GDP速報:この数字の意味するところ

5月20日、内閣府が1~3月期の国内総生産(GDP)速報値を発表しました。

実質GDP速報値は前期比で0.5%増、年率換算だと2.1%増でした。この調子で経済推移すれば、今年は2%経済成長する。そうなれば、これまで日銀が言ってきた目標を達成することになります。ところが、今回の速報値には民間のシンクタンクやエコノミストは驚いています。というのもマイナス成長か、せいぜいゼロ成長と予想していたからです。

確かに先週5月15日のブログ「景気悪化する?しない?さて、政府はなんと表現する?」でも書きましたが、内閣府が発表した景気動向指数を基にした現状の景気動向は「悪化」となっていました。

それでは、今回の速報値の中身を見てみましょう。
前期比0. 5%増と書きましたが、前期比とは昨年の10月〜12月期を指し、それに対して今期1~3月期が伸びたということです。0.5%増の内訳は、「国内需要(内需)」が0.1%増、「海外需要(外需)」が0.4%増となっています。

外需が伸びていると聞くと、輸出が増えていると思うかもしれませんが、実は輸出は減っています。では、なぜ伸びているのかといえば、輸入が輸出以上に減っているからです。
外需は、輸出から輸入を差し引いたものだからです。

では今度は減った輸入の内訳を見てみましょう。
減ったのは、石油・天然ガス・木材・鉄鉱石など、エネルギーや原料が減っているということになります。

ではなぜエネルギーや原料の輸入が減っているのかというと、個人消費の冷え込みと、輸出するための生産活動が減っているからです。

その証拠に、個人消費は0.1%減で、そして企業の生産活動に使う設備投資は0.3%減となっています。前期は企業の設備投資が増えていましたから、それがマイナスになっています。やはり米中貿易戦争の影響でなかなか輸出が伸びないことから、投資を控えているとこということでしょう。

一方で、伸びている分野は何かと探してみると、住宅投資が1.1%増です。これは今年10月の消費増税前の住宅関連への駆け込み需要だと思われます。さらに、公共事業が伸びています。これは昨年相次いだ自然災害の影響で、防災関連予算が増え、公共事業などの政策的要因で増えているということになります。

先週も書きましたが、注目は今月24日の月例経済報告での政府が発表する景気判断です。
何度も書いてきましたけれども、世界の動きは必ず皆さんのもとにたどり着きます。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年5月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。