タンカー攻撃:出来事も起こった場所も、大きな問題

6月13日、日本の海運会社が運航するタンカーがメタノールを搭載し、シンガポールに向けて航行中にホルムズ海峡付近で何者かに攻撃されました。タンカーは現在も航行不能になっています。

アメリカはイラン革命防衛隊の仕業だとして一部の映像を公開し、まだ他にも証拠があると言っています。一方のイランは「自分たちがやる理由もメリットもない」として関与を否定しています。

そもそも、イランとの核開発抑制合意からアメリカが離脱をし、アメリカはイランに対して経済制裁を課していました。これによってイランの経済状況は悪化をし、アメリカとイランの二国間関係は極めて悪いということです。

そこで、安倍総理がアメリカとイランの仲介役としてテヘランを訪ねていました。その真っ只中の6月13日に日本のタンカーが攻撃されたから、日本にとっても衝撃的な出来事でした。

とはいえ私は、日本人が衝撃的に受け止めるべき本質は、ホルムズ海峡で有事があり得るということだと思います。というのも、ホルムズ海峡は世界の主要航路であり、戦略的に極めて重要な航路と言えるからです。なぜなら我々の経済、国民生活に影響する原油(ガソリンや石油など)の様々な物を運ぶ海峡です。

ですから、この攻撃の一報を受けた翌日は、原油価格が4%も上がる事態になりました。今は備蓄が多いことや需要がそんなに強くないことから、収まっています。しかし、これから先、きな臭さが続けばわかりません。

思い起こせば、2014年7月1日に閣議決定で集団的自衛権の憲法解釈を一部変更し、集団的自衛権の行使を限定的に可能とする新たな武力行使の要件を定め、2015年5月15日、「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を 改正する法律案を国会(衆議院)に提出し、 同法案は9月 19 日、参議院本会議において可決・成立した。当時、国会では集団的自衛権の議論を激しく行なっていました。当時は、明日にでも戦争になるのではないかといった反対論も根強くありました。その議論の中で「存立危機事態」という難しい言葉がありました。

もしも、石油が入ってこないなど国民生活そのものが成り立たなくなれば、集団的自衛権を発動して、アメリカと一緒に作戦展開をする法律でした。「存立危機事態」とは、日本と密接な関係にある他国に対して武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態を指します。6月14日には岩屋毅防衛相が「今のところ存立危機事態にはあたらない」と発言しています。

歴史で習ったかもしれませんが、1970年代にはオイルショックというのが2度ありました。1973年の第4次中東戦争が引き金でおこんっタノが1回目。2回目は1979年のイラン革命が引き金でした。2回目の時は、私もよく覚えています。

石油価格が瞬く間に値上がりし、石油だけではなく物価全体が20%以上も上がっていきました。有名なのはトイレットペーパーがなくなるという噂によって、こぞってトイレットペーパーを買い求めに殺到しました。お1人様1個限りと制限があり、子供の私もレジに並んで母親から一つ買わされた経験があります。

はっきり言って日本海や津軽海峡と聞けば身近に感じますが、ホルムズ海峡やイラン、中東と聞くと遠い国の出来事に感じますが、我々にも関係がある出来事です。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年6月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。