台湾の「世界保健総会」参加を認めよ

世界保健機関(WHO)の年次総会、世界保健総会(WHA)が20日からスイスのジュネーブで開催されるが、オブザーバーの中華民国(台湾)は中国共産党政権の妨害により参加できない状況だ。それに対し、米国、英国、フランス、カナダなどが相次いで台湾のWHA参加支持を表明している。台湾の多くの医療団体もWHAに参加希望を表明してきた。WHAはWHOの意思決定機関だ。

ウィーンの国連建物前の広場で台湾のWHA参加を訴える集会が開催(2019年5月16日午前、ウィーンで撮影)

台湾は2009年からオブザーバーとしてWHAに参加してきたが、17年から招待状が届いていないという。すなわち、中国共産党政権は、台湾で2016年5月、民主進歩党(DPP)の蔡英文氏が第14代中華民国総統に就任して以来、台湾への政治的圧力を強化し、国際社会での台湾の孤立化を画策してきた。米中貿易戦争の長期化を控え、対台湾統一戦線工作を強化しているわけだ。

ウィーンの国連建物入口ゲイト1前の広場で16日午前、台湾のWHA参加を支持する集会が行われた。雨模様の天候だったが、台湾国民のほか、支持者が集まり、「台湾のWHA参加を支持する」「健康問題は人権だ」とアピールし、台湾の国旗を振りながら訴えた。

当方は国連の知人からデモ集会開催を知らせられたので、出かけた。集会の周囲には中国大使館関係者らしい人物が集会の動向を監視する一方、ビデオを撮影していた。台湾関連行事には常にみられる光景だ。

中国共産党政権は台湾の中国本土併合を画策、台湾との国交を締結する国には様々な外交上の圧力を行使し、台湾の国際社会での統合を妨げてきた。一方、台湾政府は国民の健康問題を重視する立場からWHAの参加を重視してきた経緯がある。

台湾衛生福利部が作成したパンフレットによると、台湾人の平均寿命は男女約80歳で米国民より高く、ドイツとほぼ同様だ。台湾はヘルスケアでは世界14番目に位置するという。要するに、台湾は国民の厚生分野では世界的発展した国だ。その国が中国の反対でWHOに加盟できないばかりか、WHA参加すら阻止されてきたわけだ。

集会に参加していた台湾出身者は「国民の健康問題は人権だ。その人権を無視し、政治的思惑から台湾のWHO加盟を拒んでいる。台湾は世界の健康向上に貢献できる国だ」と説明していた。

米国、英国、オーストラリア、ドイツなど多くの加盟国が台湾のWHA参加を支持表明した。日本では超党派の国会議員連盟「日華議員懇談会」が15日、台湾のWHA参加実現を向け、国際社会と連携しながらWHOに働きかけるように日本の政府に要請した決議を採択している。

日華懇の古屋圭司会長は、「中国からの圧力で台湾がWHAに参加できないことは遺憾だ」と表明し、東京・白金台の台北駐日経済文化代表処を訪れ、謝長廷代表(大使に相当)に今回の決議文を手渡している。

日華懇は今年3月にもWHAへの台湾のオブザーバー参加を求める決議を採択し、台湾への支持を表明してきた。古屋氏は「政治信条などによって差別されてはならないことを明記したWHO憲章からみても、民主主義国家の台湾が差別を受けることは許されない」と指摘している。

台湾と日本両国間で年間600万人の両国国民が行き来する時代だ。越境性感染病を予防する上で台湾不在は大きな問題が生じることが考えられる。2300万人の国民を有する台湾を世界の医療ネットワークから外すことは台湾国民ばかりか、世界の国民にとっても大きなマイナスだ。それだけに、「医療問題を政治化」する中国共産党政権に対して批判の声が高まっているわけだ。

なお、河野太郎外相は今月8日、ツイッターで台湾のWHA参加を支持する旨を初めて表明している。

ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年5月18日の記事に一部加筆。