底して自己管理ができる人」という風に見られるのだそうなのです。これには実に驚きました!

でも確かにそうなんですよ!
皆、仕事を持ち、家庭を持ち、忙しい中さらに自助グループの活動を行い、同じ依存症問題で困っている人達を無償の愛で助け、その上様々な不健康なものを断ち切っていくんですよ。

例えば、私なら、ギャンブルや買い物につい気が大きくなって行ってしまわないよう、もう10年お酒も止めています。
薬物の人もお酒も一緒に止めていきますよね。そんなこと一般の人はなかなかできないのではないでしょうか?

そして「アルコール依存症ならAAへ」ということが社会で当たり前に知れ渡り、繋がることを賞賛されているので、有名人も当たり前にミーティングに来ているそうです。仲間たちもどんなに有名人が繋がってきても、グループの中ではただの1メンバーという扱いをするので、「サイン頂戴」とか「一緒に写真撮って~」などという人はいないそうです。

日本のように、依存症問題を1度でも起こしたら叩きのめされ二度と活躍できないなんて有り得ず、AAなどで回復したらこちらも賞賛され、それがまた好循環に繋がるのだそうです。

皆さん、どうですか?
日本では、難しい…と思われたでしょうか?

でもAAなどの自助グループって、税金なんか1円も使わないんですよ。
そして世界で最も多くの依存症者が回復している方法なんです。
これは日本社会にとって大きなメリットではないでしょうか?

実は、アメリカ並みに自助グループを発展させることなんて一般の方々、そしてマスコミの皆さんのご協力があれば簡単に実現します。

それは自助グループの実力を認めて下さり、自助グループで回復できる!と、信じて貰うこと。
そしてネガキャンを止め、自助グループの広報をして下さること。
これだけで十分です。
どうか、応援して下さい!


田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト