田口淳之介さん逮捕:芸能人を見せしめにする効果はあるのか?

田中 紀子

この度、田口淳之介さんの逮捕を受けて、またしてもマスコミが大騒ぎをしていますが、今回、元マトリの方をはじめ、メディアが「芸能人を逮捕するのは社会に薬物の害を警告する目的がある」といった主旨を、盛んに発していたことに何より驚きました。

NHKニュースより:編集部

いやいやいやいや、そんな目的全く達せられてないですよね。
薬物の害など普通に健康被害として啓発すれば済むことではないですか。

むしろ芸能人の逮捕で、芸能人を血祭りにあげることは、「薬物依存症者など何をやっても良い」「社会から排除されて当然」といった、偏見や排除の構図が成り立っていて、我々依存症者の再起を阻害しています。

しかも芸能人にはまるで人権などないかのこの言いよう。
プロダクションは、タレントを守るべく、そして我々のためにも芸能人の薬物事件に対する人権的配慮について是非共同声明などを出して欲しいです。私たちからお願いしたら、例えば5大プロダクションさんとかやってくれないですかね?

芸能人が捕まる度に、こっちの身が縮まるような今の報道のあり方を、是非とも改善して欲しいです。

しかも前回の瀧さんの時も、事細かにコカインの効能なんか説明しちゃって、むしろあんなドーピングだなんだって言ったら、使いたくなる人がでるんじゃないの?ってな報道が目にあまりましたけど、今回もわざわざ「グラインダーという、大麻の葉を砕く装置も押収されており…」なんて広報してあげちゃってて、ばっかじゃね~の!って思いましたね。
多分、あれでグラインダーの売上が上がったと思いますよ。

さて、今回の事件の特徴って、恋人同士が一緒に逮捕されたことだと思うんですが、これは、二人が同じくらい回復のモチベーションを持ち続けないとなりません。私の経験上、最初の5年間位がカギですね。

二人同時に逮捕されてしまったというのは、ある意味メリットです。
我が家の場合も、夫と同時に自助グループに繋がりましたが、どっちかが「まだ、やめたくない」と思っていると、足を引っ張ってしまいます。

お二人が依存症かどうか分かんないですけど、タバコだってなんだってそうですよね。
タバコやめる時のコツは、止めはじめたらタバコを吸う人に近づかないことと、タバコを吸いたくなる場所、例えば居酒屋さんとか、Barとか、クラブとかですね。そういう今まで馴染んでいた場所に行かないように、生活習慣を変える必要があります。

これって簡単なようで、案外難しいんですよ。だって今まで親しかった人や、場所から遠ざかっていくことになりますからね。そうすると淋しくもなるし、手持無沙汰にもなる。

だからお二人同時にスパッと止められる状況というのは、一人じゃないし、二人で新しい楽しみを探していけるのでそれは良かったですよね。

我々の場合は、もうデートと言えばギャンブル場、話題と言えばギャンブルの話。
こんな状況だったのですが、二人同時に自助グループに繋がってからは、デートと言えば自助グループ、話題と言えば自助グループとなっていき、なんとか回復することができたんですよね。

但し、私はそうは言っても、買い物という別の依存症が4年間も止まらず、夫は4年間サクッと止まった後に、800万円の大スリップ(再発)をしました。

我々ほど重病人はあまり見たことないのですが、それでも田口さんと小嶺さんのお二人も、世間の風当たりなども激しく、これから色々な困難も出てくると思われ、そのストレスフルな状況時になんとか二人ともが、止め続ける努力を継続できるよう、やはりなんらかの支援には繋がった方が良いと思いますね。

クリニックでも、カウンセリングでも、自助グループでもなんでもいいので、とにかくお二人の間で問題を完結してしまわないよう、第三者の力を借りて欲しいですね。

もしお二人が、結構大麻に依存していたとしたら、1~2年はやめるだけで必死、5年くらい止め続けてやっと「あぁ生き方が楽になれたなぁ~」と思えると思います。

こう書くと、すごく長い時間が必要な気がしますけど、5年なんてホントあっという間です。最初は大変だと思いますが、是非、回復のプロセスを楽しめるようになって欲しいなと思います。

そしてお二人の真の再起を願うなら、くれぐれも見せしめ的血祭りはやめましょう。
山口達也さんのリハビリ姿に対し、悪意を感じる報道をされましたが、

山口達也さんのリハビリ姿を隠し撮りする最低なメディア

見せしめなんて、何の効果もなく、むしろ外部の人と繋がるのが恐怖になって、閉じこもってしまうだけです。

薬物事犯は刑事事件の犯人といった目線だけでなく「病気」「回復」「健康問題」への配慮を是非お忘れなく。


田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト