最終受益者まで手が届かない厚労省のテレワーク促進事業

今年も行政事業レビュー公開プロセスに参加している。厚生労働省では6月6日に前半戦があった。対象とした四件すべて、最終受益者まで手が届いているか心配が募る事業であった。

※画像はイメージです(写真AC:編集部)

テレワークは仕事と生活の調和を図る働き方改革の重要な要素である。2017年閣議決定「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」では、2020年におけるテレワーク導入率の目標を34.5%(2012年度の3倍)とした。今回は雇用型テレワークをどう中小企業に普及させるかについて議論した。

中小企業が導入する際にはIT機器の整備等に助成金が出る。この助成金は2018年度にはわずか81件しか支給決定に至らなかった。年間に10万社以上テレワーク導入企業を増やそうという政府計画と比べれば焼け石に水。助成金の存在価値は疑問である。すでに10年を超える事業だが、事業の有用性を示す実績もはっきりしない。

申請者はテレワーク相談センターで申請書の書き方指導を受ける。センターが指導しないと書類の記入漏れや登記関係書類などの添付に不備が出るという。その後、厚生労働省に申請書を提出するが、そこでもほとんどについてさらに修正が求められるそうだ。企業が自ら申請書を作成するのではなく社会保険労務士の助力を求める場合が多いという点もおかしい。社会保険労務士が助力しても誤記・漏れ・不備が多いのは申請者目線での申請手続きになっていないためだ。

仮に続けるとしても電子申請に代えるべきだ。働き方改革を進めるためにITを使うのがテレワークなのに、助成金申請にはアナログの紙手続きを求めるというのは変だ。電子申請であれば記入漏れは自動的にチェックできるし、法人登記については厚生労働省から法務局に法人番号で照会すれば済む。このように他の行政機関と情報連携すれば入手可能なものは除いて、助成金の可否を判定するのに必要な最小限の情報だけを求めるようにしなければならない。

公開プロセスの結論は事業全体の抜本的な改善となった。最終受益者である中小企業まで手が届く制度に改善する努力が求められる。