折しも安倍首相がイランを訪問しているさなかで起きたホルムズ海峡でのタンカー襲撃事件。うち一隻は日本の船舶で一部報道では狙われたのではないか、というトーンも聞こえますが、これはかなりの憶測で真偽のほどは不明です。襲撃されたもう一隻の台湾企業がチャーターした船は沈没しています。
ホルムズ海峡はもともと治安が悪く、先月も4隻が襲撃されたと報じられていましたが、アメリカとイランの関係が悪化したことで一部の思想団体を刺激していた可能性は否定できないでしょう。とすれば日本の船舶側が警備員もつけていなかったのはいくら「警備員がいても同じ事さ」と言えどもやや情報解析に甘さがあったような気もします。
安倍首相のイラン訪問がこのタンカー襲撃の引き金となったとは思えませんが、首相の会談後の談話や記事を読む限りアメリカとイランの関係改善に向けた即効的な話があったようには感じません。それは当然で41年ぶりに訪問した国でアメリカから託された解決の糸口が出てくるほど簡単な外交はありません。
安倍首相がプーチン大統領と26回も会談しているのに領土問題は何ら進捗がないことを考えれば国と国の問題は長い歴史問題を抱える中でトップから実務者レベルまでが周辺環境を踏まえて一枚岩になってようやくなし得る作業です。
その上、最近は特に政治を超えた国民や市民ベースでの活動が目立ってきているのも特徴です。民主主義という名の議会での多数決判断は必ずしも国民の意見を反映している訳ではありません。香港の「逃亡犯条例」に反対する市民の抗議は驚くべきパワーとしか言いようがありません。本日のバンクーバーのローカル新聞トップは「香港市民の将来への不安は約30万人いる香港在住のカナダ市民権/移民権所有者が当地に戻ってくるのではないか」という懸念でした。懸念というのは正しい表現ではないかもしれませんが、突如、雪崩のように人が押し寄せればしわ寄せの結果、様々なことが機能しなくなることを意味しています。
英国の選挙はどうでしょうか?新しい首相選びの選挙が始まりましたが、候補者を絞り込む方式のこの選挙は最終的に争点の絞り込みを意図し、強硬離脱派と穏健派と離脱反対派という明白なグループ化を作り、議会の外で英国国民が過激な行動や活動を再びしないとは限りません。
情報化が進むと一人一人の選挙民はあらゆる影響を受け、それまでさして興味がなかったことにも「そうだったの!」という刺激とともに活動をしたり声をあげたりするものです。私が感じる世の中の動きは時として激しい市民の声とそれを受け止め防戦に回る行政や政治家という構図にすら見えてくるのです。市民側には極端な声もあるわけでそれをバランス感覚を含めて落としどころを探るという行政側ということでしょうか?
問題は一度色づいた意見はなかなか変わらないという点です。A案とB案があってA案が正しいと信じた瞬間、それを後日、やはり自分は間違っていたからB案にするという意識と勇気が高い人はなかなかいるものではありません。人は頑なになり、より固執し、譲歩せず、激しいバトルとなるのが流れです。
そういう意味ではあらゆることに判断を求められ、選択をさせられる時代が到来したともいえるのでしょうか?ちょっと息が詰まるかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年6月14日の記事より転載させていただきました。