その新幹線、誰が得をする?

5月21日、丸山穂高衆議院議員の戦争発言について書きましたが、先週18日にもう一人の政治家発言が話題になりました。それは谷川弥一衆議院議員が佐賀県に対して「できれば佐賀の知事さんには台湾のようなつきあいをしてほしい。韓国か北朝鮮を相手にしているような気分」と発言した件です。

何についての発言かというと、九州新幹線西九州ルート、いわゆる長崎ルートに対しての発言でした。長崎県選出の谷川議員は新幹線建設を急ぎた立場です。これに対して、新幹線整備に否定的な佐賀県の山口義則知事は、「新幹線整備は求めていない」とこれまでも言ってきました。

佐賀県がなぜこのような発言をしているかというと、実は佐賀県にあんまり新幹線のメリットがないんからです。現在、佐賀ー博多間は特急で37分です。これが新幹線が開通した場合22分、すなわち15分縮まる程度です。新幹線は博多から長崎まで整備されますが、佐賀県を通る距離は、長崎よりも長いにも関わらず、むしろ短い長崎にメリットが多い。しかし、建設の長さは佐賀の方が長いことから、費用負担がその分大きくなる。

今作っているこうした新幹線を整備新幹線といいますが、その建設にかかる費用負担は、国と新幹線が通る自治体で負担し、JRが運営します。JRは線路などを借りる賃貸料を30年間にわたり払うことになります。しかし、建設資材が今高騰していることや、毎度おなじみの、試算見積もりが甘かったことなどで、JRには30年ではなく50年間負担してもらう案が財務省が提案しており、JRは猛反発しています。

今述べたことは新幹線の建設費用だけです。以前にも言ったように、新幹線ができればJRは長崎本線はもう経営しません。しかし、通勤・通学に必要だから廃止することはできません。となると、自治体が税金で賄い続けます。そうなるならば、私は今検討されているフル規格新幹線というのは問題が多いと思います。

フル規格新幹線は、東海道新幹線と同じように専用の新幹線線路がある、ああいう大型の新幹線を指します。しかし、他にもやり方もあるんですよ。例えば、ミニ新幹線やフリーゲージトレインというようなやり方。

さて佐賀県は感情論で言っているのではなく、実際にメリットがないことで反対をしています。実際にメリットがないのに支出したら、地方財政法に反します。だから、佐賀県には理がります。

谷川議員からすれば話ができないから、韓国や北朝鮮と発言したんですが、韓国や北朝鮮の場合は、こちらの筋が通っていても話ができないわけです。

いずれにせよ、何度も言っていることですが、新幹線を作る、これまでの線路に電車を走らせる、しかし人口は減る。だけど、どんどん進めてしまうと、のちのちまた大変な結果になるんですけどねえ。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年5月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。