事故防止装置の義務付けを
高齢運転者による痛ましい事故が目立っています。メディアによる批判が高まり、多くの高齢者は居たたまれない思いをしているようです。知人たちは「メディアは老人叩きに精を出すのではなく、冷静に安全防止装置の普及、高齢者の運転する車への装着義務付け、道路交通法の改正などをキャンペーンすべきだ」と、訴えています。
8月に90歳を迎える知人は、毎週、自分で車を運転し、ゴルフ場通いをしています。池袋や大津での惨事などが報道され、最近、娘さんから「誕生日までに運転を止めなければ、今後、一切、面倒をみないし、連絡を受け付けない」と、最後通告を宣言されたそうです。
「運転とゴルフのセットは数少ない生き甲斐の一つです。それを取り上げられたら、生きていく価値がなくなります」と、悲痛な叫びをあげています。夫人に先立たれ、老人マンションに入居しています。「マンションの息詰まるような雰囲気から解放される唯一の生き甲斐です」と、切実な訴えです。
「安全装置をつけて事故を未然に防ぐとか、方法はあります」。昼間、住まいの近くの通いなれた道をゆっくり走っています。「私の生き甲斐を取り上げないでほしい」と。
最高の安全運転装置車をリース
もう一人は80歳代後半で、先ほどの人の友人です。「今の免許が2年後に切れるので、その時、運転を止める。乗っている車は買って3年半。惜しいけれど、売却して、最高の運転支援装置の付いた車をリースで借り、外出時に使う」。奥さんも了解した上での、結論です。
工学に詳しい方だけに、一方的な高齢者叩きには不満です。「メディアは感情論に走って、事故を報道している。痛ましい、高齢者は危険だ、免許は返上だとかばかり。事故件数の推移、事故率、運転免許の保持者数、走行距離、事故防止装置率など合わせて報道し、改善策をキャンペーンしてほしい」と。
「この10年間で、交通事故は50%、減りました。最大の要因は事故防止装置の普及です。自動ブレーキ、路線キープ、ドライブレコーダーなどの装置を付けた車が増えている。一方、高齢者の事故は減っていない。高齢者ほど安全装置が必要なのに、つけていないようだ。その装着データがない。メディアは高齢者を叩くのではなく、そういうデータを調べたらどうなのだと思う」。合理的な分析です。
タクシー、警察車両も安全装置を
この知人はタクシーに乗るたびに、「安全装置はついていますか」と聞くそうです。「タクシーは事故率が高いのに、ほどんどつけていない」そうです。パトカーなど警察車両はどうか。「つけていないはず」といいます。国会議員、官公庁の公用車、自治体の車はどうかとか、メディアは調査すべきです。
皇族の車はどうか。秋篠宮の長男、悠仁さまが乗った車が高速道路で追突事故を起こしました(16年12月)。知人は「この車には衝突防止装置がついていない。第三位の皇位継承者がお乗りになっているというのに、宮内庁の感覚はどうかしている」と、怒っておりました。車の安全装置への関心のなさですね。
多くの新車には標準装備で自動ブレーキなどの安全装置がつくようになりました。問題は今、使っている車に自動ブレーキなどを装着するのは無理なようです。知人は「後からでも、安価に装着できる装置はある」といいます。居眠り・わき見運転すると警報が鳴る装置は1.6万円、アクセル踏み間違い防止は4万円程度だそうです。
高齢者が使う車には、少なくとも最低限の安全装置の装備を義務づけるよう道路交通法を改正する。高齢者の免許更新時に点検するとか、工夫はいろいろできるでしょう。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2019年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。