デジタルデバイドとアナログデバイド

情報通信政策フォーラム(ICPF)が開いたセミナーでアナログデバイドが話題になった。その他の様子は18日の記事で伝えたので、今日はアナログデバイドについて書こう。

セミナー講師の木村氏はデジタルデバイドに関連して次のように話した。

離島の人が紙での手続きのために本土に出かけるというのは、逆に「アナログデバイド」ではないか。

その通り。今のわが国にはアナログデバイドが数多く存在する。

18歳以上の在外邦人は100万人以上いるが、2017年衆議院選挙では小選挙区で在外投票の有権者数が100,090人、投票者数は21,180人に過ぎなかった。在外邦人の98%以上が選挙に参加できないのだ。有権者登録と投票の過程では在外公館に出向く必要があるが、在外公館が隣接国にしかない場合もあり在外投票制度は利用しにくい。

習志野市サイトより

習志野市は市営ガスを提供しているが、ガス漏れの連絡は電話でしか受け付けていない。いくら24時間年中無休といっても、電話で連絡できない聴覚・発話障害者には役立たない。これは命にかかわる問題である。

行政手続きのデジタル化はアナログデバイドに苦しむ人々を救う可能性がある。

在外邦人にネット投票が認められれば投票する人は確実に増えるだろう。これには制度改革が必要だが、ガス漏れの連絡であれば単にFAXやメール・SNSなど他の連絡手段を設けるだけで済む。

5月21日早朝に避難準備が発令された愛知県知立市の洪水ハザードマップ(一部)

手続きをデジタル化する際にはアクセシビリティに配慮する必要がある。画面のテキストは拡大・縮小しても読み取れるだろうか、読み上げられるだろうか。たとえば、画像PDFのハザードマップは視覚なしでは情報が取得できないので、テキストで「××町×丁目は浸水の恐れが高い」などと書いておく必要がある。

デジタルデバイドの解消にはアクセシビリティへの配慮が必要になる。しかし、このことはあまり知られていない。そこでICPFでは30日にセミナー「デジタル活用共生社会とウェブアクセシビリティ」を開催する。残席僅少だが、ぜひご参加ください。