トランプ関税でスペインのブラックオリーブに大打撃も、米農家への恩恵は微小

テーブルオリーブの実には「グリーンオリーブ」と「ブラックオリーブ」がある。後者は日本では馴染みは薄いようであるが、この二つの違いは熟度の違いで、完熟してから収穫するのがブラックオリーブだ。

El Confidencialより引用:編集部

実はこのブラックオリーブの米国向けがトランプ大統領のせいで大幅に後退している。同大統領はカリフォルニアのオリーブ生産業者2社からの苦情を受け入れてスペインからの輸入に関税を34.75%まで引き上げたのである。(参照:elconfidencial.com

その苦情というのは、スペインのブラックオリーブは欧州連合(EU)の農業政策の恩恵から不当な援助を受けて市場価格よりも不当に低い価格を設定している、いわゆるダンピングをしていると指摘したのである。

この苦情を聞き入れたトランプ大統領は前述した関税率を適用することにしたのである。その影響で、スペインのブラックオリーブの米国向けはシーズン2018―2019年の輸出がその前年期よりも17%後退、即ち4467トンの輸出減となっているというのである。最近4年間の米国への輸出ボリュームの平均と比較しても12%減となっているという。この影響を受けて、グリーンオリーブをも含めた輸出と国内販売の全体だと販売は3%減少したことになっているという。スペイン全体の年間生産量はおよそ58万4000トン、その内の48万トンがアンダルシア地方で生産されている。価格相場はトンあたり2384ユーロ(31万円)。
(参照:elconfidencial.comagroinformacion.com

米国向けの輸出の減少を国内販売と他の外国市場で補っているが、これまでスペインのオリーブの輸出相手国ナンバーワンは米国であったことから全体で2%の販売減は埋まらない状態だという。

オリーブの世界の生産量のほぼ半分をスペインが占めている。米国市場に次いで輸出で重要な国は、イタリア、ロシア、フランス、ドイツ、ポルトガル、アラブ、カナダ、英国、ブラジル、オーストラリアとなっている。

輸出が伸びているのはイタリア、カナダ、サウジアラビア。イタリアの場合はスペインから一旦輸入して、それをイタリア産と偽って輸出している場合が多くある。これはオリーブオイルやワインでも同様のことが行われている。イタリアの販売のうまさにはスペインはかなわない。

買付で安定しているのはロシア、英国、オーストラリア。一方、少し後退しているのがフランス、ドイツ、ポルトガル、ブラジルだという。(参照:elconfidencial.com

米国はスペインのブラックオリーブに代わる一番の輸入相手国としたのがモロッコである。今年2月のデーターであるが、その米国向け輸出が129%増加したというのである。2400トンから5400トンに増加。その次がエジプトで、74%の増加。米国はEUに加盟しているスペインからの輸入関税率を大幅に上げたということで、EU以外の国からの輸入に切り換えりねばならなくなったのである。(参照:mercacei.com

スペインは米国の市場を失った損失は2380万ユーロ(31億円)だという。スペインは米国の不当な関税率の適用を世界貿易機関(WTO)に今年2月に訴えて損害賠償を求めたそうだ。

一方のカリフォルニアのブラックオリーブ生産業者の販売は2.3%の伸びを見せただけであるという。(参照:europapress.es

白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家