欧州議会選挙で二重国籍者が複数国で投票

八幡 和郎

欧州議会選挙が5月23日から26日までのいずれかの日に、EU各国で行われる。1979年にEU市民による直接選挙となってから、5年に一度行われてきており、今回は9回目だ。

ところが、今回はいろいろ悩み多き選挙になっている。ひとつは、イギリスの離脱交渉が進まず、とりあえず、選挙を行わざるを得なくなりそうなことだ。およそ熱が入りそうもないが仕方あるまい。

欧州議会ロゴ(Wikipedia:編集部)

もうひとつは、二重国籍者による二重投票が問題化していることだ。いちおう2カ国以上で投票することは禁じられているが、有権者リストの共通化と名寄せができていないので、最後は良心にまかすしかない。

私は二重国籍がおしゃれでいいことのようなことを言う人たちに対して、「権利は一人分、義務は二人分」なら気の毒だが、ほとんどの場合、「権利は二人分、義務は一人分」に近くなっているのであって、本質的に不公正なのでないかと主張してきた。

とくに、選挙権と旅券の二重行使はおかしい。もし二重国籍を認めるにしても、一国でしか選挙権行使を認めないとか、複数の旅券の行使、とくに第三国での行使には制限をかけるとかすべきだろう。

そうした矛盾が同じ選挙で二票持つ人をつくるという漫画チックなかたちで、欧州議会選挙であらわれた。比率はドイツで2%ほどだそうで、結果にもそこそこの影響が出る数字だ。

国内の選挙でマルチハビテーションをしていたら「複数の土地で投票できるなんておかしい」と誰でもいうのに、国際間では咎められないのは、おかしな話だ。

さて、欧州議会選挙だが、選挙の実施方法については、普通、自由、秘密投票、比例代表制などの原則だけが共通で、加盟国にかなりの自由が認められている。

比例代表というのは、小選挙区制などではだめということなので、中選挙区とか拘束名簿とかいろいろだが、二大政党以外の小政党にもチャンスがある。そこで、フランスなどでは、極右の国民連合など国会ではごくわずかの議席だが、欧州議会にはそれなりの数の議席を送っている。

これまでは、中道右派のキリスト教民主党系が主体の「欧州人民党(EPP)」と、中道左派の「社会民主進歩同盟(S&D)」が2大政治会派を形成して欧州議会を牛耳っていたが、今度はそうできるか怪しいものだ。

両派で過半数に届くかすら怪しいのだ。EPPでは、難民の流入に強く反対する「フィデス・ハンガリー市民連盟」を除名するかどうかを迷っているというのもそのためだ。 EPPは、ジャン=クロード・ユンカーEU委員長の後任にドイツのマンフレート・ウェーバーを選出したいのだが、どうなるか分からない。

フランスの「国民連合」、イタリアの「同盟」、「ドイツのための選択肢(AfD)」、オランダの「自由党(PVV)」、オーストリアの「自由党(EPÖ)」といった極右と、ギリシャの「急進左派連合(SYRIZA)」、スペインの「ポデモス(私たちはできる)」、「五つ星運動」などにぎやかなものだ。