オリパラ及びラグビー特別委員会にて② 安全で円滑な交通計画に向けて

こんにちは、東京都議会議員(町田市選出)のおくざわ高広です

昨日の「持続可能な社会へ向けて」に続いて、同じくオリンピック・パラリンピック及びラグビーワールドカップ推進対策特別委員会の質疑第二弾ということで、「安全で円滑な交通計画に向けて」と「仮設施設の整備に関する契約について」をお送りします。

こちらのテーマは、昨年の委員会で森沢都議が取り上げていたこともあり、その続きの質疑をするような形になりました。同じ会派の二人には、本当に感謝しきりです。この場を借りて、ありがとう!

大阪ではG20に向けて、今日から各所で交通規制がかかっているとのことですが、この4日間のために半年以上の時間をかけて議論と検証を重ねてきたとのこと。自民党の川松議員から、職員自身も大阪入りして学んでくるべきだとの指摘に大きく頷くとともに、オリンピック・パラリンピック後に残るレガシーとしての交通政策や働き方改革を意識して質疑をさせていただきました。

東京都では、TDM推進プロジェクトを展開して、企業・団体、区市町村への働きかけを行い、オリパラ大会期間中の交通量削減に取り組んでいます。今回は、輸送運営計画Vol.02(案)を見ながら、質疑をいたしました。

また、大会会場の仮設施設契約において、具体的な金額が出てきた中で、最後までチェック機能を果たせるのかという視点で一問質疑を行いました。あわせて、お読みいただけましたら幸いです。

写真AC:編集部

以下、質疑骨子

仮設施設の整備については、大きな関心事項の一つとしてコスト縮減が挙げられます。これまでの委員会質疑において、工事単価について各種調査や、施設整備におけるCVEや各競技会場におけるSVSDの取り組みなど、組織委員会を中心にした多方面からの取組により、一定の成果を挙げているところとのことです。組織委員会との合意に基づく計算式があるとのことですが、一方で、費用の一部を負担する都として、チェック機能を有効に働かせる必要があり、決まったのだからそのまま払うという仕組みではいけないと考えます。

Q8.都のチェックにおいて、さらなる縮減の余地があるものや、あるいは不適切な発注が見つかるなどした場合において、請求の差し戻しや計画の変更依頼、支払い按分の変更などの、毅然とした対応ができるのか伺います。

A8.

・共同実施事業に係る経費は、執行前、執行後の各段階において、それぞれ、東京都作業部会等において確認

・執行前の段階においては、案件が契約手続きに入る前に、都の担当が組織委員会の担当から内容をヒアリングし、積算資料等を確認しながら、必要な内容・機能であるか、適正な規模・単価であるか、類似のものと比較して相応であるか、公費負担の対象として適切であるか、などの観点からチェックし、必要に応じて見直しを行い、事業に反映

・作業部会において、組織委員会と都の双方の担当者から説明を受けて質疑応答を行い、確認票に記載された内容について確認

・執行後の段階においては、契約変更等が生じる場合にはその内容について確認を行うととともに、年度末には当該年度の支払額が予算の範囲内で適切な負担区分に基づいて実施されているかなど、都の担当が改めて確認を行い、都から組織委員会へ支出

・今後も、こうした過程を通じて、共同実施事業が適切に執行されるよう取り組んでいく

執行後においても、物申せる取り決めになっているというご答弁であったかと思います。最後の段階でスペック変更などが生じて金額が上がってしまうということは往々にしてありえることですが、その内容が本当に適切だったのかという精査を都が担っているということを自覚していただきまして、最後まで適正な金額で事業が執行されるよう目を光らせて頂きますようお願いします。

つづいて、輸送運営計画について質問させていただきます。

輸送運営計画V2案の冒頭には、2020東京大会について、「史上最もイノベーティブで、世界にポジティブな変革をもたらす大会を目指す」また、開催都市の役割及び責任においては、「有形無形のレガシーを残すことが開催都市の役割である」と記載されています。これは、つまり世界に変革をもたらすイノベーションを起こすべく、意識的に行動を変えていくべきと宣言されていると、私は捉えています。

成長と成熟を同時に目指そうという東京にあっては、自動運転などの先端技術を活用した交通網の構築、働き方や移動手段におけるシェアリングエコノミーなどの新しい経済モデルの定着など、あらゆる面から交通政策や働き方を見直していくことが求められており、そのモデル的な取り組みという側面をもつ輸送運営計画と捉え、長期的な視点を重視した質疑を心掛けたいと思います。

その意味から、輸送連絡調整会議の資料P49には、「総合的かつ先進的な交通マネジメントを展開し、大都市をはじめとする将来の都市交通に関するレガシーを世界に向けて提起、継承する」とあります。継承するという部分で重要なのが、生活者にとって実益があるかという点が重要であると考えます。

仕方なく協力した、で終わらせないために、誰もが簡単に情報にアクセスできるようにすること、(例えば情報収集アプリなどがこれに当たりますが、)誰もが経済性や利便性といった実益を手にする可能性があること、(例えばシェアリングエコノミーがこれに当たります)の二点を大切にしていただきたいと考えています。これらは、本計画に記載されてはいないと記憶していますが、頭の片隅に置いて取り組んでいただけましたら幸いです。

さて、今後の取組として、各企業のTDMアクションプランの策定を進めるとのことですが、オリンピックパラリンピックのために仕方なく、という一過性のものではなく、これを契機に働き方そのものを見直し、各企業のレガシーとして残るものとすべきと考えます。

Q9.個別相談やコンサルタントの派遣を実施するとのことですが、その際、より長期的な視点でのアクションプラン策定を目指すべきと考えますが、見解を伺います。

A9.

・大会の成功には、円滑な大会輸送の実現と経済活動の両立が不可欠であり、各企業にもアクションプランの作成、実施のお願いをしている。

・現在、企業のアクションプラン作成を促すため、個別コンサルティングや企業説明会を実施しており、その参加企業からも、大会時はもとより、今後の働き方改革や物流の効率化につなげていきたいとの意見も頂いている。

・都としても、TDMや時差ビズ、働き方改革につながるテレワークの3つの取組をあわせて「スムーズビズ」と称して、一体的に進めることで、円滑な大会輸送の実現に取組むとともに、新しいワークスタイルや企業活動の東京モデルが大会のレガシーとして残るように取り組んでいく。

企業側からも一過性で終わらせたくない旨の話が出ていることは大変重要です。大会が近づくにつれ、今を乗り切ろうという考えも出てくるかもしれませんが、レガシーとして残すという方向性を変えずに取り組んでいただきますようお願いします。

さて、ここで取組の進捗状況を確認しながら、数値目標は達成できるのか、大会後のレガシーを残せるのかという視点で質疑をさせて頂きます。昨年8月のオリンピックパラリンピック特別委員会における森沢都議からの質疑において、「物流事業者のみならず、サプライチェーン全体にかかわる企業や都民、国民の理解と協力を求めることや、商習慣や流通の改善に向けた相互理解を求める。都としては、国や大会組織委員会と連携し、荷主となる企業などに対して在庫の調整、納入時期や時間の検討、効率的な配送の実施などの協力を呼びかけているところ。」との答弁がありました。

はむぱん/写真AC(編集部)

Q10.あれから1年が経ちましたが、どのような部分で具体的な取り組みが進み始めたのか、TDM推進に関する企業への働きかけの状況をお伺いします。

A10.

・これまで、物流については国や組織委員会と連携し、荷主となる企業に対して、在庫の調整、納入時期や時間の検討、効率的な配送の実施などの協力を呼びかけてきており、スムーズビズとして先進的に取組む企業も出てきている。

・例えば、5月29日に行ったキックオフイベントでは、混雑時間をさけた配送や、着荷主の協力を得て、翌日配送から翌々日配送への変更、さらに検品の簡素化などの取組を紹介。

・こうした先進的な取組を他の企業に紹介していくことでさらに多くの企業に物流面でのスムーズビズに取組んで頂くよう進めて行く。

一定の成果が出始めているとのこと、企業対企業、いわゆるBtoBの取引に対する働きかけは行っていることや荷主の理解が進みつつあることは認識したところですが、ネット通販などの企業対個人いわゆるBtoCビジネスにおいてはいかがでしょうか。

Q11.個人個人にご理解とご協力をお願いしなければならないとはいえ、利用者一人一人に個別に周知を図ることは難しく、アマゾンや楽天といったeコマース企業の協力を得ながら周知を図るべきであると考えますが、取組状況と今後の方向性を伺います。
※他会派の方と重複したため、質疑自体は割愛しました。
A11.

・近年、インターネット通販など、いわゆるe-コマースの取扱量が増加し、都市内の物流の多くを占めてきている。

・こうしたことから、都ではすでにe-コマースを取り扱っている業界団体や大手企業に大会期間中の交通量削減に向けた協力要請を行ってきている。

・今後とも、こうした関係者に丁寧に交通状況などを説明し、大会時の対策について情報提供するなど、具体的な取組について検討いただくための働きかけを行っていく。

具体的な取り組みについて検討いただくための働きかけ、大変重要であると思います。引き続きよろしくお願いします。さて、TDMを推進すべきは企業だけでなく、行政機関の取組も大変重要であり、区市町村に先駆けて「都庁2020アクションプラン」が発表されました。これは一つのモデルケースであり、会場周辺の関係自治体に対しても、同様のアクションをお願いしたいところです。

Q12.関係自治体に対してはどのような働きかけを行っているのか、伺います。

A12.

・スムーズビズの取組を進めていくうえで、都内関係自治体に、ご協力を頂くことが重要。

・4月のアクションプラン公表後、5月の区長会や市長会をはじめ、様々な機会を活用し、「都庁2020アクションプラン」を説明し、区市においてもその策定を依頼。

・今後も引き続き、関係自治体と協力、連携しながらスムーズビズの取組を進めていく。

企業だけでなく、関係自治体の協力を得るべく取り組まれていることが理解できました。区市町村の業務はより住民に身近であることから取り組み方が難しいとの話も漏れ聞こえてきます。だからこそ、都が率先垂範してアクションプランを着実に実行されるよう求めておきます。

レガシーとして残していくうえで重要な観点として、企業側の目線で言えば、不利益を容認し続けることはありえません。計画中にある「大会期間中の都市機能を維持する」ということは、経済活動を停滞させないという意味でもあり、開催都市としての役割と責任の一つであると考えます。今月末にG20の開催される大阪市においては、特に物流と観光の企業に大きな影響が出るとの予測が出ています。その状況も検証いただき、どうすれば企業の経済活動への影響を最小限に抑えられるのかを考えて頂きたいと思います。

また、物流大手の日本通運はオリンピックパラリンピックの影響を避けるためにも東京港を回避するルートの開拓に取り組み始めたとのことです。もともと東京港の受け入れ能力が限界に近づいていたという背景もあるのですが、具体的には大型船で名古屋港に着け、内航船で千葉港や静岡の清水港に運び、そこからトラックで首都圏を目指すというルートを検討しているとのことです。ヒト・モノの集積地である東京都の都市機能を維持するためには、極力物流を止めてはならないことは言うまでもありませんが、東京都内だけで解決できるものではありません。

Q13.物流全般において、より広域的な視点をもって国や他都市、企業等との連携・協力に向けて率先して取り組むべきと考えますが、見解を伺います。

A13.

・東京において、TDMによる交通量の低減を目指すためには、広域的な取り組みが必要である。

・都は、円滑な大会輸送の実現と都市活動の維持との両立を図ることを目的として、国や組織委員会と共同で「2020TDM推進プロジェクト」を昨年8月に立ち上げ、現在、約100団体、1600を超える企業、事業所に参加頂いている。

・この取り組みを広域的に広げるため、昨年11月の九都県市首脳会議において、都の提案に基づき、9都県市連名で各県市の商工会議所やトラック協会、経営者協会などにTDMの取組について協力要請を行った。

・現在、日本商工会議所や日本物流団体連合会など、主に全国に広がる団体等についても、TDMに関する情報提供など行っており、2020TDM推進プロジェクトへの参画や、大会時の交通混雑を避ける取組への更なる理解と協力を求めていく。

広域的な働きかけを行っているということが分かりました。ここで一点、ある旅行会社で伺った話をご紹介しておきます。オリンピック・パラリンピック開催時期は修学旅行の時期と重なっており、地方から東京都内への修学旅行を毎年行っている学校にとっては、バスが確保できないことに頭を悩ませているとのことです。

これに対し、組織委員会からは、文科省などを通じて全国の学校に対し、バスを使う行事をずらすなどの協力をお願いしていると伺います。大事なのは、2020東京大会は東京だけの大会ではなく、日本全国の様々な主体にご協力いただいてはじめて成功するものだということです。全国の自治体や企業、学校やその関係者がすすんでご協力いただけるような働きかけや機運醸成を心掛けて頂きますようお願いします。

ここで、より広域的な視点で利便性を向上させるという観点から一つ要望をさせて頂きます。公共交通輸送マネジメントにおける今後の検討課題として、円滑な旅客流動の確保策としてIC乗車券の利用推進が挙げられており、訪日外国人向けのIC乗車券を準備しているとのことですが、加えて、障がい者手帳の提示を求められてきた障害者が、専用IC乗車券を使えるようになれば、大きなレガシーとなります

すでに、関西などの私鉄・バス64社でつくるスルッとKANSAI協議会では、障害者と介護者用のプリペイド式ICカードを導入していますが、残念ながらSUICAもPASMOも導入されていません。都から民間事業者に強力に働きかけていただきますよう、お願いします。

さて、TDMについて最後のキーマンとなるのは、都民の皆様お一人お一人になります。ロンドンオリンピックでは、ロンドン市長自らがロンドンの地下鉄の館内放送を録音し、市民に対して五輪開催に支障の出るような外出を控えるよう呼びかけたという有名な話があり、個人一人一人への働きかけも重要であり、その方法にも工夫の余地があると思います。実際、個人の方から「オリパラ期間中、自分はどれくらい行動を控えたらいいのだろうか。自分の通勤エリアは大丈夫なのだろうか。」といった声も聞かれます。

Q14.こうした方々に対し、具体的にどのように呼びかけを行っていく予定であるのか伺います。

A14.

・大会時のスムーズビズについては、企業に加え、個人の方々のご協力を頂くことが重要であると考えている。

・現在、通勤や休暇制度の取扱や、大会時の混雑を想定した物流面での工夫について、企業側での検討を頂くよう働きかけを行っている。

・また、個人の方々への広報などについては、大会直前の個人向けのPRを集中的に行い成功を収めたロンドン大会の事例などを踏まえ、まず効果的なPR策などの検討を行ったうえで、様々な媒体の活用を含めて、個人の方々への広報を展開していく。

効果的なPR策の検討を行うとの考えが示されましたが、先ほどの学校の話同様に、都民の皆様に進んでご協力いただけるような働きかけを検討いただきたいと思います。


編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、無所属・東京みらい)のブログ2019年6月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログ『「聴く」から始まる「東京大改革」』をご覧ください。